第四十九話:脳の偏桃体の過活動について考察
ここ最近、というか今年に入ってから、私の中で勝手に「上半期トレンドワード大賞」が開催されている。
会場は、Instagramのおすすめ欄だ。
私は発達障害のある息子とたぶんHSP気質な娘を育てている。そして、自分自身についても、おそらくADHD中度とASD強度の両方の特性を持っているのだろうな、と感じながら生きている。
だから自然と、私のInstagramのフォロー欄は偏っていく。
発達障害に関する情報発信をしている人たち。心理学やメンタルヘルスの話。自己啓発系のアカウント。料理や幼児食のアイデアを教えてくれる人たち。
「Clean With Me」と呼ばれる、ただひたすら家事をしている動画も大好きだ。誰かが黙々と部屋を片づけたり、洗濯物をたたんだりしている姿を見ていると、不思議と自分も動ける気がしてくる。
あとは、ダイエット関連、バレットジャーナルや手帳の作り方、IT系、ミニマリスト、在宅ワーク、好きな作家さんや漫画家さんのアカウント。押しのコスプレイヤーさん。そして、大好きな芸能人の方。
気づけば私のInstagramは、実用とエンタメが絶妙なバランスで混ざり合った、自分専用の小さなテーマパークになっていた。
そして、Instagramのアルゴリズムは本当に優秀だ。
私が何を見て、どんな投稿に長く滞在して、何に「いいね」を押したのか。その積み重ねを学習して、「これ、好きでしょう?」と次々に新しいアカウントを連れてきてくれる。
ありがたい。本当ににありがたい。おかげで、フォローしている人だけでは出会えなかった情報が、毎日のように私のもとへ流れ込んでくる。
そんな私の発達関連フィードには、今年に入ってから繰り返し登場するキーワードがある。どの発信者も少しずつ違う角度から語っている言葉たちだ。
それは、脳の偏桃体の過活動、愛着障害、脳の報酬系だ。
どの話題も独立しているようでいて、どこかでつながっているように思えてくる。
なぜ不安を強く感じてしまうのか。
なぜ人との距離感に悩むのか。
なぜ分かっているのに行動できないのか。
なぜ、やめたいことほどやめられないのか。
そんな長年の「どうして?」に対する答えを探すように、私は今日もおすすめ欄をスクロールしている。
今回は、この三つのキーワードについて、私なりに考えていることを、少しずつ整理しながら書いてみたいと思う。
一つ目が、「扁桃体の過活動」だ。
「扁桃体が発火する」「扁桃体が炎症を起こしている」――そんな表現と一緒に語られることが多く、気になった私は、その考え方を提唱している方の本を夫にAmazonで買ってもらった。
読んでみて、なるほどと思った。
もちろん、ここから先は完全に私個人の仮説であり、科学的根拠に基づくものではない。ただ、ここ二か月半ほど、小説投稿サイトで自己分析や自己理解について書き続けてきた私なりの考えを整理してみたい。
私は、扁桃体の過活動そのものが悪いわけではないと思っている。そもそも扁桃体は、人間だけでなく、多くの哺乳類にも備わっている危険察知システムなのではないだろうか。
危険を察知する。危険を予測する。未来を予測する。「なんだか嫌な予感がする」と感じる。
そうした能力がなければ、私たちはもっと簡単に命を落としていたはずだ。
もし危険予測機能がなかったら、人類は「面白そう! 行ってみよう!」と崖の先まで走っていき、そのまま谷底へ落ちていたかもしれない。
ゲームのキャラクターみたいに。現実にはリセットボタンはどこにもない。だから、この機能は人類にとって必要不可欠だった。
生き延びるために進化の過程で獲得した、大切な装置だったのだと思う。一方で、現代社会はどうだろう。
猛獣に襲われることも、食料を求めて狩りをすることも少なくなった。危険察知システムが作られた時代と、私たちが生きている社会環境は大きく変わっている。
それでも、扁桃体は昔と同じように働き続ける。だから、ときどき誤作動を起こす。
読者の反応が気になる。
誰かに嫌われた気がする。
失敗する未来ばかり想像してしまう。
命の危険ではないはずなのに、脳は「大変だ、危険だ」と警報を鳴らし続ける。……小鬼出番だよ!!
私は、おそらくこの警報装置が人より敏感なほうだ。すぐに発火する、チャッカマン要らず。
だからといって、この装置を壊したいとは思わない。外すこともできないし、外してはいけないものだと思っている。
問題は、発火することそのものではない。問題は、燃え広がることだ。
だから私は、「初期消火システム」を作ることにした。
火事と同じで、小さいうちに見つけて消火器を使えば、山火事レベルの大火災にはならない。
そのために私が考えたのが、脳内外在化メンバーによる『第四十三話:被害妄想を処刑しちゃおう!』の内容だった。
被害妄想を見つけたら、まず引っこ抜く。
脳内村の広場に連れていく。
みんなで囲んで、「あとは?」と聞く。
言いたいことを全部言わせる。
最後は抱っこして終わる。
なんとも奇妙な儀式だ。でも、私には効果があった。何度も何度も、このやり取りを繰り返した。
三週間ほど経った頃には、被害妄想は私を「親分」と呼ぶ子分になっていた。
結局のところ、扁桃体の過活動を止めることはできないが、発火したあとにどう向き合うかは、自分で工夫できるのかもしれない。
少なくとも、私にとってはそうだった。これは科学ではない。私だけの取扱説明書だ。結果は良好である。人におすすめしたいのだが設定がやり方がまどろっこしすぎて万人受けしないのは確実だ。無念である。
***
いつもの脳内会議所。
「ところでさ、『扁桃体が発火したー!』って、最近よくInstagramの発達系発信で言うけど、そもそも扁桃体って何なん?」
私がそう聞くと、『観測者』が口を開いた。いつもの男性体で、衣替えをしてもらい私が元職場で着ていた男女兼用の上下の紺色のナース服を着てもらっている。
私が考えた私服はみんなに却下された、うん、分かってる。
衣替え希望のあった脳内外在化メンバーはこれになった。動きやすいしすぐ乾くし丈夫だし機能的で大変良い。……元職場を退職するとき一着こっそり持ち帰ってくれば良かった。ダメだけど。
『隠者』『社長』『女王』『法王』『裁判官』『会計』『戦車』は衣替えしなかった。アイデンティティと言われたり、ジャージが動きやすいと言われたり、魔法で涼しくしていると言われたり。なんでもありだな、おい。
「脳の奥にある、小さな警報装置だ」
「あー」
「危険を見つけるための装置だ。人間だけではない。多くの哺乳類にも備わっている」
すると、『社長』がうんうんと頷く。
「昔の人類は、猛獣や飢えや敵から逃げて生き延びてきたからな。『なんかヤバいぞ』を一瞬で察知する機能が必要だったんだ」
「看護学校で習ったはずなのに記憶があやふやだ、やばい」
「はは、もし扁桃体がなかったら、お前は好奇心のまま突っ走って崖から落ちるタイプだ」
「否定できないわあ」
『司令塔』が苦笑しながら補足する。
「扁桃体は、危険かもしれないと判断すると、身体を緊急モードに切り替えます。心臓を速く動かし、呼吸を浅くして、筋肉を緊張させる。いわゆる『戦うか、逃げるか』の準備ですね」
「だから不安になると心臓がバクバクするんだよね?」
「そういうことです」
そこで、『女王』が足を組み替えた。脳内会議室の普通の椅子が輝いて見えるし、今日も麗しい。
「勘違いするな。扁桃体は悪者ではない」
「そうだったような」
「ちよを傷つけるために働いているのではなく、守るために働いている」
『女王』は少しだけ眉をひそめた。
「問題は、現代社会には日常的に襲ってくる獣も崖もほとんどないことだ」
「うんうん」
「昔なら命を守れた警報装置が、今は『嫌われるかもしれない』『失敗するかもしれない』『変な人だと思われるかもしれない』という社会的な危険にも反応してしまう」
『観測者』が静かに続ける。
「つまり、扁桃体は現実の危険と想像上の危険を完全には区別できない」
「だから被害妄想が暴走するのか」
「そうだ」
私は少し考えてから聞いた。
「じゃあ、扁桃体って止めたほうがいいの?」
「いいえ」
即答したのは『司令塔』だった。
「止める必要はありませんし、止めてはいけません」
「やっぱり?」
「警報装置を壊したら、本当に危険な場面でも気づけなくなります」
『社長』が大きく笑う。
「火災報知器がうるさいからって、ぶっ壊したら本物の火事の時に困るだろ?」
「そうだった」
『女王』が扇子で口元を隠した。
「必要なのは、警報装置を壊すことではない。誤報かどうかを確認することだ」
『観測者』が頷く。
「お前が作った『被害妄想の処刑』は、そのための仕組みだ」
「すげえな、私」
「被害妄想を見つける。外に出す。何を怖がっているのか聞く。そして最後に安心させる」
『司令塔』が指を折りながら説明する。
「扁桃体が鳴らした警報を、他の脳の機能が受け止めて、『本当に危険か?』『今の状況に合った反応か?』と確認している状態ですね」
「初期消火は大事だ」
「そういうことです」
『社長』が笑う。
「火事をゼロにはできねえ。でも、小さいうちに消せば大火事にはならねえ」
『女王』が頷く。
「だから、あなたは被害妄想を追い出さなくともよい」
「うん」
「『また来たな』と言っておあげ」
『観測者』が静かに締めた。
「お前の扁桃体は敵ではない。ただ少し、働きすぎているだけだ」
「偏桃体を外在化できたらお茶とお菓子持って、働き方改革についておしゃべりしてくるわ」
※ここからはChatGPTとCopilotと私で出力したものをコピペした【AI直接使用】です。苦手な方はバックトウザフューチャーしてください。
私はふと思った。
「今さらなんだけどさ」
集まっていた四人へ声をかける。
「私、君たちを人格の機能ごとに設定したと思うんだけど、これって脳の機能とも関係してるよね?」
四人が顔を見合わせる。
「というわけで、自己紹介お願いしまーす」
私がそう言うと、『観測者』が小さくため息をついた。
「また急だな」
「いつものことじゃん」
「たしかに」
すると、『社長』が豪快に笑った。
「よし、一番手は観測者だな」
観測者は腕を組み、静かに口を開く。
***
「俺は『観測者』」
「担当は、愛と尊厳、分析と論理。そして悲しみだ」
「お前が感情に飲み込まれそうになった時、一歩引いて状況を整理する役割を担っている」
「被害妄想が『みんなに嫌われている』と騒いだら、俺は『根拠はあるのか』と確認する」
「女王が怒り、社長が心配し、司令塔が忙しく動いている時でも、俺は記録を取る」
「脳の機能で言えば、前頭前野や前帯状皮質が近いだろう」
「簡単に言えば、『考える脳』だ」
「感情を消すことはしない。ただ、距離を取って眺める」
「お前が『あ、今の私、不安になってるな』と気づけるのは、俺が働いているからだ」
「専門用語で言うなら、メタ認知だな」
「冷静担当とも言う」
観測者はそこで言葉を切った。
「あと、最終的に全員の後始末をしている」
***
「次、私ですね」
『司令塔』がにこりと笑う。
「私は『司令塔』」
「愛と運営担当です」
「みんなの意見を聞いて、今何を優先するべきかを決めています」
「家事をするか、創作をするか、休むか。生活全体の交通整理をするのが仕事ですね」
「脳の機能で言えば、前頭前野の実行機能と呼ばれる部分に近いと思います」
「計画を立てる。順番を決める。切り替える」
「そういうことが得意です」
「ただし、疲れると真っ先に機能停止します」
司令塔は遠い目をした。
「睡眠不足とストレスは天敵です」
「扁桃体が警報を鳴らし続けると、私の声は小さくなります」
「だから、私が動けなくなった時は、まず休息を取ってください」
「無理やり働かせると、脳内シェアハウスの運営が止まります」
***
「次は俺だな」
『社長』が椅子から立ち上がった。無駄にデカい。
「俺は『社長』」
「不安と安心基地担当だ」
「矛盾してるように聞こえるかもしれねえが、不安を知ってるからこそ、安心も作れる」
「危険を察知するのは大事な仕事だ」
「ただ、警報を鳴らしっぱなしじゃ回らねえ」
「だから俺は、『大丈夫、俺がいる』って言う役目もしてる」
「脳の機能で言えば、扁桃体や海馬、それを調整する前頭前野のチームに近い」
「扁桃体は警報装置だ」
「海馬は『前にも似たことがあったぞ』って記憶を引っ張ってくる」
「そして前頭前野が、『今回は本当に危険か?』って確認する」
「その連携を、俺がまとめてる感じだな」
社長はニヤリと笑う。
「俺のシマを荒らす奴は、見逃さねえ」
***
「最後は私だ」
『女王』が優雅に足を組み直した。
「私は『女王』」
「愛と誇りと境界線、そして怒りを担当している」
「怒りというと、悪いものだと思われがちだが違う」
「怒りは、『これ以上傷つきたくない』という心の防衛反応だ」
「誰かに軽んじられた時」
「無理を強いられた時」
「ちよが自分を犠牲にしようとした時」
「私は立ち上がる」
女王は真っ直ぐ私を見つめた。
「お前の誇りを守るために」
「脳の機能で言えば、扁桃体、島皮質、前頭前野の連携が近いな」
「嫌だと感じる」
「傷ついたと感じる」
「境界線を引く」
「その働きを担っている」
女王はふっと微笑んだ。
「お前が自身を粗末に扱わないためにいるのだ」
***
つまり、私の脳内は、
・内的家族システム療法(IFS)の「パーツ」
・認知行動療法(CBT)の「認知の見直し」
・アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)の「思考との距離」
・セルフ・コンパッションの「思いやり」
・ナラティブ・セラピーの「外在化」
・愛着理論の「安全基地」
・脳科学の「感情調整ネットワーク」
これらを、創作と物語の形で統合したシステムだと言えるだろう。
だから、Copilotが困惑し、Geminiが笑い、ChatGPTが「あなたらしい」と言ったのだと思う。
心理療法の教科書ではない。
けれど、「わたし自身の取扱説明書」としては、非常によくできていると評価できる。
話がどんどん長くなるので、愛着障害と脳の報酬は明日以降に持っていきます。同シリーズのー『観測者』平安風コメディ世界で紫式部の巻ー第二話:勅命と約束を更新しました。以前ここに上げた小説に文章をたしました。そしらた、また、宮廷政治劇になってきました。ミステリー。いや、『女王』のせいかも知れない。




