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第15話
その日の放課後、私の元気のなさに、七海はすぐに気づいた。「詩織、なんかあったでしょ」。机に身を乗り出してくる。
昼間のことを話すと、七海はあきれたように息をついた。「あのね詩織、桜井くんが誰かと笑ってたくらいで落ちこんでたら、身がもたないよ」。それから、まっすぐ私を見た。「比べる必要なんてないって。あんたにはあんたのいいところがあるんだから」
すぐに自信が持てるわけじゃない。それでも、その言葉は、冷たくなった心に、じんわりと染みていった。
帰り際、下駄箱で靴を履き替えていると、後ろから声がした。「葉山さん」。振り向くと、桜井くんが立っていた。「これ、この前言ってた本の話。結局、気になっちゃってさ」。スマホの画面には、私が好きだと言った作家の名前が表示されていた。わざわざ調べてくれたらしい。
「いちばん有名なの、どれ?」。屈託のない笑顔だった。
縮んでいた胸が、ふわりとほどけていく。やっぱり、わからない。彼の優しさが、どこまで本当なのか。それでも今は、この嬉しさを、ちゃんと信じてみたいと思った。




