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第12話
ある日のホームルームで、担任が「来週、席替えをします」と告げた。教室がいっせいにざわめく。
私は、こっそり桜井くんのほうを見た。もし、もし隣になれたら――そんな期待が、ほんの一瞬、頭をかすめる。けれど次の瞬間には、隣でうまく話せずに固まる自分を想像して、勝手に苦しくなった。期待と不安が、いつもみたいに同時に押し寄せてくる。
くじ引きの日。番号の書かれた紙を引いて、それぞれ新しい席へ移動していく。私の席は、窓から二列目のいちばんうしろ。桜井くんとは、少し離れた場所だった。
なんだ、と小さく息をつく。ほっとしたような、がっかりしたような、自分でもよくわからない気持ちだった。
そして、私の隣の席に、背の高い男子が静かに腰を下ろした。蓮くんだった。思わず固まる私に、蓮くんはちらりとこちらを見て、ひとことだけ言った。
「よろしく」
それだけ言って、あとは窓の外を眺めている。なぜだろう、その距離感が、不思議と居心地は悪くなかった。けれど、桜井くんのいちばんの友達が隣だなんて。心臓は、また別の意味で落ち着かなくなっていた。




