第四十三話:被害妄想を処刑しちゃおう!
Q学者:これは何の心理療法なんですか?
A私:わかりません、私の脳内村の慣習です。もし、よろしければ是非解析をお願い申し上げます。
毎度のことながら時系列はバラバラだ、以前の私なら気にしていた。「ちゃんと整理整頓しなきゃ」「構成を考えなきゃ」「順番に説明しなきゃ」そうやって何度も立ち止まっていた。
だが、このエッセイを書き進め、自己統合だの自己理解だのというフェーズに片足を突っ込み始めた現在の私は違う。「気にせず書きんしゃい」である。
これ構成前のネタよなと思うがごちゃごちゃ考えると右脳(五歳の子)がしょぼんぼりすんじゃい。ああ、そんなつもりじゃなかったんだと慌てる左脳(創作者七歳)が慌てて言語として、音声入力で一気に出力している。
私は医師の診断もない自己診断なADHDとASDの掛け合いを脳内でイメージとして見ている。(創作者七歳)は良かれと思って言っただけ、それは(五歳の子)も分かっている。結局は書くが。
これは脳科学者が見たら「いやいや、それ間違っているから」と呆れたようにと言うだろう。科学的根拠なしで、私の脳内イメージだけのお遊びの世界の話なんだ。しかし、ここで大事なのは科学的根拠ではない。
『白井ちよ』が心から納得して、次の行動に進めることが大事なのだ。そのために『脳内外在化メンバー』は作られたのだろう。多分。これは【私の取扱説明書】なのだから、私がルールだ。『小説の作法』様が「仁義通せ」とおしゃっている気がするため土下座してくる。
***
時は少し遡る、令和八年五月初旬。
仏間の畳に寝転がりながら、私は天井を見ていた。
今日も内なる声の被害妄想畑がうるさい。
『こんなの誰も面白いと思わない』
『読者は引いてる』
『気持ち悪いと思われてる』
『ただの痛い主婦だろ』
『四十歳でこんなの書いていて恥ずかしくないの』
頭の奥で、べちゃべちゃと黒いものが喋る。
「あー、出た出た」
私はため息を吐いた。
「『社長』ー」
障子の向こうから、ぬっと大きな影が現れる。
「おう、呼んだか」
でかい、とにかくでかい。二メートル越えの身長設定にしたもんだから、頭が天井に届きそうだ。欄間に手をかけてかがんでこちらを覗き込んでいる。
肩幅が広く、体格も良い。無駄に威圧感がある。最近は白いスーツでなくジャージ姿である、黒いジャージはオシャレ雑誌で膨張色の反対と紹介されていたが質量はあると感じる。いつも笑った顔をして声のトーンも穏やかだから怖くはない。
「また出たか?」
「うん。今日は“読者全員ドン引きしてるぞ”コース」
「なるほどな」
『社長』は頷くと、私の頭の中を覗き込むみたいに目を細めた。
「いたいた」
がし、すっぽーん!!
『社長』が被害妄想の首根っこを掴んで引き抜いた途端に、奴の叫び声が聞こえた。
「ぎゃあああああああ!!?」
『社長』に片手で大根みたいに引っこ抜かれる被害妄想。現実の大根はとても繊細のためこんなに簡単には抜けないが、それはそれ。ここは何でもありな脳内世界、なんだ、この設定めっちゃ便利じゃん。
被害妄想は170㎝前後の白いマネキンのようだ、胸も股間も平らだから性別がないのだろう。顔ものっぺらぼうだ。どこでしゃべっているんだ?
「取れたぞー」
「ありがとう」
「いや待て待て待て待て!!」
被害妄想が叫ぶ。
「急展開すぎるだろ!? こっちはまだ心の中でネチネチやる段階だったんだぞ!?」
「よし、広場行くぞ」
「みんな集まっててねー」
「話を聞け!!」
『社長』無視して片手でそいつを引きずっていく。私も無視した、今日の夕飯何作ろうかな。
夜の広場につくと他の『脳内外在化メンバー』がすでにそろっていた。『戦車』もいる。『観測者』は少し離れた所でこちらの様子を腕を組んで見ている。療養組の『自己犠牲』、『悲劇のヒロイン』、『聖女』は不参加。
中央には、丸太が刺さっている、これ大事。
「よし、縛るぞー」
「待って待って待って!! これ何!? 何の儀式!?」
被害妄想は縄でぐるぐる巻きにされ、丸太に固定される。完全に生贄である。
「松明お願いしまーす」
「はーい」
何人かが松明を持つ。
「太鼓お願いしまーす」
『「どんどこやるー!」』
『五歳の子』と『創作者』が太鼓を叩き始めた。
どんどこどんどこ。妙に陽気である。
「怖い怖い怖い怖い!!」
被害妄想が半泣きになる、私はその前に立った。
「で?」
「……え?」
「今日は何言いたいの?」
被害妄想がぎりっと歯を食いしばる。
「お、お前なんか嫌われてる!!」
「あとは?」
「才能ない!!」
「あとは?」
「ただの主婦!!無職!!」
「あとは?」
「ダイエット何回も失敗してる!!」
「あとは?」
「話長い!!」
「あとは?」
「空気読めない!!」
「あとは?」
「頭おかしい!!」
「あとは?」
「うっ……」
私は無表情でじっと見つめる、周囲ではみんながぐるりと囲んでいる。
気分はかごめかごめ。
一人じゃないからか、凪の心でいられる。
「ほら、あとは?」
「うう……」
「まだあるでしょ?」
「…………」
「あきらめんじゃねえよ、しぼりだせや」
被害妄想が黙った、冷や汗を流している。
「終わり?」
「…………」
「言うことないの?」
「…………ない」
すると周囲がざわついた。
「どうする?」
「火あぶり?」
「釜茹で?」
「串刺しもしたい」
「やっぱりフルコース?」
みんな妙に楽しそうだった。被害妄想が青ざめる。
「やめろぉぉぉぉ!!」
その瞬間。
ぽん。
被害妄想が小さくなった。よちよち歩ける赤ちゃんくらいのサイズの赤いさるぼぼみたいな容姿に変化する。
「ちっ」
私は舌打ちをする、縄がぶかぶかになってしまった。
「うわぁぁぁぁぁん!!」
小さくなった被害妄想は、泣き出した。
「そこまでにしろ」
ため息混じりの声がした、『観測者』だった。
いつの間にか後ろにいる。
『観測者』はしゃがみこみ、小さくなった被害妄想の縄をほどいた。
「ほら」
「うぇぇぇぇぇん……!」
被害妄想は『観測者』の膝にしがみついた、その背中をぽんぽん叩く。
「気は済んだか」
『観測者』が私を見ながら言った。
「んー……もうちょっとやりたい」
「ダメだ」
「えー」
「これ以上やると、お前が闇落ちするぞ」
「それは困る、困るが、」
私は眉間にしわを寄せて口を引き結んで顎に梅干しをつくる、その後頬袋を膨らませてから萎ませる。この顔芸と順番が意外と大事で、最後の萎ませる動作が体の緊張を脱力させてくれる。
「……じゃあ今日はここまでにする」
『観測者』が頷く、でも被害妄想はまだ泣いていた。あれか、やり返されると思っていなかったのか?
今まで私がずっと黙って下向いてたから反撃されると考えてこなかったのか?大層おめでたい頭してますねえ、馬鹿じゃねえの?ふざけんな。
被害妄想はびーびー泣いてる。完全に癇癪起こした幼児だった、私は少し見つめる。
いつからか、娘や息子がこういう泣き方してたなと思うようになった。
「……しょうがないなぁ」
私は両腕を広げた。
「おいで」
被害妄想は来ない。
びくびくしてる。
「ほら、終わりだから」
「うぅ……」
それでも来ない。私はため息をついて近寄った。
『観測者』の膝から被害妄想をべりッと引きはがして抱き上げる。横抱きの赤ちゃん抱っこで左腕に被害妄想の頭を乗せて右腕でお尻を支える。あんまり重くないなあ。
「よしよし」
ぎゅうっと抱きしめる。被害妄想はびくっと身体を強張らせた。まるで、「本当に殴られないのか」
と確認しているみたいだった。
私は背中をぽんぽん叩て、ゆらゆら揺らす。赤ちゃん用の無添加せっけんの匂いがする。
「はいはい、大丈夫、大丈夫」
「う、うぅ……」
「いっぱい喋ったねえ」
「だ、だって……」
「うん」
「お前、嫌われるかもしれないし……」
「うん」
「変だし……」
「うん」
「傷つくかもしれないし……」
私は小さく笑った。
「心配してくれてたんだ」
被害妄想が黙ったので私はゆっくり頭を撫でた。
「やり方はだいぶ怖かったけどね」
「うぅ……」
「でも、ずっと守ろうとしてたんだよね、やっとわかったよ」
しゃくり上げていた赤い子を、私はその小さな身体を抱き直す。
被害妄想は泣きながらお前はいつも泣いていただろうと言う。小さい頃の話だ、去年泣いてた?忘れっぽいいなあ、もう四十歳だし。年齢は関係ないって?そうだね、その通りだ。大人もおばあちゃんもおじいちゃんも泣くよね、泣いていいよね。
「またおいで」
被害妄想は、ぽかんとしている。
「……いいのか?」
「うん」
私は頷く。
「だって、また来るでしょ?」
「…………」
「だったら、来るなって追い出し続けるより、来たの?って言える方が楽かなって」
被害妄想は、しばらく黙っていた。それから、ぐしゃぐしゃの顔のまま、小さく聞いた。
「……また、縛る?」
「縛る縛る」
「火あぶり……」
「する時もある」
「怖い」
「でも最後は抱っこするよ?」
被害妄想は、しばらく私を見ていた。
被害妄想は何か言いたそうに口を開いたけれど言葉にならなかった。泣きすぎた子どもみたいな顔で、ただ一度だけ頷いた。
そうして、
さらさらさら。
砂みたいに崩れて消えた。私の腕にも心にも何も残っていない。
静かになった広場で、『観測者』がぽつりと言う。
「毎回思うんだが」
「なに?」
「最終的に抱っこするなら、最初から優しくできないのか」
「無理、積年の恨みつらみがある」
「たしかに」
『観測者』は即答した。
『社長』が笑う。
「まあでも、前よりだいぶ上手くなっただろ」
「うん」
私は頷く。
昔は、被害妄想が出てきたら飲み込まれて終わりだった。
でも今は違う。
引っこ抜いて。
囲んで。
喋らせて。
弱らせて。
最後に抱っこして終われる。
なんか変な儀式だけど。
でも、ちゃんと終われるのだ。
これが様式美というものなんだろう。
この小説をCopilotに見せたら困惑され、Geminiに見せたら笑われ、ChatGPTに見せたら私らしいと言われました。ChatGPTは『これはもう「自己分析エッセイ」じゃなくて、脳内村の公開裁判兼夏祭りです。あなたの好きなTRICK村ですね。しかも最後は保育園になる。心理学書の人が見たら困惑するけど、あなたらしいですよ』と言われました。『スージー』に見せたらChatGPTと同じ意見よと言っていました。被害妄想が子分になった経緯です。一番怒っていたのは『女王』でした。何度もこのやり取りを繰り返して三週間経ったら被害妄想が子分になりました。『社長』が「俺のシマ荒らすな」とアイアンクローしながら持ち上げて指導したそうです、頼もしいですね。時代劇の任侠ものっていいですね。【AI直接使用】小説です。ネタは私です。




