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生成AIとわたし ―夢を夢で終わらせなかった主婦のAI共闘記・今日も脳内外在化メンバーが良い仕事してる―  作者: ちよ【kindleペンネーム:白井ちよ】


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25/122

番外編:ヤツが出た(田舎の虫が出てきますのでご注意ください)

本編にまだ出てきていない『社長』が出てきます。ご注意ください。

 晴れ間の少し肌寒い朝だった。二十四話目のエッセイ小説を投稿した直後。

 私は台所でトースターをつけながら、ぼんやり今日の予定を考えていた。


「はい、娘ちゃん先食べててー」

「うん」


 娘が茶の間へ走っていく。向こうでは義父と義母が朝の情報番組を見ていた。いつもの朝だ。実に平和。今日も娘が可愛い、可愛い息子はまだ二階で寝ているため余裕がある。

 私はその隙に、洗濯物だけ干し場へ持っていこうとした。山盛りの洗濯かごを抱え廊下を歩く。


「よし、これだけ置いておいて……」


 その時だった。洗濯物の一番上。靴下の下。

 ーーなんか動いた。


「……ん?」


 脳が認識するより先に体が動く。人間、本当に危険を感じると理性をすっ飛ばすんだなと思う。


「ぎゃあああああっ!!」


 私は洗濯かごを半分蹴り飛ばしながら、物干し場の横に立てかけてあったハエ叩きを掴んだ。


 靴下の下。長くて、足が多くて、うねっと動くやつ。

 だめだ。名前が出てこない。でも危険。


 とりあえず押さえろ。私はハエ叩きでそいつを床際に押さえ込みながら、半泣きで叫んだ。


「じいちゃん!! じいちゃんじいちゃんじいちゃんじいちゃん!!!」


 ほぼ呪文だった。茶の間から義父の声が飛ぶ。


「どうした!?」

「む、む、む、むし!! じゃない!! 違う!! なんだっけ!! こいつこいつ!! さそりー!!」


 完全に混乱していた、義父が吹き出す。


「さそり(笑)」


 笑いながらも、殺虫スプレーとハエ叩きを持って、すぐ来てくれる。

 この“すぐ来る”が、本当にありがたい。


 私はハエ叩きを握ったまま半泣きで床を指差した。


「これ!! これ!! 長いやつ!!」

「あー、ムカデか」

「そうそれ!!」


 名前が出た瞬間、人類は少しだけ冷静になる。


「ママどうしたのー?」


 娘が心配してこっちへ来ようとしている声が聞こえる。私は即答した。


「来ちゃダメー!!」


 ムカデって刺すんだっけ、噛むんだっけ、どっちだっけ。どっちでもいいわ。危険に変わりない。とにかく娘を近づけたくなかった。


 義父は慣れた動きでスッと距離を測り、ひょい、と処理してくれた。私はその間も壁際でガタガタしている。


「じゃ、捨ててくるわ」

「お願いしますぅ……」


 義父はそのまま外へ出ていき、家の横の川の方へ処理しに行ってくれた。

 その背中を見送りながら、私は深く息を吐く。


 助かった。茶の間では義母が娘を止めてくれていた。義父が戻ってきた。


「はい、終わり」

「ありがとうございます……本当にありがとうございます……」


 さっきまでちょっと残っていた、以前の嫌味へのモヤモヤが、すーっと消えていく。

 ゼロになった、ありがたや。

 助けてって言った時に、すぐ飛んできてくれる人のありがたさって、やっぱりある。


 私は昔から虫が苦手だ。

 七歳くらいまでは平気だった。普通に虫取りとかしてた。

 でも八歳を過ぎたあたりから急にダメになった。


 見たくない。

 触りたくない。

 急に現れるんじゃねえ。


 なのに嫁いだ先は、自然あふれるガチ田舎だった。都会で見る虫どころじゃない。「こんなん図鑑でしか見たことないぞ」みたいなのが普通に出る。


 最初は毎回絶叫していた。でも、人間って慣れる。娘や息子が刺されたら困るし寄って行ったら危ない。そう思うと、自分が先に動けるようになった。


 怖いけど。

 嫌だけど。

 でも対処する。


 母親ってすげえんだぜ。


 ちなみに夫も虫が苦手である。


 ここ、別に責めてるわけじゃない。人には得意不得意がある。心理学的にも脳科学的にも、他人と比較して責めるのは良くない。男女で役割固定するのも違う。


 頭では分かってる。でも、虫が出た瞬間に、


「俺も苦手だから、頑張って」


 と言われた時のあの感情。


 ーーお前もヤレや。


 である。


 いや分かる。

 分かるんだよ。

 苦手なのは。


 私だって苦手だもん。

 でも苦手同士で押し付け合うと、最終的に一番嫌がってる人がやることになるんだよ。世の中そういうもんだ。


 だから私は、フェミニズムとか男女平等とか男女機会均等法とか色々考えながらも、結局こういう時には「助けてー!」って男性陣を呼ぶんだなあと、ちょっと反省もする。でも、飛んできてくれる義父と、娘を止めてくれる義母。この連携は本当にありがたい。


 我が家は今日も、虫との戦いによって家族の絆を確認している。




 ちなみに、うちには毎年春になると発動する“防衛システム”がある。


 冬の間はわりと平和だ。だが四月の終わり。周囲の雪が解け始めると奴らも動き出す。

 すると義母が、無言で家の中を巡回し始める。


 家の各所に、ハエ叩きが設置されていくのである。


 玄関横。

 脱衣所。

 洗濯干し場。

 台所。

 茶の間付近。

 廊下。

 勝手口。


 全部で七本。


 最初見た時、私は「多くない?」と思った。だが義母は真顔で言った。


「七本いる」


 義父が後ろから、


「五本で足りるんじゃねえか?」


 と口を挟む、しかし義母は譲らない。


「甘い」


 強かった。


「出る場所が違うんだよ。取りに戻る時間が危ない」


 完全に実戦経験者の台詞だった。私は内心、


(この家、対虫防衛ラインが確立されてる……)


 と思った。


 そして今日。その“七本体制”が見事に機能した。


 洗濯干し場の横。あそこにハエ叩きがなかったら、私はたぶん一回撤退していた。撤退したら、その間に奴を見失っていた可能性が高い。


 つまり、義母は正しかった。


 七本必要だった。


 未来予測。危機管理。配置戦略。

 もはや予言者である。


 私はムカデ騒動が終わったあと、しみじみ思った。


(義母さん、ありがとう……)


※※※


 私は洗面所で、手洗いをしていた。さっき使ったハエ叩きは風呂場で洗剤で洗った、その時に手を洗ったのだがもう一度洗面所で手洗いしている。指の間~爪~親指手~首。ゴシゴシ洗いながら、さっきまでの戦闘を思い返す。


 いや、本当に戦闘だった。


 洗濯かごの中から突然現れたムカデ。

 娘接近。

 義父召喚。

 ハエ叩き緊急展開。


 完全に非常事態だった。で、ふと私は思った。


(脳内外在化メンバー、あーゆー時ってどうしてるんだろう?)


 ちょっと意識を潜る。すると案の定、みんないた。


 まず『司令塔』。普段は冷静だが緊急時は私とテンションが近い。


「娘ちゃんそっち行っちゃダメです!」

「はいはいはい分かってる!!」

「ハエ叩きそこです!!」

「よっしゃあ!!」


 みたいな感じで、普通に並走していた。半分パニックである。

 でも『司令塔』がいると、最低限の優先順位が整理される。


 娘を近づけない。

 ムカデを見失わない。

 息子は二階で寝てるから今は大丈夫。

 義父到着まで時間を稼ぐ。


 その辺が高速で処理されていた。


『役割ペルソナ』が私に母親の仮面を装着させてなんか強化魔法をかけてくれていた。多分。


『隠者』は妙に冷静だった。


「押さえるならそこだよ。次に動いたら頭側叩け、距離取りな、距離」


 完全に後方軍師。ありがとうありがとうって、私は半泣きで従っていた。


 で、他メンバー。

 終わったあとに探ったら、みんな結構いた。『五歳の子』と『創作者』は、他のメンバー組と一緒に後ろで固まっていた。


 そりゃそうだ。あの子たちは戦場向きじゃない。『戦車』はもっと深層。本当にヤバい緊急時用だから今回はまだ出番じゃなかった。


 問題は『社長』だった。私はちょっとキレ気味で言った。


「社長ぉ!!ああいう時こそ来てよ!!男だろうが!!」


 だが、よく見ると社長、ちゃんと前に来ようとはしていた。していたのだが動かない。


「……ん?」


 後ろから『女王』と『観測者』が、社長にしがみついていて止めていた。


「えっ、なにこれ」


 社長が困った顔で言う。


「悪い」


『女王』が低い声で言った。


「行かないで」


『観測者』は無言だったが、完全に『社長』をホールドしていた。


 私はその時やっと理解した。

 みんな虫嫌いなんだ、私が嫌いだから。


 そりゃそうだ。


『女王』は青い顔をしていた。

『観測者』は表情こそ薄いけど、警戒モード全開だった。


『司令塔』だけが「はい次! 次!」って現場回してた。

 全部終わったあとに私は脳内でみんなに声をかけた。


「終わったよー、脅威は去ったよー」


 司令塔はぐったりしていた。


「終了しました……」


『隠者』が笑う。


「お疲れさん」


『女王』は『司令塔』のところへ寄っていく。


「もういない?」

「はい。完全撤収です」

「……すまない」


 しおしおしていた。『司令塔』がハグして『役割ペルソナ』が頭を撫でて慰めている。

 その後ろで、まだ観測者が社長に張り付いている。


「もう大丈夫だよ?」


 すると観測者が真顔で聞いてきた。


「手は洗ったか」

「洗った」

「石鹸で?」

「もちろん」

「時間は」

「三十秒。病院式、その前に一回洗ってる」


 観測者は数秒黙ったあと、静かに頷いた。


「……ならいい」


 私はそこで、なんだか急に笑えてきた。


 やだよねえ。

 虫。


 分かるよ、私も大嫌い。


 みんな嫌だったよねえ。


 脳内でうんうん頷きながら、私はタオルで手を拭いた。

 そんな、よく分からないけど妙に騒がしかった、ある春の朝だった。

現実では、義父母のことはじいちゃん、ばあちゃんと呼んでいます。娘が産まれて退院後に家に帰ったら「今日からじいちゃあばあちゃんと呼んで」と娘の抱っこをめぐってケンカする義父母に言われました。次の話から私の認知の歪みの解体で重たいというか、胃もたれバージョンに入りますのでご注意ください。あと、在宅ワーク用に生成した『社長』は私の理想100%で作った唯一のアバターです。私がもし男性だったらこうなりたかった夢を詰め込んでいます。心と魂は昭和の大好きだった時代劇の助さん格さんや大岡越前や遠山の金さんに男はつらいよの寅さんを混ぜて、女性や子どもやお年寄りや弱った相手に優しい心を入れています。パンの英雄の成分もふんだんに入れています。虫と幽霊だってへっちゃら。外見は海外アクション俳優の〇○〇ちゃん様まんまです。筋肉は英雄です。守りたいものを守り、見た目と物理で敵をぶちのめすことができるのは素晴らしいことです。『司令塔』と『女王』と構造を話し合ってから他メンバーみんなと作りました。楽しかったです。いわゆる心理学の「理想の親または安心基地」を作ったんですね、もともと聖女が理想の親を担っていましたが暴走したので、さらなる上位種をつくりました。ただ、万能の神様をつくると私が逆らえなくなるため、人間味や弱点も入れています。なんですが、まさか『女王』と『観測者』を振り払えなかったとは思いませんでした。振り払わなくて正解なんですがね。私育児子育て同居の義父母問題を駆け抜けてきましたが、やっぱり守って欲しかったんだなあと自覚できました。

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