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第26話
桜井くんが教室に入ってきた瞬間、私は立ち上がって、その前へ進んだ。「桜井くん、あの……」。声が震える。「ごめんなさい。最近、わたし、変な態度とっちゃって。桜井くんは、何も悪くないの」
うつむいたまま、必死に言葉を絞り出す。言い訳はしなかった。ただ、謝りたかった。
しばらく沈黙があって、おそるおそる顔を上げると、桜井くんは、ほっとしたように笑っていた。「よかった。俺、なんか嫌われるようなことしたのかと思って、ずっと気にしてたんだ」
その表情を見て、胸がぎゅっとなる。やっぱり、私のせいで、心配させていたんだ。
「嫌うなんて、そんな……」。あわてて首を振ると、桜井くんはくしゃっと笑った。「ならいい。また本の話、しような」
たったそれだけで、こじれていた空気が、すうっと晴れていく。逃げずに、ちゃんと向き合えた。それは、私にとって、小さいけれど大きな一歩だった。




