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放送室からのラブレター  作者: 松山 さくら


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第二章 エピソード3

 将司たちが通っていた小学校では、卒業を控えた六年生たちが、何か記念になることに取り組むことが恒例となっていた。それには、多少は先生たちの思惑も働いていたようで、自分たちだけで楽しむと言うよりも、六年間の小学校生活を通して身につけてきた成果を、全校児童の前で披露するという趣旨のものだった。

 六年生は三組まであって、一組は早々とコーラスをすることに決まったようだった。担任の強面の男の先生に、実は隠れたピアノの趣味があることを知った子供たちが、先生が弾くピアノにあわせて歌うことに決めたことは、いかにも一組らしい考え方だった。一方で、三組はと言うと、楽器の演奏に決めたようだった。元々の担任の先生が途中で体調を崩してしまい、途中からピンチヒッターとして、音楽の担当の先生が担任を受け持つことになったので、それとなくそっちの方向に流れたようだった。

 一方で、将司たちのクラスはと言うと、あれこれやってみたいことは意見として出るのだが、どれも全校児童の前で発表するにはいまいちなものばかりだった。もっとも、米倉先生が首を縦に振らなかったのだ。米倉先生は、クラス全員が参加できることを、ことさらに強調した。だから、個人芸である漫才や手品の披露などの意見を、そのまま通す訳にはいかなかった。そうして、時間ばかりが過ぎていった。隣のクラスからは、歌や楽器の練習をする音が聞こえ始めていた。

 そんなとき、どこからともなく、「劇をしたい」と言う意見が出たのだ。度重なる話し合いに、クラスメイト達はうんざりしかけていたときのことだった。誰かが言った意見に、まるで救われたかのように、クラスメイト達は乗りかかった。

 それに最後まで、賛成しなかったのが淳だった。淳は、しきりに漫才をしたいと言い張った。テレビで人気の漫才師コンビのように、自分もステージの上に立って、観客たちを笑わせたいと言っていたが、その心の内は、人情劇みたいな真面目なストーリーに関わりたくないと、思っていたからかも知れない。

 そんなときに、米倉先生が言ったのだ。

「クラスみんなでやることに意義があるんだ。劇なら、クラス全員が参加できるじゃないか。みんなで心を一つにできる」

 その言葉の意味は、淳の心の中にも、多少は響くものがあったようだった。だから、ついに淳は折れた。その日から、二組は、再び動き出すことになった。

 次の日、淳が学校に行くと、机の上に紙の束が置かれていた。一番上の紙には、『未来の六年二組』と書かれている。どうやら、台本のようだった。

「淳、おはよう。あっ、それ、劇の台本だよ。淳がいないと、この劇は完成しないからな」

 米倉先生は、何事もなかったかのように、あけっけらかんと言った。

 淳が恐る恐る、台本のページをめくると、淳は自分の目を疑った。『主役』の下に、自分の名前。誰が決めたかは、おおよそ予想がついた。だから、淳は何も言い返せなかった。


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