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放送室からのラブレター  作者: 松山 さくら


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第三章 エピソード4

 そうだった、そんなことがあったと、将司は思い出した。だけど、結局、次の日に学校に行っても、誰がくれたのかはわからなかった。クラスはすでに、発表会に向けて動き出していて、劇の練習に大忙しだったのだ。おまけに将司には、劇全体を取り仕切るナレーターと言う大役をあてがわれていて、たくさんある台詞を覚えるのに必死だった。だから、チョコレートを貰ったことは、いつしかきれいに忘れ去ってしまっていた。

 そこまで思い出したところで、将司の脳裏に、里紗が酒の席で言った言葉が蘇った。里紗は、「それじゃ、あのことも覚えてないの?」と言っていた。将司が「覚えていない」と言うと、里紗は急に寂しそうな表情を浮かべたような気がする。ひょっとして、里紗の言った『あのこと』とは、このことだったのだろうか。もしもそうだったとしたら、里紗はどうしてそのことを隠すのだろう。当時の明るい性格の里紗なら、自分から名乗りを上げていただろうし、その年のホワイトデーに「お返しはくれないの?」とか、こっそり言ってきてもおかしくはなかった。それに、今では旧知のよしみならずとも、毎月のように顔を合わせて、酒を交わす仲だ。酔った勢いで、「あれは実は私だったのよ」とか言えば、話のネタになっていいじゃないか。

 そんなことをあれこれ考えていたら、里紗のことがなんだかみずくさく思えてきた。今度、里紗に会ったら、そのことを確かめてみようと思った。


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