第77話 青の姫君、見られることから逃げずに名前を名乗る
翌朝。
私は。
知らない天井を見て。
目を覚ました。
一瞬。
どこにいるのか。
分からなかった。
木の梁。
白く塗られた壁。
森の家より。
ずっと広い部屋。
窓。
厚い布。
昨夜。
灯りを消す前に。
閉めたまま。
外。
まだ。
薄暗い。
そして。
寝台の上。
私の身体へ。
掛かっている。
村の。
古い毛布。
その匂いで。
思い出す。
森ではない。
最初の宿場。
王都へ向かう。
旅の途中。
昨日。
私は。
森を出た。
村で。
いってきます。
と言った。
皆から。
いってらっしゃい。
と。
言われた。
馬車。
乗った。
村が。
見えなくなった。
戻りたい。
と。
思った。
でも。
進む。
と。
言った。
森の外へ。
出た。
空。
広かった。
見られた。
怖かった。
大丈夫ではありません。
と。
言えた。
宿で。
少し待ってください。
と。
言えた。
私は。
毛布を。
胸元まで。
引き上げる。
目を。
閉じる。
森の音。
聞こえない。
代わりに。
外。
馬の鼻息。
車輪。
誰かが。
木箱を。
運ぶ音。
遠く。
宿の厨房。
鍋。
金属。
朝。
始まっている。
知らない場所。
知らない人。
知らない匂い。
でも。
私は。
ここにいる。
「朝です」
小さく。
言う。
声。
少し。
掠れる。
「旅の、二日目です」
言ったあと。
少し。
考える。
森を出て。
二日目。
王都。
まだ。
遠い。
十日前後。
そう。
聞いている。
全部。
考えると。
長い。
だから。
「今日は、今日だけです」
自分へ。
言う。
昨日。
一日。
進んだ。
今日。
また。
一日。
「おはようございます」
知らない部屋へ。
言う。
そして。
少し。
間。
「おはようございます、母様」
胸。
痛む。
でも。
森ほど。
強くない。
なぜ。
距離。
少し。
近づいた?
王都。
母様。
同じ方向。
だから。
「昨日、森を出ました」
返事。
ない。
「会うかどうかは、まだ決めていません」
変わらない。
「今日も、決めません」
言う。
今日。
決める。
必要。
ない。
私は。
毛布。
めくる。
足。
床。
冷たい。
でも。
森の家。
床板とは。
違う。
磨かれている。
少し。
滑る。
私は。
慎重。
立つ。
◇
窓。
開ける。
朝。
空。
薄い。
青。
森。
ない。
宿場。
屋根。
煙突。
馬小屋。
道。
人。
すでに。
動いている。
荷物。
積む。
馬。
つなぐ。
朝食。
買う。
旅人。
商人。
兵士。
村の朝とは。
違う。
声。
多い。
足音。
多い。
でも。
王都。
もっと。
多い。
胸。
少し。
固くなる。
「今日は」
私は。
窓枠。
握る。
「見られる日になるかもしれません」
昨日。
宿。
入る時。
囁き。
青。
公爵家。
森へ行った。
聞こえた。
今日。
街道。
宿場。
王家の馬車。
私。
見られる。
公爵令嬢。
青い髪。
噂。
ある。
私は。
目を閉じる。
昔。
王都。
視線。
怖かった。
指。
差す。
囁く。
化け物。
呪われた。
姫。
私。
見られること。
全部。
危険。
と思った。
だから。
見られない場所。
森。
選んだ。
でも。
今。
戻る。
違う。
王都へ。
自分の言葉。
伝える。
そのため。
「逃げない」
言って。
すぐ。
首。
横。
「違います」
逃げたい時。
逃げても。
いい。
見られることから。
全部。
耐える。
必要。
ない。
「必要なら、離れます」
今日。
人。
多い。
怖い。
その時.
馬車.
中.
戻る.
目.
閉じる.
「でも」
私は.
窓.
外.
見る.
「名前を呼ばれたら」
一度.
胸.
手.
「自分で、名乗ります」
それ.
今日.
目標.
大げさ.
でも.
今の.
私に.
必要.
◇
戸.
叩く.
「フローラ様」
ミナ.
「はい」
「お目覚めですか」
「はい」
「朝食は、こちらのお部屋へお持ちしますか」
私は.
一瞬.
迷う.
部屋.
一人.
食べる.
楽.
でも.
昨日.
三人.
食事.
少し.
安心.
「皆で食べたいです」
言う.
声.
少し.
緊張.
でも.
言えた.
「承知しました」
少し.
間.
「食堂は、宿泊客が多いですが」
胸.
固い.
人.
見られる.
「個室もあります」
選択.
私は.
考える.
大広間.
たくさん.
人.
今.
朝.
最初.
無理.
「個室でお願いします」
「はい」
逃げた?
違う.
選んだ.
今日は.
旅.
続く.
朝.
全部.
試す必要.
ない.
「ありがとうございます」
言う.
足音.
離れる.
私は.
息.
吐く.
◇
服.
旅服.
昨日と.
同じ.
髪.
今日は.
自分で.
まとめる.
少し.
歪む.
鏡.
見る.
「……これは」
右.
高い.
左.
低い.
私は.
少し.
困る.
でも.
ミナ.
毎朝.
頼る.
いい.
今日は.
自分.
直したい.
一度.
ほどく.
二度.
やり直す.
少し.
まし.
完璧.
ではない.
「これで」
私は.
鏡.
見る.
「旅ですから」
誰か.
怒る?
侍女長.
いない.
礼法教師.
いない.
王都.
まだ.
遠い.
「これで、よいです」
決める.
花守り布.
今日は.
馬車.
乗る間.
手元.
持つ.
宿場.
出る時.
かぶる?
私は.
少し.
考える.
隠すため.
ではなく.
森.
持つため.
「かぶります」
布.
頭.
かぶる.
中.
五つの言葉.
今日.
自分.
名乗る.
その下.
紙.
旅の記録.
昨日.
書いた.
私は.
それ.
折る.
同じ.
布.
入れる.
◇
個室.
朝食.
ミナ.
リオ.
すでに.
いる.
「おはようございます」
私.
入る.
リオ.
「おはよう」
ミナ.
「おはようございます」
リオ.
私.
髪.
見る.
「自分でやった?」
「はい」
「左右違う」
即.
言う.
私.
少し.
固まる.
ミナ.
「リオ」
「何」
「言い方」
「でも違う」
私.
鏡.
ない.
髪.
触る.
「やはり」
少し.
恥ずかしい.
でも.
リオ.
「直す?」
「……どう思いますか」
「別にそのままでもいい」
「では、なぜ言ったのですか」
「気づいたから」
私.
少し.
むっと.
する.
ミナ.
笑う.
「フローラ様」
「はい」
「今のままでも、旅装として問題ありません」
「はい」
「王都の正式な場では、整えましょう」
「はい」
私は.
リオ.
見る.
「今日は、このままにします」
「うん」
「気になると言ったのに」
「俺は気になるとは言ってない」
「左右違う、と」
「事実」
サム.
いない.
でも.
言いそう.
私は.
思わず.
笑う.
「事実ですね」
リオ.
「うん」
空気.
少し.
柔らかい.
◇
朝食.
温かい.
パン.
卵.
焼いた肉.
果物.
スープ.
村.
より.
豪華.
でも.
味.
濃い.
私は.
スープ.
一口.
「濃いです」
リオ.
「昨日より?」
「同じくらい」
ミナ.
「宿場では、旅人向けに味が濃いことがあります」
「なぜ」
「汗をかくからでしょう」
リオ.
「森の薄味に戻りたい」
私.
笑う.
「帰ったら、豆のスープです」
「肉入り」
「少し」
「約束」
「はい」
帰る.
話.
自然.
する.
胸.
少し.
温かい.
私は.
パン.
一口.
卵.
二口.
果物.
三口.
食べる.
昨日.
より.
少し.
食欲.
ある.
「今日は食べられます」
自分.
言う.
リオ.
「見れば分かる」
「報告です」
「誰に」
「自分へ」
リオ.
少し.
笑う.
◇
宿.
出発.
前.
玄関.
人.
多い.
商人.
旅人.
宿の者.
王家の馬車.
目立つ.
私.
出る.
瞬間.
空気.
少し.
変わる.
視線.
集まる.
胸.
固い.
足.
止まりそう.
「青い……」
誰か.
囁く.
「本当に」
「スプリング家の」
「森にいたって」
「帰されるのか」
言葉.
聞こえる.
帰される.
胸.
痛い.
違う.
帰る.
ではない.
王都.
行く.
でも.
知らない.
人.
知るはず.
ない.
リオ.
少し.
身体.
前.
出る.
私.
手.
上げる.
「大丈夫ではありません」
先.
言う.
リオ.
止まる.
「でも」
私は.
胸.
手.
「歩けます」
ミナ.
「はい」
使者.
私.
前.
頭.
下げる.
「フローラ・フォン・スプリング様」
その名.
宿.
玄関.
響く.
視線.
増える.
私は.
心臓.
速い.
でも.
今日.
決めた.
名前.
呼ばれたら.
自分.
名乗る.
使者.
確認.
のため.
言った.
普通.
でも.
私.
口.
開く.
「はい」
一度.
止まる.
周囲.
見る.
怖い.
でも.
「フローラ・フォン・スプリングです」
自分で.
言う.
宿.
静か.
一瞬.
ほんの.
一瞬.
でも.
私.
聞こえた.
自分の名前.
自分の声.
誰か.
小さく.
「青の姫君」
言う.
胸.
刺さる.
でも.
以前.
化け物.
と.
同じ.
名前?
青の姫君.
噂.
私.
すぐ.
顔.
向ける.
誰.
若い.
女性.
旅人.
私.
見る.
恐れている?
分からない.
少し.
驚き.
だけ.
私は.
何も.
言わない.
馬車.
向かう.
でも.
背中.
逃げた.
感じ.
少ない.
自分.
名乗った.
それ.
残る.
◇
馬車.
動く.
宿場.
遠ざかる.
リオ.
向かい.
「名乗った」
「はい」
「急に」
「今日、決めていました」
「何を」
「名前を呼ばれたら、自分で名乗る」
リオ.
少し.
考える.
「なんで」
私は.
窓.
外.
見る.
「以前は」
声.
ゆっくり.
「名前を呼ばれることが、怖かったからです」
「フローラって?」
「公爵令嬢として」
「うん」
「フローラ・フォン・スプリング」
家名.
役目.
視線.
噂.
「その名前を呼ばれると」
胸.
少し.
痛い.
「自分が、何かに戻される気がしました」
リオ.
「今は」
「まだ怖いです」
「うん」
「でも」
私は.
花守り布.
触る.
「自分で使えます」
昨日.
書状.
署名.
同じ.
家名.
縛る.
だけ.
ではない.
「今日は」
私は.
少し.
笑う.
「一回、使えました」
ミナ.
静か.
「十分です」
◇
街道.
朝.
人.
増える.
王都.
向かう.
大きな.
道.
合流.
荷車.
商人.
旅人.
騎士.
農民.
巡礼者.
いろいろ.
王家.
馬車.
道.
譲られる.
視線.
集まる.
私.
窓.
布.
少し.
閉める?
迷う.
でも.
全部.
開ける.
必要.
ない.
半分.
閉める.
外.
見える.
でも.
人.
視線.
少し.
減る.
「これで」
私は.
言う.
「ちょうどよいです」
リオ.
「閉めてもいい」
「はい」
「我慢しなくていい」
「はい」
でも.
今.
全部.
閉めない.
自分.
空.
道.
見る.
必要.
◇
午前.
橋.
大きい.
川.
渡る.
森.
近く.
小川.
しか.
見ない.
私.
窓.
開く.
風.
強い.
水.
広い.
光.
反射.
青.
空.
映る.
「きれいです」
言う.
リオ.
「川?」
「はい」
橋.
下.
船.
ある.
人.
荷.
運ぶ.
川岸.
町.
市場.
声.
多い.
遠い.
でも.
聞こえる.
私.
見る.
「王都にも」
「もっと大きい川ある?」
リオ.
「近くに」
ミナ.
「王都の外側を、大河が流れています」
私.
昔.
見た.
でも.
屋敷.
馬車.
窓.
カーテン.
少し.
だけ.
今日.
見える.
景色.
自分で.
見る.
「戻る時も」
私.
言う.
「この橋を通りますか」
使者.
前の.
馬車.
聞こえない.
ミナ.
「同じ道であれば」
「はい」
「たぶん」
私.
橋.
見る.
「覚えておきます」
◇
昼.
小さな.
町.
休憩.
王家.
用意.
宿屋.
庭.
人.
少し.
多い.
私.
馬車.
降りる.
今回は.
昨日.
より.
視線.
多い.
王家.
馬車.
青い髪.
噂.
伝わる.
「青の姫君だ」
聞こえる.
誰か.
子ども.
声.
母親.
「見ちゃ駄目」
胸.
強く.
痛む.
見ちゃ駄目.
昔.
何度.
聞いた.
私は.
足.
止まる.
母親.
子.
手.
引く.
子ども.
私.
見る.
怖い?
好奇心.
だけ?
分からない.
私は.
目.
逸らす.
でも.
逃げる.
前.
子ども.
「髪、きれい」
言う.
母親.
「こら」
子ども.
「だって」
私.
止まる.
胸.
痛い.
でも.
違う.
きれい.
昔.
村.
子ども.
青い糸みたい.
言った.
同じ.
私.
子ども.
見る.
母親.
緊張.
頭.
下げる.
「申し訳ございません」
私.
どう.
答える.
以前.
何も.
言えない.
でも.
今.
子ども.
見た.
「ありがとうございます」
言う.
声.
小さい.
でも.
子ども.
聞こえた.
笑う.
「空みたい」
胸.
一気に.
熱い.
私.
少し.
笑う.
「そうですね」
母親.
驚く.
周囲.
人.
見る.
私.
怖い.
でも.
この.
一瞬.
逃げない.
子ども.
「触っていい?」
母親.
「駄目です!」
強い.
声.
子ども.
びく.
私.
昔.
思い出す.
触れると.
痣.
呪い.
でも.
村.
髪.
触った.
花.
挿した.
私は.
少し.
考える.
人.
多い.
ここ.
今.
触られる.
怖い.
無理.
「今日は」
私は.
子ども.
見る.
「ごめんなさい」
言う.
「触られるのは、少し怖いです」
母親.
目.
見開く.
子ども.
少し.
考える.
「じゃあ見てもいい?」
「はい」
「見るだけ」
「はい」
子ども.
笑う.
「きれい」
私.
胸.
温かい.
「ありがとうございます」
私は.
歩く.
リオ.
横.
黙る.
ミナ.
少し.
後ろ.
私.
食事.
部屋.
入る.
扉.
閉まる.
瞬間.
膝.
少し.
力.
抜ける.
「……怖かったです」
言う.
ミナ.
「はい」
リオ.
「でも話した」
「はい」
「触らせなかった」
「はい」
「それでいい」
私.
涙.
少し.
「はい」
◇
昼食.
魚.
パン.
野菜.
スープ.
私.
まだ.
緊張.
でも.
食べる.
一口.
二口.
三口.
リオ.
「空みたいって」
急に.
言う.
私.
見る.
「はい」
「村の子も言ってた」
「青い糸」
「それ」
ミナ.
「同じ髪でも」
私.
少し.
笑う.
「見る人が違えば、言葉も違います」
「はい」
「化け物」
胸.
少し.
痛い.
「きれい」
両方.
「でも」
私は.
匙.
置く.
「私の髪は、同じです」
リオ.
「うん」
「言葉で、髪そのものは変わりません」
昔.
それ.
分からなかった.
人.
怖がる.
なら.
私.
怖いもの.
人.
化け物.
言う.
なら.
私.
化け物.
そう.
思った.
「今日は」
私は.
少し.
笑う.
「少しだけ、分かりました」
◇
午後.
馬車.
進む.
人.
増える.
町.
近い.
王都へ.
続く.
主要街道.
道幅.
広い.
石.
一部.
敷かれている.
揺れ.
少ない.
でも.
馬車.
音.
大きい.
私は.
途中.
少し.
眠くなる.
でも.
寝る.
怖い.
目.
閉じたら.
王都.
近づく.
起きたら.
知らない.
場所.
リオ.
「寝れば」
「起きています」
「眠そう」
「大丈夫」
言った.
瞬間.
リオ.
見る.
私.
止まる.
「……眠いです」
言い直す.
リオ.
「寝れば」
「でも」
「俺らいる」
ミナ.
「はい」
私.
胸.
少し.
熱い.
「では」
村.
毛布.
膝.
少し.
肩.
かける.
「少し、眠ります」
ミナ.
「おやすみなさい」
リオ.
「着いたら起こす」
「まだ宿では」
「休憩でも」
「お願いします」
目.
閉じる.
馬車.
揺れ.
音.
怖い.
でも.
二人.
いる.
少し.
眠る.
◇
夢.
見た.
森.
でも.
畑.
ない.
柵.
ない.
家.
ない.
私.
歩く.
村.
行く.
誰も.
いない.
声.
ない.
オカエリ.
探す.
小石.
ない.
私は.
走る.
でも.
道.
分からない.
「フローラ」
誰か.
呼ぶ.
母様?
父様?
村長さん?
リオ?
分からない.
振り返る.
王都.
門.
ある.
私.
間.
立つ.
森.
後ろ.
ない.
王都.
前.
ある.
どこ.
帰る.
分からない.
胸.
苦しい.
「フローラ」
また.
声.
近い.
目.
開く.
「フローラ」
リオ.
顔.
目の前.
「……はい」
「起きた」
私.
息.
速い.
胸.
痛い.
馬車.
中.
ミナ.
心配.
見る.
「夢?」
「はい」
声.
震える.
「森が」
涙.
「なくなっていました」
リオ.
少し.
眉.
寄る.
「ないわけない」
短い.
「はい」
「畑も」
「はい」
「柵も」
「はい」
「村も」
「はい」
「ある」
言う.
強い.
「俺も見た」
胸.
少し.
落ち着く.
「昨日まで」
「うん」
「今日もある」
リオ.
「ガルドいる」
「はい」
「子どもらも」
「はい」
「勝手に消えるな」
私.
泣きながら.
少し.
笑う.
「夢へ言ってください」
「次出たら言う」
ミナ.
布.
渡す.
「怖かったですね」
「はい」
「でも、起きました」
「はい」
「今は馬車です」
「はい」
「道の途中」
「はい」
昨日.
自分.
言った.
途中.
私は.
胸.
手.
「途中です」
言う.
◇
夕方.
二日目.
宿場.
昨日より.
大きい.
町.
城壁.
低い.
門.
ある.
私.
窓.
見る.
人.
多い.
商店.
屋台.
子ども.
兵士.
馬車.
声.
圧倒.
王都.
もっと.
大きい.
胸.
固い.
「今日は」
ミナ.
私.
見る.
「馬車から降りる前に、少し休みますか」
昨日.
なら.
大丈夫.
言った.
今日.
「はい」
即.
答える.
リオ.
少し.
笑う.
「早い」
「学びました」
馬車.
宿.
裏.
静かな.
場所.
止まる.
私.
五分.
いや.
少し.
座る.
呼吸.
窓.
閉める.
毛布.
膝.
一.
二.
三.
今.
夕方.
宿場.
ミナ.
リオ.
王家.
護衛.
安全.
「行けます」
言う.
ミナ.
「本当に?」
私.
少し.
笑う.
「少し怖いですが」
「はい」
「歩けます」
「はい」
◇
宿.
入る.
今日は.
昨日.
より.
視線.
多い.
でも.
裏口.
静か.
王家.
配慮.
している.
私.
気づく.
「昨日のことが」
使者.
少し.
言う.
「宿場で噂になっております」
胸.
固い.
「私が?」
「はい」
「青い髪」
「それも」
使者.
少し.
言葉.
選ぶ.
「森で暮らしていた公爵令嬢が、王都へ向かっていると」
広がる.
早い.
噂.
昔.
怖い.
「王都へ着く前に」
私.
言う.
「皆、知るのでしょうか」
「すべてではありませんが」
「はい」
「貴族社会には、すでに」
胸.
痛い.
父様.
家.
貴族.
待つ.
見られる.
「そうですか」
使者.
「ご不快でしたら」
私.
すぐ.
首.
横.
「怖いです」
使者.
少し.
驚く.
でも.
私.
続ける.
「でも、隠しても」
一度.
息.
「王都へは行きます」
「はい」
「私が、森で暮らしていることも」
胸.
「隠しません」
使者.
静か.
頭.
下げる.
「承知しました」
私は.
少し.
自分.
驚く.
言えた.
◇
夜.
宿.
部屋.
昨日より.
少し.
小さい.
でも.
王家.
用意.
安全.
村.
毛布.
寝台.
かける.
花守り布.
机.
置く.
今日.
紙.
出す.
旅の記録.
書く.
朝.
宿を出る時.
フローラ・フォン・スプリングです.
と.
自分で名乗った.
怖かった.
でも.
言えた.
昼.
子どもに.
髪がきれい.
空みたい.
と言われた.
触っていいか.
聞かれた.
私は.
怖いので.
今日は触らないでほしい.
と.
言えた.
断っても.
子どもは.
怒らなかった.
見るだけにした.
私は.
続きを.
書く.
断ることは.
相手を傷つけることと.
同じではない.
相手が.
必ず怒るとも.
限らない.
私が.
境界を決めてよい.
その下.
午後.
眠くなった.
最初.
大丈夫.
と言った.
リオに見られ.
眠い.
と.
言い直した.
少し.
眠った.
夢で.
森がなくなった.
怖かった.
でも.
起きたら.
森はある.
と言ってもらった.
私は.
夢の中で.
帰る場所を.
失った.
でも.
現実では.
失っていない.
その下.
今日.
使者から.
私が王都へ向かっていることは.
すでに.
貴族たちへ.
広がっていると聞いた.
怖い.
とても.
でも.
私は.
森で暮らしていることを.
隠さない.
畑を耕していることも.
薬草を育てていることも.
村の皆と暮らしたいことも.
隠さない.
私は.
青の姫君と呼ばれていた.
化け物とも.
呼ばれた.
でも.
明日.
誰かに名前を聞かれたら.
また.
フローラ・フォン・スプリングです.
と.
言う.
それだけでは.
私の全部ではない.
でも.
私の名前.
私が使う.
私は.
ペン.
止める.
最後.
一行.
今日.
見られることから.
全部逃げなかった.
でも.
全部耐えたわけでもない.
窓を半分閉めた.
個室を選んだ.
触られるのは断った.
眠いと認めた.
少し休んだ.
それでも.
進んだ.
私は.
紙.
見つめる.
これ.
大事.
逃げない.
全部.
耐える.
ではない.
自分.
守りながら.
進む.
◇
夕食.
三人.
食べる.
今日は.
昨日より.
食べられる.
リオ.
「王都で噂になってるって」
「はい」
「嫌だな」
「はい」
「俺が言っても」
「はい」
「何か変わる?」
私.
少し.
考える.
「変わりません」
「だよな」
「でも」
私は.
少し.
笑う.
「嫌だと言ってくれる人がいるのは、嬉しいです」
リオ.
黙る.
耳.
少し.
赤い.
「別に」
ミナ.
笑う.
「王都では」
私.
言う.
「リオも見られます」
「俺?」
「村から来た同行者」
「うん」
「私と一緒なので」
「……嫌だな」
「今から?」
「人多いの嫌」
私.
少し.
驚く.
「リオも?」
「普通に嫌」
「そうだったのですか」
「俺、森のほうがいい」
私.
笑う.
「同じですね」
「うん」
ミナ.
「私は、人が多い場所も嫌いではありません」
私.
「違いますね」
「はい」
三人.
違う.
それで.
いい.
◇
夜.
寝台.
村.
毛布.
花守り布.
枕元.
私は.
目.
閉じる.
森.
遠い.
でも.
今日.
少し.
違う.
昨日.
森.
見えない.
こと.
怖い.
今日.
見えない.
まま.
一日.
過ごした.
それでも.
森.
ある.
記録.
続く.
オカエリ.
育つ.
キズナ.
大きく.
なる.
サム.
書く.
リーナ.
縫う.
エマ.
話す.
トト.
掘らない.
ニコ.
歌う.
ルル.
見る.
皆.
暮らす.
「おやすみなさい」
私は.
小さく.
言う.
「今日も、いってきますの途中です」
昨日.
同じ.
でも.
今日は.
一つ.
増えた.
「今日は」
少し.
笑う.
「自分の名前を、自分で言えました」
フローラ.
フォン.
スプリング.
公爵家.
青.
森.
畑.
全部.
同じ.
名前.
中.
入らない.
でも.
私.
名前.
使う.
「明日も」
一度.
息.
「一つずつ」
目.
閉じる.
王都.
近づく.
噂.
先.
行く.
視線.
増える.
怖さ.
増える.
でも.
私も.
一日ごと.
少し.
進む.
誰かに.
見られない.
ために.
生きるのではなく.
見られても.
私が.
私のままで.
いられるように.
自分で.
距離を.
決めながら.
言葉を.
選びながら.
私は.
王都へ.
続く道の.
二日目を.
静かに.
眠りへ.
渡していった.




