表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/17

9話 殿下からの正式な婚約の申し入れ

 私はディラン殿下の腕に守られたまま馬車へ乗せられ、王太子宮へと連れ戻された。


 自室へ戻ると、泣きそうな顔をした侍女のマリアさんたちが、手際よく着替えを用意してくれた。

 心身ともにすっかり疲れ切っていたけれど、長年私を苦しめていた過去が消え去り、開放感に心が晴れ渡っていた。


 身支度が終わり、侍女たちが退室すると、部屋の扉がノックされた。


「入ってもいいかい、エレナ?」


「あ……はい、ディラン殿下。どうぞ」


 扉が開くと、私を心配そうに見つめるディラン殿下が入ってきた。

 殿下はゆっくりとした足取りで私のソファに腰掛けると、私の手をそっと包み込んだ。


「気分はどうだい? どこか痛むところはないか?」


「はい。手当てをしていただきましたので、もう大丈夫です。……殿下、本当にありがとうございました。私を助けてくださって……私の名誉を取り戻してくださって……。あなたには、感謝しかありません」


 私が深く頭を下げると、殿下は切なそうに顔を曇らせた。


「……君に謝らなければならない。君が一人でカールのもとへ向かっていたことに気づくのが遅れ、あんな恐ろしい目に遭わせてしまった。私は君を守りきれなかった……」


「そんなことありません! 私が一人で勝手に行動したのが悪いのです。殿下をお巻き込みしたくなくて……」


「君はどこまでも優しく、強い人だな」


 ディラン殿下はふっと愛おしそうに目を和らげる。

 そのサファイアの瞳には、かつて見たことがないほど熱い光が宿っているように思えた。


「エレナ。君に、ずっと伝えたかったことがあるんだ」


「え……?」


「最初は……確かに君の言う通り、縁談を避けるためという口実で君を王宮へ連れてきた。だが、次第に私の心は、君に奪われていったんだ」


 その言葉に、私の心臓がドクンと音を立てた。

 殿下の低くも凛とした声が、私の心ごと震わせていく。


「君の強さ、分け隔てのない優しさ。そして、努力を惜しまない健気さ、そして花のような笑顔……。知れば知るほど、私は君から目が離せなくなっていった。今日、君がさらわれたと知った時、私は正気を失うかと思った」


「殿下……それって……」


「契約などという偽りの関係は、今日で終わりにしたい」


 ディラン殿下はソファから静かに立ち上がると、私の前に優しく片膝をついた。

 彼は私の手を取り、迷いなく私の目を見つめる。


「エレナ・フォンテーヌ。生涯をともに歩む王太子妃として、私と正式に婚約してくれないだろうか。私のすべてをかけて、君を一生愛し、幸せにすることを誓う」


 殿下のサファイアの瞳には、嘘偽りのない本気の感情が見て取れた。

 あまりの熱量に、呼吸が乱れそうになる。


(……夢じゃない……?)


 悪女と蔑まれ、誰からも愛されず、冷たい闇の中にいた。

 ディラン殿下、そんな私を見つけ出し、温かな場所へ連れ出し、命がけで守ってくれた。


 諦めようとしていた私の密かな恋心が、涙となってこぼれ落ちる。


「ディラン殿下……っ。私なんかが、殿下の隣にいてもよろしいのでしょうか……? 悪女と呼ばれていた私で……」


「君を悪女と呼ぶ者など、もうこの国には一人もいないよ。君は誰よりも美しく、誇り高い私だけの一輪花だ」


 殿下は愛おしそうに、私の涙を指先でぬぐってくれた。

 私は息を整え、彼のサファイアの瞳を見つめ返す。


「……私でよろしければ……喜んで、殿下の婚約者にならせていただきます……! 私も、殿下のことが……大好きです」


 私の答えを聞いた瞬間、太陽のようにまぶしく、幸せそうな笑顔が彼の顔に咲き誇った。


「ありがとう、エレナ……! 愛しているよ」


 殿下は私を引き寄せ、優しく抱きしめてくれた。

 何よりも強い腕の力、服越しでも分かる温もり、耳元で聞こえる鼓動。


 私を苦しめていた過去はすべて彼方へ消え、幸福感が私を満たしていく。


 こうして、私は違和感を感じることなく、最高に幸せな形で区切りを迎えたのだった。

ここまでご愛読ありがとうございます。

次回からヤンデレの部です。

ブックマーク・評価など頂けると、投稿の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【代表作】→悪役令嬢は全員生存エンドを目指す
◆累計ページビュー15,000pv超え感謝◆

jxf45kdwd5njgrn14c3xe0qckmwv_rbw_8c_b0_4d3o.jpg

あらすじ→「全員生き残るか、一人残らず死ぬか」その二択しかない極限の乙女ゲーム。
前世の記憶を取り戻したルナリアは、自分が"全滅エンド"を招く悪役令嬢だと知る。
導き出した答えは、誰とも関わらず、孤独に生きること。
そう誓った矢先に出会ってしまったのは、攻略対象——公爵令息のグレン。
父の虐待を見抜き、どんなに突き放しても離れない彼に、距離を取ろうとするほど執着されていく。
やがて暴かれる、最初から大切な人を"殺す力"を宿していたという残酷な真実。
それでも彼は、皆の前で誓った。
「生涯をかけて君を幸せにする」と。
虐げられた令嬢×公爵令息。
作品ページはこちら→「悪役令嬢は全員生存エンドを目指す
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ