第二部 序章3『動き出す星々:セーネ・マーガの星』
※リアナ視点――崖下の川辺
川辺の物陰、周囲の目を気にしての、とても小さな焚火。
私と少し離れて今はカイルが休んでいる。
「自分が朝まで見張りをする、リアナは休んでいると良い」
そんな事を真顔で言うもんだから、休ませるのに少し苦労したな。
――私が、セーネ・マーガの星を得た日。
一応あの日の情景を……正確にいえば笑顔はあった、拍手もあった。
でもそのどれもが、遠くで鳴っているような気がした。
星の光は、わたしの皮膚をすり抜けて、どこか別の誰かを照らしているような。
――あれが、最初の違和感。
◇ ◇ ◇
※リアナ視点――故郷の村、過去回想。
故郷の村の巡礼教会跡地。
私が生まれた村で星の洗礼は代々、教会の外に設置された祈りの為の祭壇の前で行われていた。
風がよく通る高台。老いた石の壇。誰も読めない文字の編み込まれた装飾。
でもそこに人が集まるのは自然のことで、神の意思を問う行為とされていた。
列の最後尾に一人風を眺める私。
背筋を伸ばして手を胸元で組んで、言葉ではない祈りを飲み込む。
そのとき心の中にあったのは、ただひとつ――
「静かに、誰も傷つけずに終わればいい」
誰にも見られず、選ばれず、ただ通りすぎるだけの存在でいられたなら。
そう願っていた。
◇ ◇ ◇
空が光を落とす。
天の一筋が、音を立てずに、静けさと共に舞い降りる。
その光が真上で揺れて、そして私の肩に寄り添う鳥の羽のように。
そんな神秘的な情景の中、なぜか私は冷たいと感じていた。
星の光なのに、体温が下がるような奇妙な錯覚。
痛みも熱もなかった。ただ息を吸ったら『それ』が入ってくる、そんな感覚。
隣で誰かが「おめでとう」と言う声。拍手が巻き起こる。
けれどわたしの足元では、何も動かない。
……何かが変わったのに、誰もそれを知らない。
◇ ◇ ◇
視界が白く染まる。
音が消え、空気が閉じる。
ふと、そこに一人の少年が立っていた。
金色のくせ毛。白いローブ。
年はわたしと同じくらいに見える。
でも、その笑顔はまるで壊れかけの人形のよう。
優しいのにどこか悲しそうで、触れたら壊れてしまいそうな……そんな笑顔。
『君に、セーネ・マーガの星が降りました』
言葉は穏やかだった。
だけどその意味は、何よりも冷たく響く。
『君の血は、変わります』
少年の目が、静かにこちらを見つめていた。
『まだ気づかないかもしれない。けれどいずれ分かる』
『それは守るための力でもあり、拒むための力でもある』
『君が願えば、星は終わります』
その言葉を最後に、少年は風に溶けるように消えた。
残されたのは、静かに流れる自分の血の音。
それが、どこか遠くで木々の揺れのように響いていた。
◇ ◇ ◇
帰り道。
小さな花が咲く小径を歩きながら、わたしは少しだけ手を差し出してみた。
葉に触れないように。誰かの声に反応しないように。
目を伏せて、声を落として、ただ歩いた。
家に戻って母が笑った。父がぎこちなく抱きしめてくれた。
弟がはしゃぎ、わたしの裾を引いた。
それらすべてが嬉しいと感じたはずなのに、この時の私はまだ自分の星の意味すら理解をしていなかった筈なのに、心のどこかで誰かに『壊れませんように』と、必死に願っていた。
後日、王都の神殿へ招かれ自分の『セーネ・マーガの星の民』という意味を知らされる。
私が今代のマーガの星を得たという事を聞いた時の、軍や王の落胆した顔は今でも覚えている。
取り扱いの難しい『微妙な星』であり、そしてどこからどう見ても戦いの才を感じ取れない私。
そんな空気を一身に受け、帰りの馬車の窓から見た空の灰色さは今も覚えている。
あの日から、わたしは近づかないことを覚えた。
手を差し出さない。
名前を呼ばれたら笑ってごまかす。
体調が悪くても、それを隠す。
誰にも嫌われたくなかった。
でもそれ以上に、誰も傷つけたくなかった。
この星は、そういう力だった。誰かに触れることを許さない星。
でも――
その星が降ったとき、少年は言った。
『君が願えば、星は終わります』
もしいつか、その願いを叶えられる日が来るなら。
わたしは――
それでももう一度、誰かの手を、触れていい手をそっと、握れるように……。
そう、願ってしまった。
第二部:主役コンビ
【リヴェローナ神楽郷】
名前:リアナ・フィーネス
所属国:リヴェローナ神楽郷
年齢:16歳
髪の色:青紫のロング
体型:150cmの小柄体型
一人称:わたし/ぼそぼそ喋るタイプ
星の名:セーネ・マーガ
性格:おどおどしているが芯は強い。基本は大人しいが、カイルに対しては非常に許容度が高く甘える傾向も。カイルへのツッコミが追い付かず、あわあわする事も。
ダメンズウォーカー属性。
恩恵の内容:自身の血液等体液が毒となり、他者にとって極めて有害なものとなる。
この毒は粘膜(目、口、傷口など)に触れることで効果を発揮する。
感覚を徐々に喪失させ、その後数分〜数十分で“死”に至らせる。




