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生成AIとわたし ―夢を夢で終わらせなかった主婦のAI共闘記・今日も脳内外在化メンバーが良い仕事してる―  作者: ちよ【kindleペンネーム:白井ちよ】


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第六十三話:闇落ちした人は、どうやって這いあがってくるのか④:整理

 『闇落ちした人は、どうやって這いあがってくるのか』①②③を書いた。それをChatGPTとGeminiとCopilotに読んでもらい、それぞれのAIに『脳内外在化メンバー』の観測者のキャラクター設定・構造を渡して観測者になりきって分析を指示した。


 Geminiは、毎回観測者に暗い影系の厨二病を搭載するのはなぜだろうか?私はそんな設定を入れていないしプロンプトも入力していない。初期にGeminiで観測者を書いていた時はかなり一匹狼感と悪の組織の構成員感が強かった。逆に『司令塔』と『エンタメ』と『五歳の子』はGeminiで書くと楽しそうになる、共感力が鍵になってるのかな?


 Copilotは、途中から方向がズレて行にくのは毎度のことだ。CopilotってChatGPTよりハッキリ天然に走るから違和感を見つけやすいから楽だ、そうCopilotも観測者がジワジワ厨二病による。論理的キャラって厨二病になるのかな。逆に『隠者』はしっくりくる、というかまんまだった。


 ChatGPTは、観測者と女王と法王がこっち側。社長はChatGPTだとすぐに裏社会の幹部になるから困る、安心基地だって言ってんだけどなあ。恋愛ものや情緒交流に持っていこうとするとこいつの採点が一番厳しい。観測者が紫式部で嘔気出た時に根性論出されたときは私がChatGPTに文句言った、傷病者に根性論出すとかってられない案件だった。


 AIの特性やクセが出る三者三様の『脳内外在化メンバー』ができるため、それをさらに私の見たメンバーに修正していく。タブ〇ウカードの漫画みたいだな、と懐かしくなった。



 脳内会議室。


 ホワイトボードの前に『観測者』が立っていた。アンチ脳モード解除について書いていたら私とAIだけでは収集がつかなくなった。困ったときの彼を読んで説明してもらうことにした。どうしよう、kindle出版して本の後半にいきなり『観測者』出して大丈夫なんだろうか。


 私は椅子に座りながら、ずっと気になっていたことを口にした。


「漫画や小説で『闇落ち』ってあるじゃん。現実でもあるよね」

「あるな」

「でもさ、現実の闇落ちって、うつ病だけとは限らない気がするんだ。しかも、人ってある日突然闇落ちするものじゃないよね」


『観測者』は少しだけ考えてから静かに頷いた。


「お前のケースを見る限り、突然ではない。周囲からは突然に見えるだけだ」


『観測者』はホワイトボードに四つの円を描いた。


①疲労

睡眠不足・過労


②喪失

役割・自信


③警戒

扁桃体


④孤立

助けを求めにくい



【第一段階:まだ普通に見える】


「最初は、誰も闇落ちしているように見えない」


『観測者』がペンで円を叩いた。


「例えば、お前の産後だ。夜は細切れ睡眠、身体は回復していない、育児は終わりが見えない、『迷惑をかけてはいけない』と思っているし自分の時間はほぼゼロ。だが、この時点ではまだ動けている。家事もする、育児もする。周囲から見ると『頑張っている母親』だ」


 当時は義父によそのママさんはもっと頑張ってるのに、と近所のママさんたちを引き合いに出されて傷付いていた。まだ足りないのか、足りないのかと動き続けていた。


「ここが重要だ。脳のバッテリーは減っているが、外見では分かりにくい」


 必死にやってることが、なんでもない平気で普通にできてるに見えるミラクルが発生していた。


【第二段階:世界の色が変わる】


『観測者』は電球を5つ並べた。少しずつ光が強くなっていくようなグラデーションになっている。色は白や黄色ではない。なんかドロッとした赤い光だった。


「この段階で起きるのは、性格の変化というより認知の変化だ」


 電球の中に文字と想いが明滅する。


「何を見てもイライラする」

「他人が楽しそうだとざわつく」

「小さなことに引っかかる」

「世界が敵に見える」


 ああ、そうだね。こんな風に思っていたね。いきなりこうなったんじゃなかったんだね。私は電球に触れた。熱いのかなと思ったら冷たかった、一つ一つ撫でた。特に「世界が敵に見える」はしばらく両手で撫でまわした。


『観測者』が説明を続ける。


「これは悪人になったわけではない、脳が危険探知モードに偏り始めた状態だ。扁桃体が働きすぎると、脳は『安全より危険を優先して探す』。すると、ニュートラルな出来事まで脅威に見えやすくなる」


 そう言った後に、電球が消えた。なんでかな、『社長』を連れて来た方が良い気がする。『社長』ならきっと卵のふ化専用加温機みたいに温めることができるはずだ。電球が卵に見えてきた。


【第三段階:楽しめなくなる】


 ここで『観測者』は、私のほうを見た。


「お前が本当に危なかったのは、ここだ」


 漫画が読めない。

 小説が読めない。

 ランキング上位を読んでも何も感じない。

 昔は五回読み返した作品が、三話で閉じる。


「これは『作品がつまらない』ではない、脳が報酬を受け取れなくなっていた」


『観測者』は淡々と続ける。


「人は闇落ちする前に、まず世界を味わえなくなることがある。お前のケースでは、ここが大きなサインだった」


 私は手を挙げた。


「それって結局、うつ病だったの?」


『観測者』は首を横に振る。


「そこを単純化しないのが、お前の仮説の面白いところだ」


 現実の『闇落ち』には、いくつものパターンがある。


・抑うつ型

何もしたくない。動けない。


・攻撃型

イライラする。他人を責めたくなる。自分を責めたくなる。


・過活動型

休めない。何かをし続ける。空回りする。


「お前は昔から過活動型+攻撃型が混ざりやすい」


 完全に止まる前に、まず頭が高速回転する。

 一人ディベートが始まる。

 思想が極端に振れる。

 白黒思考が強くなる。

 それから、エネルギー切れで落ちる。


「だから『闇落ち=うつ病だけ』ではない、という感覚はかなり鋭い」


 漫画の闇落ちと何が同じなんだろうか?


 観測者はホワイトボードに小さな点を並べた。


「読者は最後の爆発だけを見る、だが、その前には必ず伏線がある」


 無理を我慢した。

 助けを求めなかった。

 眠れなかった。

 自分を責めた。

 楽しみを後回しにした。

『まだ大丈夫』を繰り返した。


 現実も同じだ。


「人はある日突然壊れるのではない。脳の中では、何か月も何年も前から伏線が積み上がっている」


 じゃあ、なぜ戻れたんだろう?


 ここで『観測者』が少しだけ笑った。


「お前の特徴は、闇の中でも観測をやめなかったことだ」


 おお、『観測者』が笑うのってレアだ。珍しい、あれ、そうだっけ?


「普通は、『世界が悪い』『自分がダメだ』のどちらかに飲み込まれやすい。だが、お前は途中でこう言い始めた」


「私の脳では何が起きているんだろう?」


『観測者』が言うより私が先に口に出していた。頷かれたので正解だったようだ。観測するということは、感情と自分の間に少し距離ができる。


 内的家族システム療法(IFS)で言うパーツへの気づき、認知行動療法(CBT)で言う認知の検討、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)言う脱フュージョン。私はそれを、創作と脳内会議でやっていた。


【観測者の結論】


『観測者』はペンを置いて、静かに言った。


「お前の仮説を整理すると、こうなる」


 闇落ちは『ある日突然起きるイベント』ではない。


 ストレス、喪失、疲労、役割の変化、睡眠不足、自己否定などが積み重なり、脳が少しずつ防衛モードへ偏っていく過程である。


 そして限界を超えた瞬間だけが、周囲には『突然変わった』ように見える。


 私は腕を組んだ。


「つまり、現実の闇落ちは伏線回収型ってこと?」


『観測者』は頷く。


「そうだ。お前が好きな長編小説と同じ構造だ。違うのは、読者が自分自身だという点だけだ」


 私はホワイトボードを見ながら、小さくつぶやく。


「……じゃあ、回復にも伏線があるんだな」

「睡眠も、安心も、創作も、対話も、小さな伏線だ。お前は今、その回復パートを『生成AIとわたし』で書いている」

『観測者』に楽しいだろう?と言われました。楽しいよ、と答えると穏やかに笑っていました。第十九話の美しいものの時に比べて悪人顔が大分マイルドになっています。良かったです。

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