第二章 エピソード2
「という訳で、夜に聞こえるというスピーカーの音の正体は、そういうことだったのさ」
将司は、いつもの四人でお酒を交えながら、まるで難事件を解決した私立探偵のように、晴れ晴れした口調で言った。
それを、淳と直哉は、呆気に取られたような顔で聞いていた。その様子は、もっと謎めいたものを期待していたかのようだった。
「でもさ、どうして今になってカセットテープなんだよ」
と、首を傾げる淳。
「そうだよね。音楽を流そうと思えば、スマホでいくらでも検索できる時代なのに、犯人はどうしてそんな古風な手段を使ったんだろう……」
直哉は、手にしていたスマホをちらつかせながら呟いた。
将司は、飲みかけていたビールに、むせてしまった。
「ちょ、ちょっと、二人とも待ってよ。『犯人』だなんて、そんな物騒なことを言ってさ。何もそんな大それたことじゃないと思うけど……」
「じゃぁ、なんだって、夜に放送なんか流したんだよ。世間はこんなにも大騒ぎしたって言うのに……」
一番騒いでいたのはこの淳だったかも知れないが、そのことにはあえて触れないでおくことにした。
「里紗はどう思う?」
考え事をしていたのか、直哉の声を聞いて、里紗ははっと肩を上げた。
「どうって?」
「里紗、確か、六年生のとき、放送委員だったじゃない。何か知っていることとかないの?」
里紗は、急に訊かれて、答えに困っているようだった。それも無理はないだろう。放送委員としてマイクの前に立っていたのは、とっくの昔のことで、今の里紗にそんなことを訊いても、答えられるはずはなかった。
「私は、よくわからないかなぁ……」
と、小声で答えただけだった。
「まぁまぁ、里紗も困ってるじゃない。それよりも、問題が解決して、この町にも平和が戻ってきたんだから、この話はこの辺で止めにしてさ。それよりも、先生、今も元気にしているみたいだったよ」
将司は、さり気なく話題を変えてみた。
「先生って、俺たちの六年のときの担任の先生のことか?」
「そう、米倉先生、今は僕たちの母校で、校長先生をしているみたい」
将司の言った『米倉先生』という言葉に、淳は明らかに反応した。
「俺、あの先生、苦手だったんだよな」
と、漏らす淳。その脳裏には、あの日の出来事が蘇っているのかも知れなかった。




