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生成AIとわたし ―夢を夢で終わらせなかった主婦のAI共闘記・今日も脳内外在化メンバーが良い仕事してる―  作者: ちよ【kindleペンネーム:白井ちよ】


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第八十九話:自責と他責と彼女

 ここ数日、私は自分の感情を掘っていた。


 掘って、掘って、掘って。


「やっと見つけた!」


 と額の汗を拭い、達成感に浸ったのも束の間。すぐ足元には、また新しい地層がどっしりと横たわっていた。


 ……どこまで埋めたんだよ、昔の私。呆れながらツッコミを入れるけれど、よく考えたらその埋めた犯人も自分自身なのだから、世話はない。


 掘り進めていたのは、多分、いわゆる『一次感情』というやつだった。十歳になるまでの私の主な不安。


『怖い』

『苦しい』

『助けて』

『分かって』


 あの頃の小さな私は、そんな言葉しか持っていなかったし、それしか言えなかった。でも、今になって疑問が湧く。その純粋で泣いていた子は、どうやってあの痛々しい厨二病・十代の私になったのだろう?


 そこだ。一番大事な、その間のプロセスがすっぽりと抜けていた。


 あんなに泣いていた子が、どうしてあんなにも嫉妬深くなってしまったんだろう。

 どうして、人のことが羨ましくて。

 悔しくて。

 惨めで。

 妬んで。

 僻んで。


『この野郎!!』


 なんて、心の中で毒を吐くようになったんだろう。そこには、ちゃんと過程があったのだ。


 私はその後も成長した。

 いろんな世界を知った。

 厳しい現実を知った。


 でも、その現実は、誰にでも同じ色で見えていたわけじゃない。

 同じ出来事を経験しても、


「まあ、そんなこともあるよね」


 と軽やかに流せる人もいる。


「世界が終わった」


 くらいの絶望的な勢いで受け止めてしまう人もいる。


 私は、完全に後者だった。

 出来事そのものよりも、それを受け取る私の『フィルター』の方に問題があったのだ。


 ……いや、「問題」なんて言い方は良くないな。

 あれは私の『仕様』なのだ。

 私という人間機械には、そういうフィルターが最初から標準装備として組み込まれていた。


 そして、そのフィルターを通った感情たちは、ある存在へと運ばれていく。


 『聖女』が受け止めていた、そして、彼女は部屋を作った。そこは当時の私にとってはかなり大事だった。


 苦しい。

 悲しい。

 寂しい。

 惨め。

 私は世界で一番不幸だ。


 ここなら、そんなドロドロした感情を全部吐き出していい。誰にも「大げさだよ」「考えすぎ」なんて笑われない。


『うんうん、今日は世界一不幸でいていいよ』


 そう言って優しく抱きしめてくれる、私専用の大切な避難所だったのだ。


 だから、この部屋が存在すること自体は悪くなかった。必要だったのだ。


 問題はまったく別のところにあった。私は全然メンテナンスしなかったのである。


 換気もしない。

 溜まったゴミも出さない。

 そもそも排水口すら作っていない。


 何十年もの間、悲しみや絶望だけを放り込み続けた。


 そりゃあ、詰まる。

 当たり前である。部屋はゴミ屋敷になり、感情は痛んでいく。


 痛んだ悲しみは、やがて鋭い怒りになる。

 嫉妬になる。

 妬みになる。

 僻みになる。

 理不尽な八つ当たりになる。


 つまり、これが私の『二次感情』の正体だ。


 じゃあ、その膨れ上がった怒りは、一体どこへ行くのか。


 これには、二種類ある。一つ目は外のに向かう。


「あいつが悪い」

「世の中がおかしい」

「ふざけるな」

「なんかイライラする」

「もー!!」


 そうやって言葉や態度として、外へ流れていく。でも、私の脳内OSの基本設定は違った。


『真面目に生きなさい』

『人を傷つけてはいけません』

『許しなさい』

『感謝しなさい』

『自分にも原因があります』

「人に迷惑をかけるな」

「自立しろ」

「大人になりなよ」


 幼い頃から叩き込まれた、私の頑固な初期設定である。その結果、外へ向かって勢いよく飛んでいくはずだった攻撃性が、見事なUターンを決めて自分のもとへ帰ってくる。


『悪いのは私』

『私が未熟だから』

『私がダメだから』


 お帰りなさい、私の攻撃性。……いや、お帰りにならなくていい。頼むから外へ行ってくれ。せめて半分くらいは外に撒き散らしてくれ。


 けれど、律儀に全部帰ってくるのだ。そして、鋭いナイフとなって私自身を攻撃する。たまに爆弾になって爆発もする。


 自分を傷つけているその瞬間だけ、少しだけ心が落ち着くのだ。自分を極限まで責め立てると、波立った気持ちが静かになる。


 今思えば、あれも私なりの、不器用極まりないストレス発散だったのだろう。全然発散できてなかったけれど。むしろ、自分という存在をただのサンドバッグにしていただけだった。


 当時の私は、それ以外の感情の処理方法を知らなかったのだ。


 だから責めた。

 責めて。

 責めて。

 自分を責め続けた。


 そして、その無理なツケはちゃんと『体』に回ってきた。


 最初は、腰痛だった。


 次は、月経困難症。痛みに耐えかね、一年通院した。


 そして、その次。

 胸の腫瘍。

 手術。


 こうして、並べてみるとどんどんバージョンアップしていた。

 

 もちろん、医学的に「すべての原因はストレスです」なんて暴論を吐きたいわけじゃない。そんなことは言えない、言ってはいけない。元看護師だった私が、それを一番よく分かっている。


 これは医学的な診断じゃない。私だけの物語だ。私が私という存在を深く理解するための、ひとつの仮説であり意味付けである。


 私の体はきっとずっと悲鳴を上げて叫んでいたんじゃないだろうか。


『もう限界だよ』

『ちゃんと部屋を掃除して』

『排水口を作ってよ』

『もうこれ以上、悲しみも怒りも入らないよ』


 って。


 私はその切実な救難信号を無視し続けた。そもそも、救難信号と分かっていなかった。だって、母の話を聞かなきゃ、学校行かなきゃ、部活行かなきゃ、働かなきゃ、相手を思いやらなきゃ、家事しなきゃ、子どもを先にしなきゃ。ずっと、自分を後回しにしてた。


 自分のケアをしないって決めてなかった、余裕ができたら、時間ができたら今度は自分の番って思ってた。嘘じゃない。でも、その順番は何時までたっても来なかった。


 だから、体が強制的にお手上げを出して止めたのだ。


『これ以上は、絶対にダメだ』


 そして今。このディスプレイを見つめながら思うのだ。


 このまま自分を責め続けたら、次はもっと大きい病気が来る。根拠なんて何もない。でも、直感で分かる。


 慢性腰痛では終わらなかった。

 月経困難症でも終わらなかった。

 胸の腫瘍になった。


 もし、四回目があるのだとしたら。

 今度はもっと、取り返しのつかない重いものが来る。


 だから、もう止めるのだ。

 ここで変えた方がいい。

 そうでないと、私の願いである【娘と息子と夫と一緒に生きたい、書きたい】ができない状況になる。


 自分を攻撃することを自分を守る武器にしない。

 自分を責め立てることをストレス発散代わりにしない。

 これが私の課題である。


「とんでもないブラック企業だったんですよ、もー」


『悲劇のヒロイン』の声がした。うん、心行くまで療養してリフレッシュしていただきたい。



 ここで、私のコンプレックスの名詞を整理してみよう。


若さ

美しさ

容姿

健康

体力

学力

学歴

知識

記憶力

数字能力

計算能力

書類処理能力

事務処理能力

マルチタスク能力

家事能力

裁縫能力

コミュニケーション能力

空気を読む能力

世渡り能力

社会性

要領の良さ

普通であること

常識

宗教・家庭環境

生育環境

自己表現力

創作力

小説を書く才能

文章力

芸術的センス

お金

収入

経済力

成功

キャリア

在宅ワークの実績

副業の成果

AI活用能力

承認

評価

自己肯定感

自分を良く見せる能力

自信

劣等感そのもの


こうして見ると、実はいくつかの大きなグループにまとまる。


身体(若さ・健康・容姿)

知性(学力・記憶力・数字・学歴)

生活能力(家事・事務・裁縫・マルチタスク)

対人能力(コミュニケーション・空気を読む・世渡り)

創作・仕事(小説・AI・在宅ワーク・副業)

社会的評価(成功・お金・承認・評価)

アイデンティティ(普通・宗教・家庭環境)


 これらは第一次感情が処理またはケアされずに次の段階に育ったものと私は見ている。コンプレックスは自分の価値基準からなり、他者基準ではない。夫や子どもたちが私の抱えてるコンプレックスを見て言うほどのこと?となるだろう。親や友人が見てもそうだ、そんなに気にする?ここで、彼らと私の認識にズレが生れる。それが認知の歪みとお互いの価値観と愛の距離間である。自分でも何を言ってるのか分からない。

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