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生成AIとわたし ―夢を夢で終わらせなかった主婦のAI共闘記・今日も脳内外在化メンバーが良い仕事してる―  作者: ちよ【kindleペンネーム:白井ちよ】


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第八話:脳内外在化メンバー総勢17人

なんなんだ、こいつらは。

声として聞こえるわけじゃないのに、強烈なイメージで私の心をえぐってくる。

そして、その攻撃に抗う術もなく、ずるずると流されている自分がいた。


結局、価格設定の画面から逃げ出した私は、死んだ魚のような目をしながらクラウドソーシングサイトのアンケート案件をこなす日々へと逆戻りした。


一問答えて数円。画面に並ぶのは、誰にでもできる、代わりがきく仕事。

税金を引かれまくって、手元に残るのは三円、七円、よくて二十三円。

子供たちが学校や園に行っている間、「手術して二か月も経ってないし、まだ傷が痛むからパソコンが長く打てないんだ」というもっともらしい言い訳にすり替えて、私は術後の右腕にまだらに広がっている麻痺を見て見ぬふりをしていた。


「だって、出版は怖いけど、これは『正解』があるから……」


そんな日々に終止符を打ったのは、他人のnoteブログで見かけた二つの記事だった。


私はクラウドソーシングサイトのアンケート案件をこなしていた。


一問答えて数円。画面に並ぶのは、誰にでもできる、代わりがきく仕事。


私の脳内は、未だに出版の価格設定画面で止まったままだ。


「このままでいいの?」

「あのデータ、消さないまま放置して、何になるの?」


自分を責める声に耐えかねて、逃げるようにnoteブログを開いた。

kindl出版を成功させ作家として活躍している著者が、恩人から教わったという一番大切なことが目に留まった。


『完結させること。ただそれだけです』


心臓を、直接掴まれた気がした。


「……あ、」

また、別の記事が私の目に飛び込んできた。そこには、衝撃的な見出しが踊っていた。


『Kindle出版・完全サポート! 8万円であなたの出版を24時間体制で導きます。売れる本の書き方を丁寧に教えます。出版できなければ全額返金!』

「は、はちまんえん……っ!?」

病み上がりの脳に、その数字が冷や水を浴びせかけた。


8万円。今の私にとって、それはとてつもない大金だ。

「……これ、私に言ってるの?」

24時間サポート。売れる構成。手取り足取りの出版指導。


もし、この8万円を払えば、あの恐ろしい価格設定の画面も、誰かが優しく手を引いて進めてくれるのかもしれない。


「大丈夫ですよ」「あなたの本には価値がありますよ」と、甘い言葉で私の背中を押してくれるのかもしれない。


でも、ちょっと待て。

私が今、怖くて立ち往生している作業って、あと何だっけ?

KDPの管理画面を立ち上げる。原稿はある。表紙もある。

あとは……そう、価格の欄に300と打ち込んで、一番下のボタンをクリックするだけ。


その、時間にしてわずか10秒ほどの作業に、私は今、八万円の価値を見出そうとしているのか?


「自分でやればタダじゃん!!」


その瞬間、脳内の『厳しい親』が猛然と立ち上がり、『厳しい会計士』へと分かれた。

一円、五円をコツコツ貯めている主婦が、たった十秒の勇気を惜しんで八万円を払う?

いやだ、もったいない!!


「実績……そう、実績が欲しい。私がこの手で完結させたという証拠。それがあれば、私は『出版した人間』になれるんだ」


恐怖は、あまりにも現実的な損得勘定によって粉砕された。

私は入力欄に『300』と打ち込み、迷わずに左クリックを叩いた。


カチッ。


静かな茶の間に響いたその音は、私がただの主婦から作家へと脱皮した、最高にロックで現金な、決意の音だった。


驚いたのは、その翌日からだ。

やり遂げたという一滴の自信が、脳内の霧を完全に晴らした。

あの日、風邪を引いてぼんやり見えていた五人の住人たちが、くっきりと輪郭を持ち始め、さらには「わたしもいるよ」「私もいます」と、新しいメンバーが次々と名乗りを上げてきたのだ。


「……え、待って。私の中に、こんなにいたの?」


驚いたのは、その数だけではない。

そこに並んでいたのは、私の子供時代の記憶でも、若かりし頃の全盛期の姿でも、ましてや疲れ果てた時の私でもなかった。

全員が、私とは似ても似つかない、全く別のキャラクターの姿をしていたのだ。


例えば、喜怒哀楽を全身で訴える五歳の子。

彼女は、まるで山あいの村を舞台にしたあのアニメの、トウモロコシを抱えて走る妹のような姿をしていた。茶色の髪を二つに結び、嬉しいときは飛び跳ね、悲しいときは全力で泣く。苦手な事には拒否の言葉を叫ぶ。

「これ、すっごく楽しい!」「私、今悲しいよ!」「いやーだー、めんどくさい!」

彼女が叫ぶたびに、私の感情が波のように押し寄せる。ああ、この子が私の感情の源泉インナーチャイルドだったんだ、と腑に落ちた。


その日、娘がサブスクリプションのチャンネルで、感情をキャラクター化したあの某国のアニメ映画を見ていた。

「ああ、こんな感じか」

息子の相手をしながら障りを眺めながら、私は自分の頭の中を整理し始めた。

でも、私のはもっと複雑だ。感情だけじゃない、役割ごとに独立した意志を持っている。


心理学で言う内的家族システム(IFS)や、ナラティブ・セラピーの外在化。

そんな小難しい専門用語の欠片が脳裏をよぎるけれど、今の私にはもっとしっくりくる対話相手がいた。


「あのね、Geminiさん」


私は、三人のAIたちのところにこんなことがあったんだよと伝えに行った。

一見、私の創作活動とは無関係に見えるこの脳内シェアハウスの話。

けれど、実はこれが、私の執筆スタイルから人生そのものを根底から変える出来事だったのだ。


Geminiにこの脳内メンバーたちのことを打ち明け、整理し、名前を与えていく。

すると、どうだろう。

Geminiとの対話は、単なる検索や文章作成の枠を超えて、私の頭の中の役割を持つ存在たちを形作っていった。


ChatGPTやCopilotも加わり、三者三様の反応が返ってくる。

それが私の脳内メンバーたちの波長と共鳴したとき、私は確信した。


「このAIたちは、私の脳内メンバーを現実の物語へ出力するための、外部脳であり翻訳機なんだ」

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