↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私が売れたのは、殺されたからでした──回帰したアイドルは二度と愛を求めない  作者: 白波 灯


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/43

第16話『あの日、舞白は笑っていた』【1】

 回帰前の世界にて──


 White Noiseのデビューから一年が過ぎた。

 まだ国民的アイドルと呼べるほどメジャーにはなっていない。それでも、テレビの歌番組に呼ばれ、雑誌の撮影があり、イベントにも出演する。グループは少しずつ仕事を増やしており、センターの舞白には単独の仕事が入るようになった。美夏にとっては、夢の途中。そんなある日の歌番組の収録後のことだった。


「……ねぇ、美夏」


 楽屋で衣装を片づけていた美夏に、舞白が声をかけてきた。


「寿志(ずし)監督が来てるよ」

「寿志監督?」

「うん。今日の収録を見に来てるみたい。美夏に興味があるんだって」

「私に……?」


 美夏は戸惑った。

 寿志清純(ずしきよすみ)。映画監督としても知られる大物芸能人。会ったことのない美夏でも、顔と名前は知っている。しかしそのような著名人が自分に興味を持っているなど、にわかには信じられない。

 怪訝に思う美夏に、舞白は柔らかな笑みで答えた。


「美夏って、子役の頃に演技やってたんだよね?」

「うん。ちょっとだけ」

「監督、演技のできる若い子を探してるって言ってたから」

「そうなの?」

「だから、紹介してあげる」


 舞白に連れられて楽屋を出る。

 廊下の先に、数人のスタッフと話している太った男の姿がある。男が笑うと、アンバランスなまでに大きな歯が見えた。


「寿志監督」


 舞白が声をかけると、寿志は振り向いた。


「……ああ、朝霧さん」

「この子が美夏ちゃんです」


 舞白が美夏の背中を軽く押す。

 美夏は寿志に頭を下げた。


「星凪美夏(ほしなぎみか)です。よろしくお願いします」

「君が星凪さんかぁ」


 寿志は、美夏の顔をじっと見た。

 その視線に、美夏は少しだけ背筋を伸ばした。


「舞白ちゃんから聞いてるよ。子役をやってたんだって?」

「はい」

「へえ。今度、演技を見せてもらいたいね」

「ありがとうございます」


 美夏の胸が高鳴った。もしかしたら、何か大きな仕事に繋がるかも知れない。そんな期待が、ほんの少しだけ芽生えた。

 そのとき、舞白が言った。


「監督、美夏ちゃんと少しお話ししたいんですよね?」

「ああ」

「じゃあ、私は先に戻りますね」

「え?」


 美夏が舞白を見る。舞白はにこりと笑った。


「私、スタッフさんに呼ばれてるから。美夏、頑張ってね」

「う、うん……」


 舞白が廊下の向こうに歩いていく。

 残された美夏は、少し戸惑いながら寿志を見る。

 寿志がニタリと笑った。


「まあ、そんなに緊張しなくていい。楽屋でゆっくりと話そう」


 美夏は、その笑顔に言葉にならない違和感を覚えた。

 しかし──友達が自分にチャンスをくれた、失礼のないようにしなければ──そう思って楽屋についていった。


          ◇


 寿志清純から性的暴行を受けそうになって逃げ出した美夏を、ゴシップ誌はあたかも加害者であるかのように報じた。仕事欲しさに大物監督に媚びを売り、天才の繊細な心を踏みにじった新人アイドル──その記事は、Studio Aster所属ライターが上からの指示で書いたものだったが、当時の美夏にそれを察するすべはない。美夏は捏造記事に傷つき、和解のために動かなかったことを後悔した。性的暴行を容認することはできないが、もう少しスマートに事後処理をしなければならなかったと反省した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。