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第13話
蓮くんは、噂どおり口数の少ない人だった。授業中はだいたい窓の外を見ているし、休み時間も一人で本やスマホをいじっている。それなのに、人のことはよく見ている。
ある日の授業中、私が消しゴムを床に落としてしまったとき、蓮くんは何も言わずにそれを拾って、すっと机に戻してくれた。お礼を言うと、「ん」とだけ返ってくる。素っ気ないのに、不思議と冷たくはない。
放課後、帰り支度をしていると、蓮くんがふいに口を開いた。「葉山さんってさ」。名前を呼ばれて、私はびくりと顔を上げる。
「朝陽のこと、目で追ってるよね」
心臓が止まるかと思った。顔から血の気が引いて、それからどっと熱くなる。ち、違っ、と言いかけた私を、蓮くんは手のひらで軽く制した。
「べつに、責めてるわけじゃない。言いふらしたりもしない」。淡々とした声だった。「ただ……あいつ、見た目ほど器用じゃないから。気長にやれば」
それだけ言って、蓮くんは鞄を背負って教室を出ていった。残された私は、しばらくその背中の言葉の意味を、うまく飲みこめずにいた。




