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第30話
「なんか、ここまでくると、ちょっと感慨深いな」。脚立の上で最後の飾りをつけながら、桜井くんがつぶやいた。
私は、うん、とうなずく。そして、ふと聞いてみたくなった。「桜井くんは、いつも自信がありそうに見えるけど……怖くなったり、しないの?」
桜井くんは少し考えて、それから、めずらしく静かな声で言った。「するよ。みんなが期待してくれるぶん、応えなきゃってプレッシャーもあるし。……でも、葉山さんといるときは、なんか、そういうの全部、忘れられるんだよな」
夕日のなかで、桜井くんがこちらを見た。その目が、いつもよりずっとやさしくて、まっすぐで。私は、何も言えないまま、ただ胸の鼓動が速くなるのを感じていた。
明日は、文化祭。なぜだか、何かが変わりそうな予感がして、私はそっと、胸の前で手を握りしめた。




