皆でクリスマス・おめかし
クリスマスパーティーを楽しみにしているのは、八神姉弟だけではない。
放課後の秋津家。あやめやほのかと楽しくおしゃべりしていた天華は、ふと思い出したように切り出す。
「なぁ、あやちゃん家でするクリスマスパーティー、八神君も参加するんよな?」
天華に尋ねられたあやめは「うん」と答える。
「交換用のプレゼントもしっかり買わせたから期待していいぞ」
「期待してええんですか、お姉様!? うち、ぶっちゃけ八神君のクリスマスプレゼントが欲しいねん!」
勢いよく食いつく天華に、あやめは少し複雑な顔で問う。
「やっぱりテンちゃんは、今も恭を狙ってるのか?」
「いや、友だちの立場を利用して弟を狙うなんて卑怯やし、肝心の八神君が全く落とせそうにないから、諦めようとは思っとるんやけど……」
歯切れの悪さから一転、天華はワッと思いを爆発させる。
「やっぱ高校最後のクリスマスやし! 両想いは無理でもイケメンにプレゼントをもらった思い出は欲しいねん!」
「じゃあ、勝負だな、テンちゃん。ぶっちゃけ私もアイツのプレゼントが欲しいんだ」
「なんで? 八神君、そんなにええの選んだん?」
「お楽しみを減らしちゃ悪いから言えないけど、メッチャ私好みのプレゼントだったから欲しいなって」
あやめは猫や星のモチーフが好きなので、恭が選んだプレゼントはまさにドンピシャだった。
「八神君、そんなええプレゼントを買ったん? これは絶対に勝たな!」
2人ともサッパリした性格なので、変に遠慮し合うことはせず『尋常に勝負!』ということで話はまとまった。
2人の会話を見守っていたほのかは「あの」と遠慮がちに申し出る。
「プレゼント交換もいいけど、せっかくのパーティーだし、良かったらコスプレとかしない?」
「えっ、意外。秋津さん、大人しいのに。男子もいるパーティーでコスプレとか、意外と弾けるタイプなんやね?」
目を丸くする天華に、ほのかはワタワタしながら言う。
「へ、変かな? 皆でサンタの服を着たら楽しいかなって思ったんだけど」
「大田原君はともかく恭は嫌がりそうだが」
あやめの懸念に、ほのかは慌てて訂正する。
「あっ、いや。女の子だけ」
「皆がええなら、有りかもサンタ服」
やる気を示す天華を、あやめはニヤニヤとからかう。
「なんだ~? 気合のサンタコスで、うちの弟を誘惑しようって言うのか~?」
「アーッ!? ゴメンなさい~! 結局あわよくば好かれたいと期待しとる自分がいます~!」
友人になってからの天華はあやめを利用しようとはしないものの、恭への好意は捨て切れないでいた。
人を好きになることは、その人の自由だ。その恋のために自分を利用するのでなければ、天華が恭を好きなのは構わないと、あやめは思う。
だからあやめは天華に冗談っぽく笑って返す。
「へっへっへ。まぁ、いいでしょう。テンちゃんのサンタコス、私が見たいからな」
クリスマス当日。八神家を訪れたほのかはニッコニコで、あやめに手提げ袋を渡す。
「あやちゃん。これ、約束のサンタ服」
「ありがとう。でも本当にいいの? 衣装代を払わなくて」
心配するあやめに、ほのかは異様な情熱で請け負う。
「私の趣味で着てもらうのに、衣装代なんてもらえないよ! ただそれを着て、可愛いサンタ姿を見せてくれたらいいから!」
「うちも自分で用意してきた! 1人で着るのは流石に恥ずかしいけど、3人なら平気やね!」
しかし天華の発言に、ほのかは明後日の方向を見ながら答える。
「あっ、ゴメン。実は自分の分を注文するの忘れちゃって。私だけサンタ服ないの」
「え~? そうなん?」
ほのかの言い訳を素直に信じた天華は親切に提案する。
「それやったら今から買いに行く? 秋津さんのアイディアやのに、当の本人だけ着られへんなんて悲しすぎやし」
「う、ううん! 全然気にしないで! 正直2人のサンタ姿を見たかっただけだから!」
「そうなん? じゃあ、うちとあやちゃんだけ着る?」
天華は最後まで疑わなかったが、ほのかと付き合いが長いあやめは友人の企みを見抜いた。
(ほーちゃん、元から自分が着る気はなかったな)
彼女は自分と弟の関係に夢を見ているので、萌えイベントを作りたかっただけだろう。
この中でいちばんピュアな天華は、ニコニコとあやめに話しかける。
「あやちゃん、ついでやし、髪とメイクやらせてや~」
「髪はともかくメイクは恭が二度とするなって言ってたぞ」
あやめの報告に、天華は首を傾げる。
「メイクしたあやちゃん、メッチャ可愛かったのに、何がアカンのやろ?」
「ちょっとだけ、ちょっとだけやってみない? こんな機会滅多にないし! オシャレしたあやちゃん、私が見たい!」
ほのかのゴリ押しに乗じて、天華は再びあやめにねだる。
「ってなわけで、ちょっとだけしてもええ? この間みたいに別人レベルにはせんから」
「う~ん。じゃあ、ちょっとだけ。恭が『誰おま』ってならない程度に」




