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魔人キコウ録  作者: 长太龙
第三篇

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第百二十五頁 オド

 結論。クウヤの感覚は正しかった。


 アダン(エ)が教えた生気の扱い方、その目的はこうだった。

 体内の生気を敢えて外に出し、生気濃度を一時的に上昇させる。能力の安定化傾向(生気は不安定であり、能力は安定であるという傾向)に従って体外の生気が能力に変換される前に、生気の塊(能力と生気の中間状態)として放出し、能力として出力させないことで能力の暴発を防ぐ。

 一言で表すのならば、初心者が一時的に能力を使う(操る)のに最も効率が良い方法だった。


 一時的ではあるが生気濃度を上昇させるため格段に扱いやすくなる。また体内の生気は体外のものと比べて使いやすいため、生気を使う練習として適切な側面もあった。


 一方、彼らが今習得しようとしているものは永久的に即時能力使用可能スタンバイ状態を作り出す方法だった。

 体外に漏れ出た生気を体表に留めておくことで生気濃度が常に一定となる。個人の能力と相談しながら適切な生気の量を探すのである。

 

 ハンナの実演を見たクウヤは脱力を試みた。

 体がス〜と軽くなるのを感じる。

 その時、首周りから肩にかけて何かを感じた。

 それがなんなのかは分からないが、確実にそこに存在を感じたのだ。

 それが生気かも、と感じるまでには時間はかからなかった。


 だからこそ夕食時に話題にしたのである。


 

 そして本日二度目の修行場に至る。

 ビゼー、ミクリ、スカーレッド、レオンハルト、ライナー、ハンナ、マリーナ、オットー。十六の目がクウヤを覗いている。


「……そ、そんなガッツリ見ないでくd……」

 

 卒業式後の抱負発表トラウマが呼び起こされ、語尾が消えた。


「いいから早くやれ」


「はい……」


 レオンハルトの圧に屈したクウヤは禅を組んだ。


「じゃあいきますよ……」


 脱力する。

 体が軽くなる。

 無駄な意識はせず、自然と一体になるイメージ。

 肩付近に生気を感じる。

 首まで広がった。

 

「——!」


 先ほどは感じなかった頭や腕にも広がった。

 と思ったのも束の間、心に意識が向けられるのと引き換えに感覚が霧散した。


「あっ……も、もう一回!」


 クウヤは右手の人差し指を立てた。

 皆、真剣な顔で頷いた。

 クウヤはもう一度集中・脱力をした。

 再び頭や腕に生気を感じる。

 今度は気持ちを乱さない。

 やがて全身から生気を感じられるようになった。


(これがオレのまわりの生気か……)


 心は落ち着けたまま事実を認めた。

 数十秒間、生気に包まれている感覚を体験した。


(これを、とめとくんだよな?)


 クウヤは感じている生気を留めるイメージをした。


「蓋した!」


「えっ?」


「あっ漏れた……」


 ライナーの言葉に反応して集中が切れてしまった。


「できてました?」


 クウヤが尋ねた。


「一瞬だけな」


 レオンハルトが答えた。


「今のでできてたんですか?」


 ビゼーが尋ねた。

 シュヴァルツェンバッハ家の三人以外は分かっていない様子だった。


「うん。ほんの一瞬だけどちゃんとできてたよ。ピタってなった感じがしたし」


 ハンナが言った。


「俺が集中切らせてしまったかもね。申し訳ないな」


 ライナーは反省の表情を見せた。


「ふん、あの程度で集中が切れるならまだ使いこなせていない証拠だ」


「……」


 レオンハルトの言葉にクウヤは返す言葉が見つからなかった。


「だが、大したもんだ」


 突然レオンハルトがニンマリと笑った。


「本当ですね。まさかここまでとは思いませんでした」


「スパルタすぎかもって心配してたけど、杞憂だったね」


 シュヴァルツェンバッハ一家は嬉しそうに会話している。


「?」


 クウヤたちだけでなく、マリーナとオットーも理解できていない様子だった。


「ごめんね。みんな。本来子供たちにオドの使い方教える時は私たちのオドをぶつけて分からせるんだよね」


「え?」


 ハンナの説明に一家以外の人間は固まった。


「それじゃあクウヤさんは……」


「自力でオドを感じ取ったってこと?」


 マリーナは自らの口元を手で押さえ、オットーは呆然と立ち尽くしていた。


「?」


 クウヤ、ビゼー、ミクリ、スカーレッドは事態がまだ把握できていない。


「君たちにも分かるように説明する必要がありそうだね」


 ライナーは表情が芳しくない四人を見て、補足を始めた。


「ハンナが言った通り普通は大人がオドをぶつけて子供たちに無理矢理オドを感じ取ってもらうんだ。目に見えないし、幼い子に教えるのは簡単じゃないからね。でも君たちは子供じゃないし、オドについて多少の知識があったみたいだからちょっと試してみたんだ。発案したのは俺じゃなくて父さんだよ」


「余計なこと言うんじゃねえ……」


 四人は目を細くしてレオンハルトを見つめた。


「できた奴がいるんだから文句ねえだろ?」


 レオンハルトは四人を睨み返した。

 その視線だけで体が萎縮してしまう。


「じゃあ父さん……」


「ああ。クウヤ・インディラ。今日からは俺がテメエの面倒見てやる。食らいついてこいよ」


「インディュラです。あっ——」


 クウヤは身の危険を感じてこれ以上は喋れなくなってしまった。

 なぜかレオンハルトを見ることはできなかった。


「父さん……君たち三人は俺とハンナで責任を持って指導するよ。一緒に頑張ろう!」


 鬼の形相でクウヤに大量のオドを向けているレオンハルトを横目にライナーは言った。


「私たちもサポートします!ね、オットーさん?」


「うん。何でも聞いてくれ」


 マリーナとオットーも三人の修行に協力してくれるようだ。


「クウヤ。明日から修行場はもっとムラから離れた場所にする。この距離だと制限が多いんでな。安心しろ。俺がマンツーマンで指導してやるんだ。より高度なことができるようになる。保証してやる」


「頑張ってねクウヤくん。君は父さんにみっちり鍛えてもらったほうが強くなれるから。他の誰にも干渉されない環境で高みを目指してね」


「ファイト〜!」


「ファイトです!クウヤさん!」


「頑張れよ〜」


 ムラビトたちから激励の言葉を送られたクウヤだが、あまり良い感じがしなかった。地獄が待っているようなそんな感覚を強く覚える。


 同じ予感をビゼーらも感じていた。

 三人はクウヤが気の毒に思ったが、声をかけられる雰囲気でなかったためスルーした。


「今日はテメエの成長を見られてよかった。しっかり休んどけ。明日を万全な状態で迎えられるようにな」


「はい……」


「声が小せえぞ?」


「はい!」


(クウヤ頑張れ……)


(頑張って……)


 ビゼー、スカーレッドとミクリは心の中でエールを送った。


「君たちはどうする?今日は休む?」


 ライナーが尋ねた。

 三人は同じことを思っていた。


「やります!」


「やる気があって素晴らしい!少しでもクウヤくんに追いつきたいってとこかな?」


 ハンナが問うた。


「はい。クウヤに負けてられませんから!」


「俺も足だけは引っ張りたくないんで」


「私、もっと役に立ちたいです……」


 三者三様の言葉で決意を表した。


「じゃあ始めようか。君たちを三日で蓋ができるようにするよ。今日が一日目だ」


「明後日?そんな早くできるんですか?」


 一週間でできなかったことを三日で可能にできるのか、ビゼーは疑問に思った。


「できるよ。君たちは今日までオドと向き合い続けた。半端な気持ちでやっていなければ蓋は三日間あればできるようになる」


 ライナーはずいぶん自信があるようだった。


「分かりました!全力でやります!」


 ビゼーの宣言にミクリとスカーレッドも大きく頷いた。

 ライナーは三人の気合いが入った顔を眺めると、腹の高さに右手を出した。掌を上に向けて見えない球を持っている形だった。


「今から君たちにオドの塊をぶつける。目に見えないから避けるのは簡単じゃないよ。ちゃんと感じ取って回避してね。三回連続で避けられたら今日は休もう」


 三人が周りを見るとハンナは胸の高さに右手を出していた。人差し指と中指を伸ばしている。

 マリーナは鳩尾のあたりで虚心合掌をしていた。

 オットーは右腕を胸の前に構え、バトンを持つように手を丸めていた。そして自分の方を向いている親指側を左手で塞ぐポーズをとった。


 三人は非日常的な彼らの構えを一通り眺めると、視線を交わして覚悟を固めた。

次回 課題

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