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8話 実家と侯爵令息に下される判決

 扉の向こうから現れたのは、王宮騎士たち。

 そして美しい金髪を乱し、蒼白な顔をしたディラン殿下だった。


「エレナっ……!」


 ディラン殿下の、緊迫した声が応接間に響く。


「ひっ……!?」


 私の上に覆いかぶさっていたカールは、恐怖でと短い悲鳴を上げた。

 次の瞬間、殿下の脇を通り抜けた騎士が、カールを弾き飛ばすように床へと叩きつけた。


「ぐわっ……!? な、何をする、離せ! 俺は侯爵家の嫡男だぞ!」


 カールは床に顔面を押し付けられ、服を破きながらみっともなく暴れる。

 だが騎士たちはその腕をひねり上げ、少しも動くことを許さない。


「エレナ……! 無事か!?」


 ディラン殿下はカールなど目に入らないかのように駆け寄ると、震える私の体を抱きしめてくれた。

 彼の体温と、安心する涼やかな香りが私を包み込み、一気に緊張の糸が切れた。


「殿……下……っ。ディラン殿下……っ」


「すまない、遅くなってしまった……! あいつに、何かされなかったか!?」


 ディラン殿下は、私の冷え切った体を優しく包み込んでくれる。

 それだけで、私の心に安堵がじわりと広がっていった。


「大丈夫……です……。殿下が、助けに来てくださったから……」


「……ああ。もう大丈夫だ。誰も君を傷つけさせない」


 殿下は私の髪を撫でると、私を腕の中に抱えたまま、ゆっくりと立ち上がった。

 そして床に倒れるカールに視線を向ける。


 私に向けられていた温もりは消え去っていた。

 そこにあるのは、見る者をすくみあがらせる氷のような眼差しだった。


「で、殿下……! 誤解です! これは、その……この悪女が俺を誘惑して、この別邸へ呼び出したのです! 俺は被害者で――」


「見苦しいぞ、カール」


 凍てついた声が、惨めに這いつくばるカールの言い訳をさえぎる。


「我が王太子宮の尊い客人であり、私が何よりも大切にしている女性を騙して連れ出し、危害を加えようとした……。その不敬と暴行の罪、どのように償うつもりだ?」


「ち、違います! 俺はただ、うちの侯爵家の領地計算をこいつにやらせようと……っ」


「君の言い分を聞くつもりはない」


 ディラン殿下が手を挙げると、背後の騎士が殿下に書類を手渡した。


「カール侯爵令息。君が数年前から情報屋を買収し、エレナに関する『強欲な悪女』という無実の噂を捏造して社交界へ流させた証拠、すべて押さえてある」


「な……なんだと……!?」


「君は彼女の優れた実務能力を我が物にするため、故意に彼女の評判を落とし、逃げ場を奪って従わせようとしたな?」


 カールの顔から、見る見るうちに血の気が引いていく。

 まさか自分が行っていた悪事が、白日の下に晒されるとは思ってもみなかったのだろう。


「そんな……なぜ……なぜそこまでの証拠を……っ」


「さらに言えば、君の侯爵家と、エレナの実家であるフォンテーヌ伯爵家が長年にわたり行っていた横領の証拠も出揃っている。……二つの家を救うために彼女を監禁しようとしたようだが、逆だ。君たちの愚かな行為のせいで、終わりを迎えたんだ」


 ディラン殿下の冷徹な通告に、カール様はガクガクと体を震わせ、声も出せずに絶句した。


「これより、侯爵家および、エレナ以外のフォンテーヌ伯爵家に対し、即座に爵位剥奪、全財産没収、ならびに両家を平民へ落とす処分を下す」


「ひ、平民……っ!? や、やめてくれ! 助けてくれ、エレナ! おい、エレナ! 俺たち幼馴染だろう!? 助けてくれ!」


 カールは絶望とともに叫び散らかし、騎士の拘束の中でもすり寄ろうとする。

 けれど、私にはかける言葉など何一つなかった。

 これは、彼らが蒔いた悪意の種が、すべて自分に返ってきただけに過ぎない。


「連れて行け」


 ディラン殿下の命令とともに、騎士たちがカール様を引きずっていく。

 見苦しい悲鳴のような叫び声は、やがて屋敷の外へと消えていった。

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【代表作】→悪役令嬢は全員生存エンドを目指す
◆累計ページビュー15,000pv超え感謝◆

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あらすじ→「全員生き残るか、一人残らず死ぬか」その二択しかない極限の乙女ゲーム。
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導き出した答えは、誰とも関わらず、孤独に生きること。
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やがて暴かれる、最初から大切な人を"殺す力"を宿していたという残酷な真実。
それでも彼は、皆の前で誓った。
「生涯をかけて君を幸せにする」と。
虐げられた令嬢×公爵令息。
作品ページはこちら→「悪役令嬢は全員生存エンドを目指す
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