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今日も一日

いつものお仕事、いつもの一日、お疲れ様。

 ドレイク隊長の仕事は転生者の相手だけでは無い、この街で起きる犯罪は全てが彼の仕事だ。


 引ったくりや食い逃げ程度の軽犯罪から、集団の押し込み強盗等の凶悪犯まで、捜査の指示を出して逮捕し裁きを下す、一部貴族や領地外(よそ)で犯罪を犯した者を除き、一連の仕事が終わるまでがドレイクの裁量に任される。



 部下はいるんだけどな、食い逃げとか広場で無断で屋台出してる奴の罰金位(くらい)は詰め所の兵士長辺りで捌いてくれないものか、出世と言えば出世なんだが、不幸中の幸いは他種族同士の場合性犯罪が起こらない事位か。


 前世は派出所勤務の警察官(ペーペー)だったドレイクの前世がえりは遅い方で、二十(はたち)を過ぎて自覚した『今世の自分』は国境沿いの砦詰めの騎士だった、そのまま一生(前世で言えば)自衛官を続けるのかと思いきや、何の因果か地方都市とは言え、今では警察署長と裁判長を兼ねている。


 アラマドに笑われた漢字検定はともかく、警察官時代に身につけた事は、既に王都に立派な鑑識や法医学の第一人者がいて、ドレイクに出る幕はない、が、別段残念には思っていない。転生者であることを公にしていないので逆にありがたい。




 近隣で頻発していた夜間の侵入盗を、偶然アラキ酒造の警備員ラクスが”自宅“で捕まえた。

 家人が寝静まったところを盗みに入る手口で、既に犯行が二桁を越えていたので、報奨金の事もある、部下に任せずドレイクが直接事情を聞く事にした。


「寝室に妻と一歳になる娘が寝ていまして、俺は台所で寝ていましたが、忍び込んで来たこそ泥に踏んずけられて目を覚ましたんです、向こうも俺に躓いて転んだので、楽に取り押さえられました。」

「本当ならその日は夜警で留守の筈だったそうだな、その夜警の勤務予定は商会の従業員以外は誰に話した?」


 実際には同僚の都合で交代したが、男手(ラクス)が仕事で居なくなるのを知っていて、その日を狙って来たなら大事(おおごと)だ、どこから情報が漏れた?


 これまでの被害者に共通点は無いが……


 こそ泥が家人を起こさずに盗みを働く自信があったから、無作為にラクスの家に侵入しただけなら良いが、いや良くはないか。

 今回は意外な場所にラクスが寝ていて、こそ泥の不意を突く形に成ったが、赤ん坊がいれば何時(いつ)夜泣きで家人が起きるかわからないのだ。

 発見されて嫁さんだけだったら居直り強盗になった可能性もあるしな。


「誰にも話していません、会長が警備の内容(そうゆうこと)は親兄弟にも話すなって厳しいですから、女房だって子供を産むまではウチの店で働いていたんで心得てます、あ、でも隣近所は俺が4日昼に働いて、5日目で夜勤なのはだいたい分かってますねぇ。」

「暮らしぶりを見てれば分かるか……」

 下調べをしていたなら、他でも目撃されているか。

「えぇ。」

 自白させれば早いんだが、余罪についてはしらばっくれて認めやがらねえ、最近は初犯の奴でも指の跡(指紋)が証拠になると知って手袋してるんだよな、でもまぁ騎士団なめんなよ、鍵開けとか類似点は見つかってんだ。


「ところで、なあ」

「はい?」

「何で、お前さん台所で寝てたんだ?それも床で。」

 ラクスの視線が泳いだ、俺も実況見聞で家の間取りは知ってるぞ、夜泣きか?寝室がダメでも居間のソファーが有っただろ?


「い、イロイロ有ったんです。」

 イロイロ?何やらかして嫁さん怒らせた?浮気か?





「いらっしゃいませ、ドレイク隊長。」

 夕刻の閉門の鐘が鳴り響く頃には、何とか仕事を片付けた、行きつけの店で食事、看板娘の元気な挨拶。


 男の一人暮らしだ、侘しさが際立つので自炊なんかしない、やれば出来るけどなんか終わったみたいに見える、外食が一番。


 ウッカリ真面目に材料を買い込んだ時に限って、狙った様に事件が起きて詰め所に泊まり込みが長くなる、帰った時には謎の物体になっております、ホントに説明しがたい謎のナニカ、入ってた木箱ごと庭で燃やしたこともある、食べ物は無駄にしちゃいけない。



「アレスさん、疲れてます?」



 つらつら考え事をしていると性格美人な婚約者(仮)が不思議そうな顔で覗き込んで来る。

 相手の手を握りしめて脈絡無く『嫁に来てくれ』と口走りそうになった。


 危ない危ない、今日は9人いる兄貴のうち3人が同じ店内に居るんだ視線が突き刺さる。

 本気で惚れてる相手の為でも『妹が欲しければ俺の屍を越えていけ』的な扱(シゴ)きは、今日はもうちょっと勘弁もう無理。


 それにコイツ卵を殻ごと焼いて爆発させた前科があるし……状況は変わらないと言うより悪化する、俺の命の危険的な意味で。


 一日の終わりに顔が見れた、食事が美味い、明日も早い、仕事は山積み。


 今日はもう寝る。


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