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皆でクリスマス・出迎え

 女子たちがおめかししている間。恭は夕暮れの街を歩いて、駅まで大田原を迎えに行った。


「大田原」


 声をかけられた大田原は、足早に恭に近づく。


「八神。悪いな、駅まで迎えに来てもらって」

「いや。どうせ今、家の中、女ばっかで居心地が悪いから、ちょうどいい」


 恭の話を聞いた大田原は緊張で「う~」と唸る。


「八神のついでとはいえ、同年代の女子たちとクリスマスパーティーなんて緊張してしまう」


 そんな友人に、恭は疑いの目を向ける。


「……お前は今も秋津さんを狙ってるんだよな?」

「狙ってると言うか、ふんわりして可愛らしい人だなと勝手に好意を持ってる……」

「じゃあ、いい」

「『じゃあ、いい』とは?」


 秒で興味を無くした友人に、大田原が不思議そうに問い返す。


 しかし恭は聞こえなかったかのように、さっさと話を変える。


「うち、いつもクリスマスはフライドチキンかピザなんだけど、菓子や飲み物はドラッグストアのほうが安いからって買い出し頼まれた。ケーキも取りに行くから荷物持ち手伝ってくれ」

「ああ、構わないぞ」


 それから男子たちはドラッグストアとケーキ屋で買い物を済ませた。


 帰宅した彼らが玄関のドアをガチャッと開けた瞬間。


「お帰り、恭~! お姉ちゃん、サンタだぞ! どうだ、可愛いか!?」


 天華にヘアメイクしてもらったあやめは、ハイテンションで恭に出迎えのハグを仕掛けた。


「あの……」

「デカいと思ったら大田原君か! ゴメン! 間違えた!」


 あやめは瞬時に離れたが、大田原の後ろにいた恭が憤怒の形相で咎める。


「テメェ、何、よその男に抱き着いてんだ……」

「お前かと思ったんだよ~! そんなに怒るなよ~!」

「よく見もせずに抱き着いてんじゃねぇ……」


 いつになくブチ切れている友人を、大田原はオロオロしながら宥める。


「や、八神。間違いは誰にでもあるし、俺は気にしてない」


 190センチもある大田原にとって、低身長幼児体型のあやめはあまりに幼いので、全く異性として見ていなかった。


「ほら、大田原君はこう言ってるぞ。お前が怒り過ぎなんだ」

「二度と、絶対に、やるな」


 一語一語に怒気を込めて禁じる恭に、ほのかは頬を赤らめて悶える。


「はぁはぁ、今日も推しの嫉妬が芳しいよぉ」

「あっ、秋津先輩。お久しぶりです」


 ほのかは歓喜のあまり、大田原の手を両手でガシッと取って感謝を告げる。


「久しぶり、大田原君! 今日は来てくれて本当にありがとう!」

「うぇっ!? あっ、はい!? こちらこそ!?」


 好きな子にいきなり弾ける笑顔で手を握られて、大田原は軽くパニックになった。


 そんな2人の横で、あやめは困り顔で恭に許しを請う。


「いい加減に許せよ~。今日はクリスマスだぞ? こんな浮かれた格好をしてる時に、そんなに怒られたら、余計に居たたまれなくなるだろうが~……」


 少し気持ちが落ち着いてきた恭は、ようやくあやめの格好に気付く。


「……なんでサンタの格好なんてしてんの?」

「わ、私が勧めたの。クリスマスだし、サンタの格好とかしたいねって」


 代わりに説明するほのかに、恭はジト目で指摘する。


「なんで言い出したヤツが着てねぇんだ」

「自分の分を注文し忘れたそうだ。大田原君には申し訳ないが、ほーちゃんは私服でも十分可愛らしいので愛でてあげてくれ」


 あやめはほのかの真意を知りつつも、話をややこしくすまいとフォローした。


 話を振られた大田原は「あっ、はい」と素直にほのかを褒める。


「そのセーターとスカート、すごく似合ってて素敵です」

「あ、ありがとう。優しいね」


 割といい雰囲気の2人をよそに、あやめは改めて恭に尋ねる。


「で、どうだ? 恭。お姉ちゃん、可愛いか?」

「……またあの人にいじられたのか?」

「そうだけど、このくらいでも嫌か?」


 前回のメイクはすごすぎてもはや別人だったが、今回はまつ毛を上げて目をパッチリさせ、頬と唇に少し色を乗せた程度だ。


 このくらいなら恭の姉認証を突破しつつ、ほどよく可愛いんじゃないかと、あやめ自身は思っていた。


 不安そうに問うあやめから、恭はサッと目を逸らして答える。


「……別に家でする分にはいいけど」

「オシャレは普通、外でするもんだぞ」

「外ではするな」


 キレ気味に注意する弟を、姉は笑いながら煽る。


「なんでだ!? 可愛いお姉ちゃんを他の人に見られたくないからか!?」

「そうじゃなくて。変なのが寄って来て俺に泣きついてくるのが目に見えてるから」


 姉弟が言い合っていると、リビングから天華が現れて、もじもじと声をかける。


「あ、あの。お帰り、八神君」

「……どうも」

「ああ、そちらの方もサンタ服なんですね?」


 大田原の指摘に、天華ははにかみ笑顔でスカートを摘まんで見せる。


「う、うん。クリスマスだから、なんかちょっとはしゃいじゃって。変かな?」


 陽太がここにいたら、


『変なわけがない! 最ッ高に可愛いよぉぉ!』


 と力の限り叫んでいただろう。


 しかし、この場にいる男は恭と大田原だけなので、


(綺麗な人だが、秋津先輩の前で他の女性を褒めるのは。それにどうやら八神に聞いてるようだし、俺が答えるのは違うだろう)


 と、まずは大田原が発言を控えた。


 ところが肝心の恭もノーコメントのせいで、気まずい沈黙が落ちる。


「……おら、恭! お前に聞いてんだぞ! 可愛いとか似合うとか言え!」


 見かねたあやめが、恭の側面にタックルして促すも、


「お前の友だちだろ。自分で言えよ」


 と弟は頑として褒めない。


「テンちゃんは今日も最高に綺麗で可愛いぞ! うちの弟がウルトラ無愛想なだけだ! ゴメンね! 無駄に反抗的で!」


 代わりにあやめがフォローするも、天華はかえって恥ずかしがって、


「いや、大丈夫! それより荷物重いでしょ!? 後は私たちがやるから、2人は手を洗って来て!」


 と自ら話を切り上げた。

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