§214 アン先輩の弁解
「酷いのだ。トラウマになったのだ」
アン先輩が疲れ切った声で小さく呟く。
他も惨憺たる状態だ。
メルは白目を剥いて倒れている。
アルはその隣でひくひく痙攣中。
「金貨が七枚、八枚、九枚。ああ一枚足りない!」
ヘラからそんなうわごとが聞こえた。
ちょっとやりすぎたかな。
でも健康診断魔法で見る限り、生命に異常は無い。
だからまあ大丈夫だろう。
「それでどういう事だったんですか」
取り敢えず話を聞ける状態なのはアン先輩だけだ。
「元々、ラインマインとホクトの間がもどかしいとヘラと話していたのだ。それでこの冬休みに二人を大接近させようとメルとアルも含めて相談したのだ。あのクバーツから帰ったすぐ後で」
ふむふむ。
クバーツから俺はまっすぐカウフォードに帰ったから気づかなかったな。
他の面子はその辺で怪しい相談をしていた訳か。
「あと、これ以上の説明の前にさっきの魔法を和らげる魔法を全員にかけて欲しいのだ。凶悪な精神攻撃魔法並にやばい代物なのだ。咄嗟に自分に精神抵抗魔法をかけたのだがそれでもかなりやばいのだ。放っておくと廃人化するかもしれないのだ。レマノ姉の魔法ならきっと解除か軽減化の魔法も組である筈なのだ」
確かに廃人化されてしまっては困るな。
俺は慌てて対応する魔法を探す。
幸いすぐに見つかった。
アン先輩が言うとおり、さっきの魔法とペアで使うものとして憶えている。
『一部記憶抹消・ショック軽減化!』
アルの痙攣が止まった。
メルも倒れたままだが心なしか楽になったような雰囲気。
ヘラだけは、
「ああこの手形も不渡りだわ。税金の納付期限が~!」
なんてぶつぶつうわごとを言っているままだけれど。
「あと、さっきの魔法は今後使用しない方がいいのだ。冗談で無く精神攻撃魔法そのもの並なのだ。抵抗魔法三段階をかけても厳しいのだ。心臓が弱い人なら一発ダウンなのだ」
そんなに恐ろしい魔法だったのか。
「レマノさんはこの魔法、何に使うつもりだったんでしょうね」
「レマノ姉は私にも正直理解できないししたくも無いのだ。うちの一族でもとびきりの●●●●なのだ」
今一部の発言にピー音がかかったぞ。
「今のはレマノ姉本人による検閲なのだ」
なるほど。
さて話を本題に戻そう。
「つまりラインマインをそそのかしてカウフォードに戻し、更に旅行に行くようにさせたと」
「その辺はヘラにやってもらったのだ。私が他にやったのは遺跡の管理担当を呼び出して、旅行に行った際の録画と編集を頼んだだけなのだ」
「よく管理担当を呼び出せましたね」
「遺跡の中でわざとらしく空間系大破壊魔法の呪文を唱えたら慌てて出てきたのだ。流石によく知っているのだ」
酷すぎる。
完全な脅迫だ。
「事情はよくわかりました。ラインマインどうする?俺的にはもう一回さっきの魔法でお仕置きしてもいいような気分なんだけれど」
「うーん、でもさっきの魔法、相当厳しかったみたいだしもういいんじゃない」
「アレはもう勘弁して欲しいのだ。正直封印してほしいのだ」
まあしょうがない、許してやるか。
結果的にラインマインに告白できたのだし。
それにどうもあの魔法、相当に厳しいのも確かな感じだしさ。




