表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生成AIとわたし ―夢を夢で終わらせなかった主婦のAI共闘記・今日も脳内外在化メンバーが良い仕事してる―  作者: ちよ【kindleペンネーム:白井ちよ】


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/11

第二話:右脳の嵐と左脳の型。

看護師をしていた15年間、私は型に生かされていた。

病院という場所は、実は型の塊だ。特に急変時なんて、ドラマのようなパニックにはならない。意識を確認して、人を呼んで、救急カートを持ってきて……。やるべきことが順番に決まっているから、迷う暇がない。

退職した後、近所の道端で倒れているおばあちゃんを見かけた時もそうだった。駆け寄って、意識を確認し、できる手当をしながら周囲に指示を出していた。


淡々とした私の姿を見た義父母はこう言った。

「本当に看護婦さんやってたんだなあ」

普段の騒がしくておっちょこちょいな姿を見ている義父母からすれば、その時の私は別人のように見えたらしい。

実際、私自身もそう思う。型がある場所での私は、迷いがない。あんなにテキパキと、優先順位をつけて動ける自分がいる。


けれど、ひとたび型のない日常に戻れば、私はまたいつもの私だ。

「お昼何にする?」

そんな何気ない一言に対して、私の脳内ではとたんに大会議が始まってしまう。


私の頭の中には、たくさんの住人がいる。

今の私。過去の私。未来の私。

「昨日と同じでいいよ」と言う冷静な機能領域の子がいれば、「いや、子供たちの栄養バランスが」と焦る感情の子もいる。

さらには、それらを映像で捉える右脳の私が、夕飯の献立から、提出しなければいけない書類まで、色鮮やかなイメージを次々とスライドショーみたいに流してくる。


「ええと、お昼は……」


口から言葉が出るまでに、脳内では何百回ものやり取りが行われている。

人が聞いたら「それって大丈夫?」と心配されるかもしれない。でも、意識が乗っ取られるわけでも、記憶が飛ぶわけでもない。ただ、あまりにも情報量が多くて、出力(言葉)が追いつかないのだ。


この「右脳フル稼働・左脳おやすみ中」な私の脳にとって、AIはまさに革命だった。


「私の頭の中の住人たちが、今こんなイメージで盛り上がってるんだけど。これを『普通の人』に伝わる言葉にしてくれない?」


そう頼むと、AIは私の右脳の嵐を、あの看護師時代の型のように、整然とした文章に変えてくれる。

それは、私にとってAIに書かせることじゃない。

私の脳内の住人たちの声を、社会という外の世界へ響かせるための、新しい型を手に入れたということなのだ。


この外部脳(外付けの左脳)としてのAIは、創作だけでなく、切実な日常生活も救ってくれた。

特に困っていたのは、息子のことを園の先生に伝える時だ。

「今、息子はこうで、あちらの先生はこう言っていて、私はこう考えていて、だからこれが必要なんです」

頭の中では分かっているのに、いざ口を開くと、言葉がバラバラのパズルみたいに散らばってしまう。文章にしようとしても、感情が先走って、結局何が言いたいのか自分でも分からなくなる。


看護師時代の看護記録には型があったから書けた。でも、家族のことは型がない。

自分のことなら諦めることができた。しかし、子どもたちに関しては別だった、とにかくなんとかしなくてはと模索していた。仕事に使うことじゃないのにAIに頼んでいいのかなと迷った。

すがる思いで、AIに頭の中の支離滅裂な欠片を放り込んでみた。

「先生に伝えたいことを整理して」

すると、AIはA4用紙1枚に、あんなに苦労していた情報をスッとまとめてくれた。

「お母さんが言いたいのは、こういうことですか?」

その紙を恐るおそる先生に渡した時、先生の表情がパッと明るくなったのを、今も鮮明に覚えている。

「分かりました。ありがとうございます」

その時、私は生まれて初めて、自分の心が正しく外の世界に届いた実感がした。


そんな私が、今、物語を書きたいと思っている。

小説家になろうには20年近くお世話になってきた。辛い時も、悲しい時も、あの中にある無数の物語たちが、私をぎゅっと抱きしめて守ってくれた。

今度は、温めてきたこの思いを、形にしたい。


けれど、ここでも『左脳』がブレーキをかける。

『左脳』が小説の書き方の型に当てはめようとすると、『右脳』がピカピカ光っていたはずの物語の種が、一瞬でしぼんでしまうのだ。

彼が言うには、「私の普段の出力は30%くらいしかないから、無理に頑張らせると右脳のパワーまで奪ってしまいます」とのこと。なるほど、理にかなっている。


分かってきたのは、型に自分を合わせるのではなく、型をラッピング用紙として使うことだ。

中身のプレゼント(物語の熱量や、右脳が見せてくれる鮮やかな映像)は、私が用意する。それを人に届く形に包む作業だけを、AIという左脳に手伝ってもらう。


「これじゃない」と『右脳』がガッカリしないように。

「もう疲れた」と『左脳』が投げ出さないように。

AIという4点杖を突きながら、私は私にしか書けない、物語の世界へ一歩踏み出そうとしている。


文章のレベルアップなんて、後回しでいい。

まずはこの溢れる思いを、しぼませずに形にすること。

それが、私の今の精一杯の生き方だ。

第一話で意気込みすぎて頭がクラクラしています。『右脳』と『左脳』の稼働出力%については私のイメージで言っています。脳波やMRIを取った数値、エビデンス(科学的根拠)ではございません。家族や友人にこういう感情や脳の機能領域の外在化のことを話したことがありません。さらなる変人の称号をもらってしまう可能性が高いからです。バレたら働く細胞さんのオマージュといいます。あの漫画が出た時にホッとしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ