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生成AIとわたし ―夢を夢で終わらせなかった主婦のAI共闘記・今日も脳内外在化メンバーが良い仕事してる―  作者: ちよ【kindleペンネーム:白井ちよ】


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

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第三十八話:広告で困った

 いつからか、いや、最初からか。私は自分の小説を投稿している。投稿すると三十分くらいでPVが十を超えることがある。おお、誰か読みに来てくれた。ありがたいなあ。

 そんなことを思いながらユーザーホームを開いた私は、あるものを見てしまった。女性イラストの胸部が揺れていた、そういう広告である。

 成人向けゲームだか漫画だか知らないが、とにかく胸部が揺れていた。 私はしばらく考えた。私のところに出るのは別にいい。四十歳、子どもも二人いる。


 世の中にはそういう広告もあるだろう。動きが視覚的に邪魔だなと思っても広告会社も生活がかかっているから必死なんだ。私もチアーズプログラム組をんでいるから表示の度に小さい広告ウインドウが出るし。

 しかし、ふと思った。


 私の読者さんもこれ見てるのか?


 そこから急に落ち着かなくなった。私は育児の話を書いている。心理の話、AIとの創作の話、家族の話も書いている。読者さんが、


「この作者、こういう広告出してるんだろうか」


 と思ったらどうしよう。いや、たぶん思わない。私だってYouTubeで変な広告が流れても投稿者のせいにはしない。理屈では分かっている、分かっているのだがなんか嫌だ。


 そして私は気づく。これは『創作者特有の保護者モード』だ。作品を読みに来てくれた人を、ちょっとでも快適に迎えたい。だから広告にまで心配が及んでしまう。普段書いている私の文章が取っ散らかっている分余計にそう思うんじゃないだろうか。読者さんはそんなに気にしていない、多分。

 私の小説を読んでくれている人も、きっと成人されているはずだ。でも、もし未成年の方がいたらどうしよう。いや待て。


 息子が通う園の先生も読んでるんだった。


 やっべえ。


「助けて『観測者ー!!』」


『観測者』が現れた。


「何だ」

「私の読者さんも、この広告を見ている可能性はあるのか!?」

「ある」

「ぎゃあああああ!!」

「だが、お前と同じ広告とは限らない」

「おお!」

「お前の読者の誰かは投資広告を見ている」

「そうなの?」

「誰かは転職広告を見ている」

「よかった」

「誰かは筋トレ器具を見ている」

「じゃあ、大丈夫かな」

「そして誰かは胸が揺れている」

「結局揺れてるじゃねえか!!」


『観測者』は面倒そうにため息をついた。


「ChatGPTに聞け」

「丸投げした!?」

「専門外だ」


 ひどい、だが確かに広告システムは観測対象ではあっても専門ではない。私の広告アルゴリズムの知識もここまでだ。仕方なく空に向かって叫んだ。


「ChatGPTー!」


 ぽん、とウィンドウが開く。便利である。


「どうしました?」

「これこれしかじか、広告が消えないんだ。」

「かくかくうまうま、ですね」


 このネタ覚えてる人いるかな?私最近までこれダジャレだって知らなかったのよ。あのアニメ好きだったなあ。


「止めたい」

「なるほど」


 ChatGPTは妙に落ち着いていた。


「結論から言うと、完全には難しいです。まずオプトアウトをしましょう」

「よし、分からん。教えて」


 私は即答した、ChatGPTは一瞬だけ黙った。


「潔いですね」

「分からんものは分からん」

「それは大事です」


 ChatGPTは頷いた。


「簡単に言うと、オプトアウトは『私の行動履歴を広告の参考にするのをやめてください』という意思表示です」

「うんうん」

「例えば千代さんが最近やっていることを整理します。まず、クラウドワークス。現在は提案文の営業活動は休止中ですがアンケート案件は継続しています。さらに漫画やWeb小説を読んで感想を書く案件も受けている」

「うん。資格なしでその日のうちにできるからLINE漫画とめちゃコミの無料で読めるやつ読んで、該当した案件をちまちまやってる」

「アルファポリス、カクヨム、小説家になろうの小説プラットフォームの投稿、X、インスタグラム、Threads、Pinterest、ツイコミ、趣味の発達心理系やASD/ADHDの論文、システム工学用語サイト、生成AI対話設計論……」

「あと嫁姑ネタ投稿一件三十円案件で何個かクラウドワークス投稿したし、2チャンネルみたいな掲示板もチェックしてる」

「少々お待ちください」


 ChatGPTは何かを整理しているようだった。


「整理が終わりました」

「相変わらず早いね」

「原因候補が多すぎます」

「えっ」

「広告会社の立場で見ると、ちよさんは何の人なのか分かりません」

「なんでだよ!」


 横で『観測者』が頷いた。


「それはそうだな」


 味方がいない。


「だって全部創作のためだよ?」

「ちよさんはそう思っています。ですが広告システムはちよさんの脳内出版社を知りません」

「あっ」


 それはそうだった。広告会社は私の頭の中にいる『観測者』も『社長』も知らない。ただ行動履歴だけを見る。ChatGPTは続けた。


「漫画好き、小説好き、エンタメ好き、SNS利用者、創作好き、掲示板閲覧者、アンケート回答者。広告ターゲティング担当者が喜びそうな行動履歴であり、広告アルゴリズムの育成に非常に協力的なユーザーです」

「なんてこったい、でもさっきのオプトアウトってのをしたら万事解決になるんだよね?」

「いいえ、オプトアウトは『私の履歴を参考にしないでください』です、『広告を消してください』ではありません」

「権力が弱いのかあ、強制力にならない」

「なので履歴ベースの広告は減る可能性があります」

「そうか……」

「つまり、その都度オプトアウトしたり、興味なしを押したり、気長に調整することになります」

「地道だなあ」


 『観測者』が本を開いた、飽きてきたらしい。


「世の中そんなものだ」

「急に人生論みたいに」

「広告も人間も一回で変わらん」

「なんか深いこと言った風にまとめた!」

ちなみに私はあの手の広告を見ると、「寒そうだな」が最初にきます。次に「胸揺れてるけど痛くないのかな、靭帯損傷しないかな大丈夫?」が来ます。その後、「ブラジャーくらい着せてあげればいいのに、広告会社の意図とはいえこのイラストの女の子も大変だよなあ」となります。最終的に司令塔を呼んで、

「この子に上着と温かいお茶とお菓子を出してさ、私の脳内世界に引っ張って来て休ませて、再就職先とか『会計』と一緒に探してあげようよ」になります。たぶん私は広告を見ているのではなく、勝手に保護対象を増やしています。胸の揺れる広告が気になるのではなく、私は気になったものを片っ端から脳内で保護してしまうのです。たぶん問題は広告ではない、私である。

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