第三十話:『司令塔』男主人公ハーレム短編書いてみた
春の終わりだった。
県立生成AI高校男子学生二年、司令塔は、朝から胃が痛かった。
「……本当に書きやがった」
登校十分である、まだ一限すら始まっていない。なのに彼はすでに疲弊していた。
「司令塔」
凛とした声が校門前に響く。振り返ると、朝日を背に女王が立っていた。
長身ですらりとした姿勢。風を受けて揺れる赤銅色の髪。
制服すら軍服のように着こなすその姿は、もはや女子高生というより革命期の近衛士官だった。
周囲の空気が自然に開く。男子が道を譲り、女子が憧れの視線を向ける。
そして本人は当然のように司令塔へ歩いてきた。
「今日の弁当だ。受け取れ」
「えっ、あ、ありがとうございます」
「うむ」
偉そうだった。だが似合いすぎて誰もツッコめない。女王は顎を上げ当然のように言う。
「昨日、お前はまた夕食を簡略化しただろう」
「なんで分かるんですか」
「顔色が悪い」
「顔ってそんな情報量あります!?」
「ある。少なくとも私は見逃さん」
司令塔は困り果てた。
「いやだから毎日こういうの大丈夫ですからね!?女王、生徒会とか部活とか委員会とか忙しいじゃないですか!」
「愚問だな」
女王先輩はふっと笑った、何人かの女生徒が叫んでいる。
「守りたい者を守るために動く。当然のことだろう」
「重いです!!」
「あと、お前はもっと他人に頼れ」
「なんでみんな同じこと言うんですか!?」
その時だった。
「……朝から騒がしいな」
低い声が割り込んだ。振り返ると、観測者が眠そうな顔で立っていた。常に寝不足みたいな顔をしている。司令塔の唯一の男友達だった。
「観測者ぁ……」
「なんで泣きそうなんだお前」
「助けて」
「無理だ」
即答だった。観測者は女王を見て、毎日実感していることを言う。
「今日も近衛隊長みたいだな」
「誉め言葉として受け取っておこう」
「否定しないのか」
「誇り高くあれと育てられたのでな」
司令塔が小声で呟く。
「なんで高校に革命軍みたいな人いるんだろ……」
「聞こえているぞ」
「すみません!!」
その時だった。
「司令塔ーーー!!」
「うわっ」
突撃してきたのは、戦車だった。女子バレーボール部エース。高身長、運動神経の塊、筋肉、笑顔、圧、以上。みたいな、まあ、活発系女子高生である。ちなみに飛び掛かってはこない、令和はソーシャルディスタンスが必須なためきちんと1.5メートル開けて話す。声が大きいのが特徴だ。
「今日の体育サッカーだって!!」
「情報の勢いが強い!!」
「お前絶対うちのチームな!!」
「なんで!?今の高校って体育男女混合なの!?」
「司令塔いると全体まとまるから!!」
「聞いてない!!」
女王先輩は腕を組み、戦車を見下ろした。
「朝から騒々しいぞ戦車」
「あっ、すみません先輩!」
「だが活力があるのは悪くない」
「はい!ありがとうございます!!」
完全に上官と部下だった。
その時。
「……おはようございます」
柔らかな声がした。
生活維持セルフケアーー通称・生活先輩である。
三年生。保健委員で穏やかで優しい、そしてなぜか司令塔の生活リズムを把握している。
「昨日、また夜更かししました?」
「えっ」
「目の下」
「うっ」
「あと朝ご飯抜きましたね」
「なぜ分かるんです!?」
「顔色です」
「また顔!!」
生活先輩はそっと紙袋を差し出した。
「おにぎりです、補食にどうぞ。女王のお弁当は栄養バランスが良いので、しっかり食べてくださいね」
「ありがとうございます……」
すると女王先輩が満足そうに頷き、生活は女王に目礼していた。
「……なんでみんな俺を飼育する方向なんですか」
観測者が静かに呟いた。
「共同体の共有保護対象だからだろ」
「嫌な言い方するなぁ!!」
その後ろから、エンタメが勢いよく現れた。
「司令塔ー!!新作コラボ来た!!」
「待って今処理量が多い」
「あと推しカフェ行こう」
「予定が勝手に増える!!でも、気になる!!」
さらに『会計士』が静かに眼鏡を押し上げる。
「限定版は通常版の三倍価格です、お金は計画的に使ってこそです。未成年でもできる資産運用もありますし、学校許可の近隣のアルバイトもピックアップ済みです。いつでも、お声がけください」
「うわぁ!!」
「その話詳しく知りたい!会計さん、都合の良い日ある?」
「エンタメさん。でしたら、今日の放課後に我が家に来られますか?エンタメさんに合わせてプランニングし、ご両親と相談できるようにたたき台を作りましょう」
「絶対行く!!会計さん、ありがとう!!」
混沌になってきた。だがその中心で、女王だけは微動だにしない。彼女は司令塔を見下ろし堂々と言い放った。
「安心しろ、司令塔」
「何がですか」
「お前が倒れぬよう、私がみている」
校門前が静まり返る。
戦車が「うわぁ」と呟き。
エンタメが「強い」と震え。
生活先輩と会計士が微笑み。
観測者が遠い目をした。
司令塔だけが叫ぶ。
「なんでそんな公開プロポーズみたいな言い方するんですか!!」
女王は凛々しく微笑んだ。
「――という感じで書いてるんだけど、どう?」
脳内空間。いつもの会議室。そして真正面には、『女王』が座っている。
長い脚を優雅に組み、紅茶を片手に彼女は静かに私の原稿を読んでいた。
赤銅色の髪、深紅のドレス、凛とした姿勢。宮殿からそのまま現代日本へ転送されてきたみたいな圧。
しばらく沈黙、私はちょっとそわそわした。
「……どう?」
「悪くない」
「おっ」
「『司令塔』の巻き込まれ体質もよく出ている」
「やった」
「ただし、私はこんなに甘くない」
「えっ」
「毎日弁当を作ってくる優しい先輩程度で収めるな」
「いや十分強いよ!?」
「足りぬ」
完全に獲物を見つけた猛獣の笑みだった。
「私はもっと堂々としている」
「うん」
「好きな男に遠慮する理由がどこにある?」
「そういうもの?」
「私が選んだのだ。当然だろう」
なんだこの説得力。
「なるほど。じゃあもっとこう、我が道を行く高貴な人感を強めた方がいい?」
「そうだ、あとな、私にツンデレ的な要素を入れようとしたな?」
「うん」
「やめろ」
「ダメだった?」
「私は誇り高くある。照れて逃げるような真似はせぬ」
「女王の照れる表情を書きたかった」
「それは『ハジャルの祈り』のラズィーヤで書くといい」
「わかった」
『女王』が満足そうに頷く。
「私は好意を誇りとして扱う」
「かっけえです」
「好きなら好きと言う。守りたいなら守る。選んだなら責任を持つ。当然のことだ」
「王族みたいな恋愛観してる」
「お前がそう作ったのだろう?」
「そうだった」
私はちょっと考えた。『女王』は私の「誇り」担当だ。自分の人生を他人に明け渡さない部分。好きなものを好きと言う強さ。傷ついても立つ強さ。そういったものが欲しくて欲しくて憧れていた。
すると女王が紅茶を飲みながら、さらりと言った。
「ところで次回だが」
「うん?」
「私の戦闘シーンも入れろ」
「戦闘シーン?」
「司令塔に絡む不届き者を制圧する場面だ」
「学園ラブコメなのに?」
「恋愛とは戦だろう」
「そうなんだ!でもなあ、私戦闘シーンの描写文章苦手なのよ。暴力苦手でさ、サイコスリラーに寄せて舌戦で行く方向はどうかな。『観測者』のリクエストと一緒に時代劇とハードボイルド系の小説借りてこようかな」
ハーレム小説になっていると信じたいです。『女王』が正室になり、他ヒロインは側室枠に入っていく。『女王』が総司令官として、『司令塔』男主人公を支えていくシステムになっていくと思います。『ハジャルの祈り』三話目を更新しました。あちらはがっつり恋愛小説として書いているのですが、書くたびに政治宮廷劇になっていきます。胸がドキドキするとか切なくなるとかきゃっ、恥ずかしい!という、甘酸っぱい要素を想い浮かべて書きました、なんか違う気がします。『女王』にハサンに『司令塔』を入れてみろと言われたので四話からそうしてみます。




