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第20話
それから、テスト前の数日間、私と桜井くんは放課後に図書室で勉強するようになった。
古文を教えるうちに、自然と他の話もするようになる。好きな食べ物、苦手な教科、休みの日の過ごし方。少しずつ、私は桜井くんのことを知っていった。そして、ほんの少しだけ、桜井くんも私のことを知ってくれた気がした。
テスト最終日の帰り道。桜井くんが、晴れやかな顔で言った。「古文、たぶん今回いけたわ。葉山さんのおかげ」。そして、ふと足を止めてこちらを見た。「なんかさ、葉山さんと一緒だと、不思議と集中できるんだよな」
その言葉に、心臓が大きく跳ねる。どういう意味なのか、深く考えそうになって、あわてて打ち消した。きっと、勉強がはかどるってだけの意味だ。
それでも――ほんの数週間前まで、遠くから見ているだけだった人と、今こうして並んで歩いている。それだけで、胸がいっぱいになった。
「また、わからないとこあったら教えて」。桜井くんが笑う。うん、と答える声が、自分でも驚くくらい、自然に出た。夕暮れの道を、二人の影が、ゆっくりと伸びていった。




