では、生きますか~
『王都ミステリースポットの1つ、王家の墓
第5代王の墓には、花1つ供える事が出来ない。
供えた途端に、一陣の黒風が吹き飛ばしてしまうからだ。
とても人の仕業とは思えぬ現象。
第5代王を死後もなお恨む者がいるのか、それとも……』
そんな風に有名な怪談当地に立っているのだから、冷気すら覚えてもいいはずなのだが。
「ロス、暑い。ご先祖の前なんだから、もっと離れろよ」
「私はむしろ、もっともっとウィプの奥にまで触れたい」
「生々しいな、おい」
不謹慎過ぎだろうと、ウィプはため息を吐いた。
緑の木々に囲まれた歴代王の墓。
第5代王の墓にも、どの墓にも手を出していないせいか、周りは非常に静かだ。
1つ苦情を言ったが、ルデュロスの視線は前を向いたまま。
その時間を邪魔しない様、ウィプが緑の中で穏やかな時間に身を投じ、黙って大人しくしていると、ルデュロスが微笑みを向けて来る。
「待たせた」
「それじゃ、王子様。オレに攫われて下さいな~」
ウィプはルデュロスに手を差し出した。
「不束者だが、末永くよろしく頼む」
「そのロスの知識の偏りも、どこで発生したのか謎だ」
それからまた2人無言になって、王墓に背を向けた。
「すみませ~ん、ボス。ちょっとオレ、かなり面倒なヤツを引っ掛けちゃいました~」
頼る所が少ないウィプは、新聞屋にルデュロスと一緒に向かう。
「……ウィプ」
驚いたというよりは、ついにやらかしたか……というボスの渋い口調。
どんよりため息は吐かれたが、ボスからの怒声は降って来なかった。
「夜逃げするにしても、そいつを連れて行くんだろう? 少しは鍛えておいてやった方がいいんじゃないか? そことそこの暇人ども、相手になってやれ」
「「あいあ~い、ボス」」
「じゃあ行こうか~」
「そう簡単に合格点は出さないよ~」
「???」
ガシッと両側から肩を抱かれ、ルデュロスが秘密の訓練場へと連れて行かれる。
新聞屋しか匿ってくれる所を思い付けなかったとはいえ、いきなりルデュロスに死亡フラグ……?! 慌てた、ウィプは即効で釘をさす。
「ロスをうっかり殺したら、許さねーぞっ! まずは一般庶民の生活に、慣れてもらうのが先だと思うんですけど、ボスっ!」
「その為に、お前は買い物にでも行って来い。ほれっ、ウィプ。行った行った~」
「ボス~~~~っ!」
こうして。
子供の頃、近衛となって兄を支える事を夢見ていた王子様は、元・暗殺者集団の新聞屋に記者の仲間入りをしたのだった。




