表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギグ・マーガの星に捧ぐ唄  作者: 改易庇護之介
第一部 六章 月の王子様
40/129

第六章2『……教えてあげないっ』

 ※ルーシェ視点――マクガイア王城、廊下。

 私室に近い会議室の外、一応城内だし私が先導する形で次の目的地へ歩く。

 ラスティーナ王女……やっぱり凛としているわね。

 これがシルバーの前だと途端に挙動不審の脳内子持ちって。


 いや待って、そもそも脳内子持ちなんて言葉は無い。

 だめね……あのバカ銀と付き合い長いと変な言葉ばかり考えちゃう。


 ってそんな事を考えながら歩いていると、不意に後ろから、王女のほうから声を掛けられる。


「……大丈夫でしょうか」


「何がでしょうか? ラスティーナ王女」


「あのミルカ……とかいう女性の件ですわ」


 ああ……確かに。

 本来今日は、あのアスプレディア共和国との会合を兼ねての場。

 今代のマーガの戦いに於いて、同盟若しくは協力体制を組むための協議、という場だった訳だしねえ。


「……シルバー様と、その……」


 きっとシルバーが国際的な犯罪や何かに該当しないかの心配かしら。

 でも確かに……あいつの意図は判らなくもないけど今回の事は、大きな話になりかね――。



「ね、ねんごろーになったりしませんでしょうか!?」



 ……何か聞いた事もない言葉が出て来たわ。

 もはや王女の脳内は、かなりの量を銀色成分で締められて――


 ……って落ち着きなさい、ルーシェ。

 何なのよまったくもう、そもそも銀色成分なんて言葉は無いわ。


 シルバーと行動共にする様になってから、どうにも妙な言葉ばっかり浮かぶわね。

 まあいいわとりあえず、聞き間違いじゃないかどうかだけ確認しないと。


「ね、ねんごろ―? あの、男と女がねんごろってこと、でしょうか?」


「ねんごろーです!」


 聞き間違いじゃないかぁ……そっかぁ、大丈夫かしらこの国。

 あたしは周囲をゆっくりと見渡す。


 うん、誰も居ないわね。さて――。


 とりあえず何時ものシルバーへの突っ込み30分の1。

 それを意識しながらラスティーナ王女の頭部へ手刀をかます。


「ていっ――」


「――ぱうッ! な、何ですかルーシェさん! いきなり私の頭に手刀など!」


「はぁ、あのですね……あー口調がもう面倒。

 まあ今は周囲に誰も居ないし……いいか。

 シルバーはあの子とどうこうは、無いわよ」


「で、でも……」


 何かもにょもにょ零しながら、王女は両手の人差し指と人差し指がちょんちょんしている。

 何なの……この可愛い生き物。

 下手すりゃ近いうちに脳内で孫が出来る勢いのくせに。


 でも……教えてあげても良いけど説明が難しいのよね。


 あの子は。あの『ミルカ』って子は……救えなかった過去の十歳のシルバー。

 あの頃のシルバーが、そのまま大きくなったら多分あんな感じなんだろう。


 このラスティーナ王女やナディアさん、そして普段は厳しいけど、アラン王。

 そんな人たちが、そんな優しい人たちが今のシルバーを作った、作ってくれた。


 そういう意味ではシルバーは幸運で彼女は……運が無かったのかもね。

 まあ、そんなあの多感な十二歳からの四年間、私はシルバーに会えなかった訳だけど。


 ……そう考えると何か腹立ってきたわ。


「えっと、あの、ルーシェさん?」


「……ふんだ、教えてあげないっ」


「えーっ! ちょ、あのルーシェさん!」


 とりあえず今の所、あたししか知らない過去のシルバー。

 それはそれで、大事なあたしの宝物、だから頑張んなさいシルバー。


 あの時たった一人、手探りで自分の居場所を何とか作ろうと必死だった貴方。

 一人薄ら寒い笑顔を張り付けただけの……彼女を、そして自分を救ってあげて。

 銀月の日刊二つ名さん。


「行きましょうか、ラスティーナ王女」


「もう! ちゃんと話してくだ、さいっ――!」


「――ぐえっ! って、か、髪引っ張らないでくださいよっ!」


「ちゃんと教えてくれるまで離しませんッ!」


「何でよッ! 嫌よ! 本人に聞きなさいよぉー!」


 ――あの子は誰の手も握り返さなかった、助けを求めなかったあの日のシルバー。


 多分彼女に必要なのは温かい微笑みでも、優しく抱き締める事でも無い。

 きっとそれは、たった一つの事。



 それは世界中に『最低』と呼ばれた彼女が、それでも『居ても良い場所』



 ――でも、間違いなくあの桃色頭は性格は悪いわね、これは間違いないわ。


「ちょっともう! 引っ張らないでよ!」


「やです! 教えてくれるまで離しません!」


 ふんだ、いいわ。私にしか知らないシルバーも沢山いるもの。

 例えば……シルバーは昔、一時期あの長い髪を編み込みしていた時期があるとかね。


 ……って何か色々あたし、くっさい事考えてるけど……きっとまだシルバーは今も、過去の自分を重ねた、あの子の鼻の穴に指突っ込んでるんじゃないかしら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ