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放送室からのラブレター  作者: 松山 さくら


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第二章 エピソード1

「ねぇねぇ、一組の吉岡くん、ソフトボールの試合で、ホームランを打ったんだって」

「え~っ、そうなんだ」

「なに驚いてるのよ。彩香のこと、知ってるんだからね。吉岡くんのことが好きなんでしょ?」

「うんん、そんなことないってば……」

 給食時間の放送室は、彼女たち、放送委員たちの会話で、盛り上がっていた。

 彩香は、里紗に自分が心を寄せる男の子のことを話題にされて、まんざらでもない様子で、落ち着いた手つきでカセットテープを入れ替えた。それから、再生ボタンを押して、校舎内に音楽が流れていることを耳で確認した。

「それより、里紗こそ、どうなのよ。好きな人がいるんじゃないの?」

 今度は、彩香が仕掛ける番だった。

「いないわよ」

 と、慌てて否定する里紗に、彩香はさらに被せるように続けた。

「こないだだって、直哉くんと一緒に帰っているのを見たんだからね」

「あれは、たまたま帰る途中で出会っただけだよ」

 里紗は、ついむきになって答えた。

 とは言え、つかの間、教室から離れて、同じ放送委員同士で喋る時間は楽しかった。彼女たちがあまりに盛り上がるものだから、不意を狙ったように先生たちが放送室を覗きに来ては、きつくお灸をすえようとした。だが、そんなときに限って、彼女たちは真面目に選曲したり原稿を読む練習をしたりしているものだから、先生たちは何も言えなかった。

「ところで、佳代は、好きな男の子とかいるの?」

 彩香が、珍しく佳代に話を振った。佳代というのは、もう一人いる放送委員の女の子だった。三人ひと組で、曜日ごとの放送を担当することになっていたのだ。

 佳代は、いつものように、ほんの少し顔を赤らめただけで、何も答えなかった。

 その様子を見た里紗は、すかさず、

「佳代にも好きな人ぐらい、いるよね」

 と、割って入った。

 それを聞いた彩香は、

「ふうん」

 と、つまらなさそうに言った。

 それから彩香は、話題を変えた。好きなドラマのこと、最近行き始めた塾のこと、それらの相手をするのは、決まって里紗だった。その様子を横目に、佳代は黙々と原稿を書いていた。


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