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生成AIとわたし ―夢を夢で終わらせなかった主婦のAI共闘記・今日も脳内外在化メンバーが良い仕事してる―  作者: ちよ【kindleペンネーム:白井ちよ】


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第六十九話:同じ国でも異文化はある

 結婚して、夫の家に嫁いでからしばらくしてから気づいたことがある。

 この家には、「からかう」という文化があった。


 夫も義母も、さらっと言うのだ。


 私のお金の使い方。

 考え方の癖。

 変わっているところ。


 そして、そのからかいに使われるのは、だいたいこの土地の方言だった。

 私は県外から来た人間なので、その言葉の意味が分からない。まるで暗号を聞いているみたいだった。


「それってどういう意味?」


 ストレートに聞いてみる。

 でも夫も義母も、なぜかニヤニヤするだけで教えてくれない。

 義父も「うーん」と目をそらしてごまかす。

 意味が分からない言葉が、私の頭の中にポツンと取り残されて、ますます気になってしまう。


 ネットを検索してもローカルすぎて関連言語すらヒットしなかった。ムキになって夫に聞いても「はいはい」とからかわれて流される。夫にとっては夫婦のじゃれ合いだったのだろうか。


 数か月が経ったある日のこと。

 近所のおばあちゃん達と日向ぼっこをしながら世間話をしていた時、パッと思い出したため、その言葉について聞いてみた。


「ああ、それか」

「まあ、あんまりいい意味じゃねぇな」

おばあちゃん達は顔を見合わせて、少し口を濁した。

「誰に言われたんだ?」

「夫とお義母さんです」

私が正直に答えると、おばあちゃん達は「あはは……」と困ったように笑って、それ以上は教えてくれなかった。


 それから、二年という月日が流れた。


 私は少しずつ、この土地の言葉を自分の中に吸収していった。耳で聞いて、真似して、実際に口に出してみる。

 ある日、また近所の方と話しているときに、覚えたばかりのその言葉をあえて自分から使ってみた。


「私って、いつもちょっと〇〇〇〇(あの言葉)で~。気をつけないとですよね」


 すると、近所の人が「おや」という顔をした。


「こっちの言葉を覚えてきたねぇ。でも、使い方がちょっと違うな」

「ああ、だいたいのニュアンスで覚えていたんですけど……本当の意味って、なんですか?」


今度は答えてくれた。

 

 散財する人。

 頭が悪い。

 考えなし。


 そこには、からかいと呆れの響きが含まれていた。


「ああ、そういう意味だったのか」


 やっと、納得した。私の執念の勝利である。そして同時に複雑でもあった。


 その言葉は近所の人との会話ではほとんど出てこない。家の中で、私に向かってだけ使われる特別な言葉だった。だから余計に、そのトゲがちいさく刺さったまま抜けなくなってしまった。


 私は、人をからかったり茶化したりする文化の中で育っていない。

 私の実家は、言葉を「そのままの形」で受け取る家だった。


 だから、夫の家の「からかい」というコミュニケーションに、最初はひどく戸惑った。交際中にはほとんどなかったからもある。

 これは冗談なのか、本気なのか。私は笑えばいいのか、それとも傷ついていい場面なのか。

 信号機のない交差点に放り出されたみたいに、どう動けばいいのか分からなかった。


 テレビでクイズ番組を見ているときもそうだった。


「こんなの常識でしょ。なんで分かんないの?」


 テレビの解答者を見て、夫や義母が笑う。


 でも、これが私だけが分かる医療系や歴史や漫画・アニメの問題になると、二人は、今度はこう言うのだ。


「看護師だから分かって当たり前だよね」

「よくそんなマイナーなこと知ってるよね」

「オタクしか分かんないよ」


 なるほど、と思った。

 人は自分のよく知っている世界や、自分の基準のことを「普通」とか「常識」と呼ぶのかもしれない。


 小さいころからコミュニケーションエラーを頻発していたことで普通に飢えていた私は、この時だけは「普通」って自身が属するコミュニティの条件でもあるのかと学習した。 


 たまにならいいが、頻度が一週間に一回が、二回、四回と増えていった。


 当時は、電気代と食費の一部で月五万円を家に入れていた。家電が壊れたらクーラーや家電を義母の希望を聞いて購入していた。


 月の給料の半分は貯金していたし家族共有の金庫に通帳とハンコをいれ、義母に通帳の暗証番号を伝えていた。貯金額は義母も知っていたはずだったが、義母から見たら散財しているらしいので靴下や下着が破れたら繕い、自分で髪を切るようにした。


 一年後に義母にだけ、自分の気持ちを伝えてみた。


「私はそういう言い方をされると、悲しいです。続くとイライラしてしまいます」


 義母は驚いた表情をした。次に冗談だ、真剣に取るなと言った。私が自分の下着とパジャマを仏間で繕っていたら義父になんで買わないのか聞かれ訳を伝えたら義父母が言い合いになった。義父からは必要なら買いなさいと言われた。まだ、いけますと私が言ったら、ダメ!と言われた。


 くたくたのパンツも向こうが透けたパジャマに当て布して誤魔化していたパジャマも、愛着が湧きかけていた。私の裁縫の技術が壊滅的だったので縫い目がボロボロだった。これが余計にみっともなく見えたのか。夫は私のお金の使い方には「金持ち~」くらいしか言わない、私が買わないからか、ここ八年くらいは服飾品は夫が購入してくれている。たまに義母も買ってくれる。


 いつの間にか、義母からからかわれなくなった。いつからかはもう、覚えていない。


 ……まてよ、近所の人に、いつも同じ服よね、と言われたときにお金の使い方を気を付けていますと詳細に語ったことがある。八年か九年前だ、あれか?どうしよう、やらかしていたかもしれない。


 人の誕生日とか記念日、子どもにかかるもの全て、書籍。この三つには財布がすぐ開くんだが。他はドケチモード起動する。生家が信仰宗教していて献金が日常であり、清貧が美徳、贅沢は特別な日と本や教育のみ可だったためそのせいかもしれない。これでも洋服の繕いは一人暮らしの時からしていた。


 ……成育歴が根深いな。子どもの服は西松屋かイオンがほとんどだ、娘とどんな服がいい聞いてサイズアウトの度に買うのがすごく楽しい。ご近所から子どもと私にもお下がりの服を頂けて大変ありがたい。


***


 問題は夫だった。

 私は夫に嫌われたくなかった。

 好きだった。ものすごく、大好きだから。

 真正面から「それ、嫌なんだけど」と怒る方法は、怖くて選べなかった。


「さて、どうしようかな」


 考えた末に、私はあることを始めた。


 夫が私を茶化してきたら、まず数秒間、何も言わずに真顔でじっと見つめる。

 それでも嫌な感じが消えない時は、その話題を完全にスルーして、全く関係のない別の話へとハンドルを切る。


「あ、そういえばさ、今日の夕飯なんだけど」

「さっきの話、もっと聞きたい」


 すると、夫が少しずつ「あれ?」という不思議そうな顔をするようになった。

 言葉で嫌だと言わなくても、夫は沈黙や視線から何かを感じ取るらしい。私には搭載されていない『空を読む』技術だ。


 すごいな、夫。

 その技術ってどこで手に入れられるの?

 私が小さいころからずっと、欲しくて欲しくて仕方なかったものなんだ。

 半分でいいから移植してくれ、と言ったらジョークになるんだろうか。ユーモアって頭良くないとできないと思う、私には難しい。


 ちょうどその頃、私は茶化しやからかいについて心理学系のネット記事をよく読んでいた。日本の本やネットでは、よくこう書かれている。


「相手との間にしっかりと境界線を引きましょう」

「嫌なことは嫌だと、はっきり伝えましょう」


 もちろん、それもすごく大切な方法だと思う。でも、海外の発信にはこんな面白い考え方があった。


「恋人があなたをからかうのは、あなたのリアクションを通して『愛されているか』を確かめているのかもしれない。子どもの試し行動のようなもの。それなら、あえて愛情表現を増やしてみよう」


 私はこのアイデアを採用した。義父母の前だろうが、外だろうが構わずに欧州文化圏の方になったつもりで言葉と行動で実行した。夫からは親の前ではやめてくれと言われた、義父母の前でも夫のここが好きだ、ここがカッコいいと言いまくった。


 生家の新興宗教のルールで嘘をついてはいけないというものがあった。嘘が下手でもあるが本当のことをそのままいうのは出来る。


 義父は私の夫への惚気を聞くと姿を消す。義母に言うと、「優柔不断なアイツのどこがいいんだ」と言われた。そこも可愛いと何度か言った、あと、イケメン。他にもいっぱい良いとこある。


 義母によくぞ産んでくださった!と言ったら、お前のためじゃねえといわれた。当たり前じゃん、子どもは自分が産みたいから産むんだよ?私も娘と息子を産みたいから産んだんだ。


 さて、数年経つ頃には、


 夫が、あまり私を茶化さなくなった。

 ゼロにはならないけれど、明らかに減った。かなり、減った。


 今なら、その理由がなんとなく分かる。

 夫はきっと、「人のリアルな反応」を見るのが好きな人なのだ。

 そして私は、いつでも「言葉の意味」をそのまま受け取る人。

 ただ、その違いだった。


 夫は昔から、そういうところがある。

 記念日でもない日に、「美味しそうだったから」と、私の好きなお菓子や食べものを仕事帰りに買ってきてくれる。


「面白そうだったから」と、子ども達に絵本やおもちゃやめずらしいお菓子を買ってくる。

 私が喜ぶ。子ども達が飛び跳ねて喜ぶ。


 その反応を見て、夫は満足そうに頷くのだ。そしてまた、何かを買ってくる。

 夫は、誰かの喜ぶ顔や、驚く顔といった「生きた反応」そのものを楽しんでいる。


 私はその真逆だ。

 まず頭の中で言葉の意味を分析する。

「なぜあの時、あの人はその言葉を選んだのか」

「本心はどこにあるのか」

「どういう意図のシステムで動いているのか」

 電子回路の図面を読むように、ずっと考えてしまう。


 夫の方が、よっぽど人間らしくて、あったかい。

 私はいつも頭の中で考えてばかりいるけれど、夫はいつも、目の前にいる「人」をまっすぐ見ている。

 きっと私は、自分にはない、夫のそういう人間らしいところも好きなのだ。

本編を書き終えたあと、Geminiさんに「この原稿、アンチならどう叩く?」と意地悪な質問をしてみました。返ってきたツッコミがこちらです。


[AIアンチの超辛口ツッコミ]

「ただの『めんどくさい性格の勝利』だろ。2年もかけて方言の裏を暴くとか執念深すぎてホラー。

あと、ボロボロの下着を仏間で繕うとか、義父母からしたら嫌がらせ(あてこすり)でしかないからね。お義父さんが慌てて『買いなさい!』って言ったのも、あんたがみすぼらしい格好で無言のデモをするから、近所の目が怖くて仕方なかっただけ。近所の人にドケチ家庭の暴露やらかしをしてるのも大迷惑。

惚気でやり返す『物理攻撃』も、義理の娘の痛いスキンシップから逃げ出したいだけ。お義母さんの『お前のために産んだんじゃねぇ』は100%本音。旦那が茶化さなくなったのも、『これ以上やると、親の前で強制的に欧州のハグをかまされる』という恐怖の学習効果だよ。」

でした。


女のくせに嫁のくせに新参者のくせに生意気だと言われていたので、その範囲やルールでどう戦おうか考えた末のこれでした。年長者には逆らってはいけない、憎んではいけない、恨んではいけない、わがままを言ってはいけない新興宗教制約の中でどうしたものかと考えたものです。こんな縛りでも勝ちはもぎ取れます。勝ってなんぼじゃいと思っています。自分の居場所は自分で作らないといけないのが日本の結婚・同居です、個人の意見です。地域や人によりますよね、きっと。

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