皆でクリスマス・バトル
それから一同はリビングに集まった。
さらに普段よりオシャレした母が合流し、子どもたちの友人に挨拶する。
「うちの子たちがクリスマスに、お友だちを連れて来てくれるなんて嬉しいわ。しかもあやめと西条さんはサンタの格好だし。こんなに可愛いサンタさんが来てくれて、今年はいいクリスマスね」
おっとりと微笑む静香に、天華はホ~ッと見惚れる。
「あやちゃんのお母さん、女優さんみたいな美人やな~。しかもメッチャニコニコで感じええし。こんな素敵なお母さんがおって羨ましいわ」
小声で褒める天華に、あやめは珍しく素直に笑って返す。
「えへへ、そうでしょ。母さんと恭は私のいちばんの自慢」
それから皆で楽しくピザとケーキを食べた。
食事が終わると、母は食器を片付けて、子どもたちに声をかける。
「お母さんは部屋に行くわね。後はお友だち同士で楽しく過ごして」
大人がいなくなり、ここからは若者だけの時間だ。
あやめは「へっへっへ」と不敵な笑みでゲームを持って来る。
「じゃあ、さっそく始めようか。本日のメインイベント、クリスマスプレゼント争奪戦をね!」
「あっ、大乱戦スマッシュファイターズだ。やっぱ勝負って言ったら、これだよね」
天華はゲーマーではないが、弟の影響でパーティーゲームは結構やる。反射神経がいいので、スマッシュファイターズは弟よりも強いくらいだった。
「俺は初めて見る……」
「大田原はゲームやらないのか?」
恭の問いに、大田原はすまなそうに答える。
「今どきの遊びはあまり得意じゃなくて、暇な時は将棋や園芸をしているので」
屈強な肉体に反して優しい性格の彼は、植物や動物の世話をするのが好きだった。
意外な趣味に、あやめはほっこりしながら言う。
「渋い趣味だな、大田原君。全くの初心者をいきなりボコるのは可哀想だから、大田原君が操作に慣れるまではチーム戦にしようか」
そこでチーム分けをしたのだが、その内容に恭が渋面でツッコむ。
「……おい。俺VS全員って、どういうチーム分けだ」
5人なので2対3で分かれるかと思いきや、まさかの1対4だった。
あやめ以外は冗談だと思っていたが、実はこういう判断だった。
「お前は強すぎるから、全員でボコるくらいでちょうどいい」
「えっ!? 八神君、ゲームもそんなに強いの!?」
だとしたらカッコいい! と食いつく天華に、あやめは弟の実力のほどを教える。
「私だとコンピューターの味方を3人つけて、ようやく勝負になるくらい」
「それはお前が弱すぎるんだろ」
「じゃあ、いいだろ! 今日もハンデ有りで! お前は強すぎて勝負にならないから本番も1対4な!」
「俺に不利すぎる。まぁ、いいけど」
そして恭VS全員の試合が始まった。けれど、その結果に八神姉弟以外の全員が唖然とした。
「嘘やん……。初心者の大田原君が戦力にならんのは仕方ないとして、3人がかりでもホンマに勝てへんって」
想像以上の強さに思わず素が出てしまう天華に続いて、ほのかがしょんぼりと肩を落とす。
「ゴメン。私が足を引っ張っちゃったかも」
「ほーちゃんは何も悪くないぞ! 特にテンちゃんはいい仕事してたし! それでも勝てないコイツがモンスターなんだ!」
喚く姉をよそに、弟は淡々と話を進める。
「で、俺が1位ってことでいいのか?」
「ちぇっ、良かろう。好きな人を選んでプレゼントもらえ~」
あやめに指示された恭は不可解そうに首を傾げる。
「ものじゃなくて人で選ぶのか?」
「最後まで博打要素あったほうが面白くね? この人はいいプレゼント選びそうとか、想像して選べ」
「それで恭君は誰のプレゼントを選ぶの!?」
途端に復活したほのかから、恭はやや迷惑そうに身を引きつつ指名する。
「じゃあ、大田原で」
「えっ!? 俺か!?」
「姉が何を買ったかは知ってるし、この中で俺の友だちはお前だけだし」
恭としては当たり前の選択だったが、大田原は妙に狼狽えた様子で返す。
「そ、そうか。確かにそう考えたら、俺は八神向けのプレゼントを選ぶべきだったのかもしれない。すまない」
「そんな謝るようなプレゼントなのか?」
男子たちのやり取りに、あやめは「ひひっ」とあくどく笑う。
「どうやらハズレを引いたらしいな。しかし勝負の世界は非情なので変更は無しだ!」
その後。今度は恭を除いた4人で、バトルロイヤルをした。
その結果、1位の天華は恭のプレゼント。
2位のあやめは天華のプレゼント。
3位のほのかは、あやめのプレゼント。
最下位の大田原は、ほのかのプレゼントを選んだ。
「はい! じゃあ、おのおのプレゼントが決まったところで開封ターイム! 最下位から順に開けていくぞ!」
あやめの号令に、最下位の大田原が「あっ」と反応する。
「じゃあ、まずは俺ですね」
彼はそう言いながら、ほのかが用意したプレゼントを開封した。
「おおっ、すごい! 可愛いクッキー!」
歓声を上げる大田原に、ほのかが遠慮がちに説明する。
「それアイシングクッキーって言うの。私が作ったんだけど、男の子にはちょっと可愛すぎたかも。ゴメンね」
食べものなら誰に当たっても無難だろうと作ったが、トナカイや雪だるまを象ったメルヘンなクッキーは男子には物足りないかもしれない。
ほのかはしゅんと謝ったが、大田原はキラキラと目を輝かせて感激する。
「いえ、そんな。すごく嬉しいです。こんな売り物みたいなクッキーが作れるなんて、秋津先輩はすごい!」
彼は家庭的な女性が好みなので、ほのかのお菓子作りの腕を心から称賛した。
「あ、ありがとう。喜んでくれて良かった」
「これ良かったら、妹にも分けていいですか? こういう可愛いものが好きで、すごく喜ぶと思うので」
「あっ、うん、ぜひ」
妹さん想いなんだなと、ほのかは彼にほんわり好感を持った。
ほのかのクッキーが和やかに受け取られた後。
ほのかはあやめが買ったヌイグルミになるブランケットを。
あやめは天華が用意したいい香りのボディクリームをもらい、それぞれとても喜んだ。




