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『青の姫君の森暮らし 〜化け物と恐れられた公爵令嬢は、今日も畑を耕します〜』  作者: 伊佐波瑞樹


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76/101

第76話 青の姫君、いってきますの先へ馬車を進める


 朝。


 目を開ける前から。


 私は。


 今日が。


 いつもの朝ではないと。


 分かっていた。


 鳥の声。


 風。


 屋根。


 床。


 寝台。


 何も。


 変わっていない。


 でも。


 胸の中だけが。


 違う。


 目を開ける。


 天井。


 梁。


 見慣れた。


 森の家。


 私は。


 しばらく。


 動かなかった。


 今日。


 出発。


 王都。


 昨日まで。


 あと何日。


 数えた。


 四日。


 三日。


 二日。


 一日。


 そして。


 今日。


 もう。


 数える必要がない。


 私は。


 ゆっくり。


 息を吸う。


 吐く。


 胸。


 重い。


 でも。


 逃げたいだけではない。


 怖い。


 でも。


 決めた。


「朝です」


 私は。


 天井へ。


 言う。


「今日、行きます」


 声。


 思ったより。


 小さい。


 でも。


 聞こえた。


 自分へ。


 私は。


 右手を。


 胸へ。


 置く。


 心臓。


 速い。


「大丈夫ではありません」


 昨日。


 言った。


 今日も。


 同じ。


「でも、一人ではありません」


 ミナ。


 リオ。


 森。


 村。


 皆。


 そして。


 自分。


 私は。


 目を閉じる。


「おはようございます」


 少し。


 間。


「おはようございます、母様」


 胸。


 痛む。


 でも。


 今日は。


 逃げない。


「今日、王都へ行きます」


 その言葉。


 部屋へ。


 落ちる。


「会うかどうかは、まだ決めていません」


 変わらない。


「でも」


 私は。


 続ける。


「もし会うなら」


 胸。


 震える。


「今の母様へ会います」


 手紙。


 過去。


 私。


 記憶。


 全部。


 持つ。


 でも。


 会うなら。


 今。


「許すかどうかも、まだ決めません」


 それでいい。


「今日」


 一度。


 息。


「森へ、いってきますを言います」


 私は。


 布団を。


 めくる。


     ◇


 床。


 冷たい。


 いつも。


 同じ。


 足。


 下ろす。


 立つ。


 窓。


 開ける。


 朝。


 薄い。


 空。


 少し。


 白い。


 雲。


 低い。


 でも。


 雨。


 なし。


 風。


 弱い。


 森。


 濡れていない。


 土。


 夜露。


 少し。


 新しい柵。


 立っている。


 私は。


 外。


 長く。


 見る。


 今日。


 ここ。


 出る。


 明日の朝。


 この窓。


 開けない。


 でも。


 誰か。


 森。


 見る。


 畑。


 見る。


 私。


 戻る。


「おはようございます」


 外へ。


 言う。


 返事。


 鳥。


 一羽。


 鳴く。


 高い。


 短い。


 それだけ。


 私は。


 少し。


 笑う。


 顔。


 洗う。


 髪。


 梳く。


 一度。


 二度。


 三度。


 今日は。


 王都へ。


 着る。


 礼装。


 ではない。


 旅服。


 森。


 歩く。


 馬車。


 乗る。


 動きやすい。


 濃い。


 青灰色。


 簡素。


 でも。


 公爵令嬢として。


 見られても。


 失礼ではない。


 昨日。


 村の女性たちと。


 決めた。


 髪。


 編む。


 今日は。


 自分で。


 途中まで。


 やる。


 少し。


 うまく。


 いかない。


 後ろ。


 見えない。


 私は。


 手。


 止める。


「ミナに、お願いしましょう」


 以前なら。


 できない。


 恥。


 自分。


 全部。


 やる。


 でも。


 今日は。


 頼る。


 花守り布。


 取る。


 頭。


 かぶる。


 中。


 五つの言葉。


 森。


 道。


 二つの点。


 残る人。


 そして。


 まだ。


 縫われていない。


 私。


「行きます」


 布へ。


 言う。


     ◇


 外。


 畑。


 朝。


 最初。


 青豆一号。


「おはようございます」


 新葉。


 昨日。


 上。


 今日。


 少し。


 光。


 向く。


 虫。


 なし。


 折れ。


 なし。


 アオジロウ。


「おはようございます」


 茎。


 安定。


 葉。


 無事。


 ムラマル。


「おはようございます」


 白い。


 擦れ跡。


 残る。


 でも。


 元気。


 モリタン。


「おはようございます」


 葉。


 深い。


 緑。


 大きい。


 私。


 しゃがむ。


 長く。


 見る。


 でも。


 今日は。


 記録。


 しない。


 昨日。


 共同記録へ。


 移行。


 今日から。


 皆。


 書く。


 私は。


 最後の。


 確認。


 だけ。


 それで。


 いい。


 次。


 オカエリ。


 私は。


 小石。


 円。


 前。


 しゃがむ。


 芽。


 昨日より。


 上。


 曲がり。


 少し。


 減る。


 種皮。


 まだ。


 一部。


 残る。


 淡緑。


 小さい。


「おはようございます、オカエリ」


 声。


 震える。


「今日、行ってきます」


 涙。


 出る。


 早い。


 まだ。


 朝。


 でも。


 止めない。


「帰ってくるまで」


 私は。


 土。


 見る。


「育っていてください」


 言ったあと。


 少し。


 首を。


 横。


「違いますね」


 育つ。


 命令。


 できない。


「あなたの時間で、どうぞ」


 昨日まで。


 何度も。


 言った。


「枯れても」


 胸。


 痛む。


「それも、記録してください」


 皆へ。


 頼んだ。


「でも」


 私は。


 笑う。


「できれば、会いたいです」


 帰った時。


 大きく。


 なった。


 オカエリ。


 見たい。


 私は。


 小石。


 一つ。


 触れる。


 掘らない。


 芽。


 触れない。


 小石。


 冷たい。


「いってきます」


 言う。


 今日。


 初めて。


 畑へ。


 いってきます。


 胸。


 強く。


 痛む。


 でも。


 その言葉。


 終わりではない。


     ◇


 朝食。


 今日は。


 ミナたちが。


 来る前に。


 少し。


 食べる。


 パン。


 卵。


 豆。


 薬草茶。


 食べられる?


 喉。


 固い。


 でも。


 一口。


 二口。


 三口。


 昨日。


 言った。


 王都でも。


 食べる。


 今。


 まず。


 食べる。


「食べました」


 誰も。


 いない。


 でも。


 報告。


 する。


 少し。


 笑う。


 荷物。


 玄関。


 旅箱。


 一つ。


 小袋。


 一つ。


 毛布。


 王家。


 馬車。


 積む。


 礼装箱。


 別。


 昨日。


 確認。


 済み。


 私は。


 机。


 見る。


 日記。


 残す。


 花守り箱。


 残す。


 非常用の袋。


 残す。


 棚。


 器。


 残す。


 自分。


 持つ。


 少ない。


 でも。


 足りる。


 結界。


 気配。


 三つ。


 リオ。


 ミナ。


 ガルドさん。


 そして。


 さらに。


 遠く。


 人。


 多い。


 村。


 来ている。


 私は。


 胸。


 締まる。


 戸。


 開ける。


「おはようございます」


 ミナ。


「おはようございます」


 リオ。


「おはよう」


 ガルドさん。


「おはようございます」


 ミナ。


 私。


 髪。


 見る。


「途中ですね」


「はい」


「座ってください」


「お願いします」


 家。


 前。


 小さな椅子。


 私は.


 座る。


 ミナ。


 髪。


 まとめる。


 昨日。


 自分で。


 やった部分。


 少し。


 直す。


「痛いですか」


「いいえ」


「怖いですか」


 手。


 止まらない。


 でも。


 聞く。


 私は。


 すぐ。


「はい」


 答える。


「とても」


「はい」


「逃げたい気持ちもあります」


「はい」


「でも」


 私は。


 前。


 畑。


 見る。


「行きます」


「はい」


 ミナ。


 髪。


 結ぶ。


「戻るために」


「はい」


 リオ。


 横。


 荷物。


 見る。


 何も。


 言わない。


 でも。


 拳。


 少し。


 握る。


 ガルドさん。


 家。


 鍵。


「鍵を」


 私は。


 立つ。


 腰。


 小さい。


 鍵束。


 二つ。


 一つ。


 村長さん用。


 もう一つ。


 ガルドさん。


 私は。


 一つ。


 手渡す。


「お願いします」


「お預かりします」


「必要な時だけ」


「はい」


「日付。入った人。理由」


「はい」


「持ち出したものがあれば」


「記録します」


「ありがとうございます」


 鍵。


 手。


 離れる。


 胸。


 痛い。


 でも。


 自分で。


 渡した。


 それ。


 大事。


「村長さんの分は」


「村で」


「はい」


     ◇


 出発。


 まだ。


 少し。


 時間。


 王家の馬車。


 村。


 待っている。


 私は。


 家。


 戸。


 閉める前。


 中。


 見る。


 寝台。


 机。


 窓。


 暖炉。


 棚。


 いつも。


 でも。


 今日。


 違う。


「いってきます」


 家へ。


 言う。


 声。


 出る。


 少し。


 震える。


「戻ります」


 戸。


 閉める。


 鍵。


 かける。


 かちり。


 音。


 胸。


 刺さる。


 でも。


 鍵。


 ある。


 私。


 持つ。


 予備。


 預けた。


 終わりではない。


 私は。


 戸。


 手。


 置く。


 一度。


 離す。


「行きましょう」


 ミナ。


「はい」


     ◇


 森の道。


 村へ。


 今日。


 人。


 多い。


 家。


 畑。


 後ろ。


 少しずつ。


 遠く。


 でも。


 まだ.


 見える。


 私は。


 何度も。


 振り返る。


 リオ.


 気づく。


「見すぎ」


「はい」


「転ぶ」


「はい」


 でも.


 また.


 見る。


 リオ.


「帰りもある」


 短い.


 言葉.


 私は.


 前.


 戻す.


「はい」


 一歩.


 二歩.


 三歩.


 行く.


 四歩.


 話す.


 五歩.


 戻る.


 六歩.


 ただいま.


 七歩.


 家.


 今日は.


 いつも.


 少し.


 違う.


 エマたち.


 途中.


 待っている.


 子ども.


 全員.


「先生!」


 声.


 大きい.


 私は.


 立ち止まる.


 エマ.


 走る.


 でも.


 途中.


 止まる.


 今日は.


 走らない.


「おはようございます」


「おはよう!」


 トト.


 サム.


 ニコ.


 ルル.


 リーナ.


 皆.


 顔.


 少し.


 違う.


 笑っている.


 でも.


 目.


 赤い.


 エマ.


「先生、泣いた?」


「はい」


「もう?」


「はい」


「早い」


「そうですね」


 少し.


 笑う.


 リーナ.


 花守り布.


 見る.


 今日.


 私.


 かぶる.


「道」


 言う.


「はい」


「続き」


「帰ってから」


「うん」


 リーナ.


 笑う.


 少し.


「忘れない」


「はい」


 サム.


 板.


 持つ.


「今日の朝、キズナ記録した」


「もう?」


「先生来ない前」


「ありがとうございます」


「帰ったら見せる」


 その言葉.


 胸.


「はい」


 トト.


「オカエリも見る」


「お願いします」


「掘らない」


「お願いします」


「触らない」


「お願いします」


「水やりすぎない」


「お願いします」


「分かってる!」


 皆.


 笑う.


 私.


 涙.


 でも.


 笑う.


     ◇


 村.


 入口.


 今日は.


 見張り.


 二人.


 丸.


 合図.


 でも.


 そのあと.


 深く.


 頭.


 下げる.


「いってらっしゃいませ」


 最初.


 聞く.


 いってらっしゃい.


 胸.


 一気に.


 詰まる.


 私は.


 頭.


 下げる.


「いってきます」


 声.


 震える.


 でも.


 言えた.


 村.


 入る.


 広場.


 人.


 多い.


 本当に.


 多い.


 来られる人.


 皆.


 いる.


 パン屋.


 薬師.


 木工職人.


 狩人.


 農家.


 老人.


 若者.


 子ども.


 昨日.


 畑.


 手伝った人.


 見たこと.


 声.


 聞いたこと.


 ある人.


 名前.


 覚えている.


 覚えていない.


 でも.


 顔.


 ある.


 皆.


 待つ.


 広場.


 端.


 王家の馬車.


 濃い.


 紺.


 装飾.


 控えめ.


 でも.


 作り.


 立派.


 馬.


 二頭.


 王家.


 護衛.


 四人.


 使者.


 一人.


 御者.


 そして.


 荷物用.


 小馬車.


 もう一台.


 私.


 一瞬.


 固まる.


 王都.


 来た.


 現実.


 使者.


 前.


 来る.


「フローラ・フォン・スプリング様」


「はい」


「お迎えに上がりました」


 声.


 丁寧.


 昨日.


 書状.


 受け取った.


 使者.


 同じ.


 「お支度は」


 私は.


 旅箱.


 見る.


 ミナ.


 リオ.


 荷物.


「整っています」


「同行者二名」


「ミナと、リオです」


 二人.


 一歩.


 前.


 頭.


 下げる.


 使者.


 確認.


「承知しております」


 リオ.


 小さい.


「もう名前知ってる」


 ミナ.


「書類を送りましたから」


「あ」


 私.


 少し.


 笑う.


 緊張.


 少し.


 ほどける.


     ◇


 荷物.


 積む.


 旅箱.


 礼装箱.


 村.


 古い毛布.


 薬.


 食料.


 必要.


 だけ.


 皆.


 見守る.


 でも.


 誰も.


 勝手に.


 追加.


 しない.


 以前なら.


 もっと.


 持っていけ.


 これも.


 あれも.


 でも.


 選んだ.


 尊重.


 してくれる.


 井戸番の老人.


 大鍋.


 持っていない.


 私.


 見る.


「持ってきませんでしたね」


「帰ってきたら使うんだろ」


「はい」


「忘れるな」


「忘れません」


「肉多め」


「豆のスープです」


「肉入り豆スープ」


「少しなら」


「よし」


 皆.


 笑う.


 私.


 胸.


 温かい.


     ◇


 村長さん.


 家.


 前.


 来る.


 鍵.


 私.


 予備.


 手渡す.


「お願いします」


「預かる」


「必要な時だけ」


「うん」


「入った記録」


「うん」


「母様の手紙」


「開けない」


「私が王都から」


「頼んでも、開けない」


「はい」


「帰ってくるまで」


「はい」


 私.


 目.


 熱い.


「ありがとうございます」


 村長さん.


 少し.


 黙る.


 そして.


「フローラ」


「はい」


「向こうで」


 一度.


 言葉.


 探す.


「答えられないことまで、答えようとしなくていい」


「はい」


「王だから」


「はい」


「公爵だから」


「はい」


「母親だから」


「はい」


「相手の立場で、自分の答えを変えなくていい」


 胸.


 強く.


 鳴る.


「はい」


「分からないなら」


「分からない」


「待ってほしいなら」


「待ってください」


「嫌なら」


 喉.


 詰まる.


 でも.


「嫌です」


 言う.


 村長さん.


 笑う.


「よし」


 私.


 涙.


 一滴.


     ◇


 パン屋の女性.


 前.


 来る.


 手.


 布.


 包み.


「これは」


「道中」


「もう」


「選んだ分」


 中.


 固めのパン.


 二つ.


 干した果物.


 少し.


「食べる」


「はい」


「絶対」


「努力」


「違う」


 周囲.


 笑う.


「食べます」


「よし」


 女性.


 私.


 顔.


 見る.


 目.


 赤い.


「帰ってきたら」


「はい」


「柔らかい甘いパン」


「はい」


「忘れたら怒る」


「私が?」


「あんたが」


「怒っていい?」


「いいよ」


 私.


 笑う.


「では、怒ります」


「帰ってこなかったら」


 女性.


 言いかける.


 止まる.


 目.


 逸らす.


 私.


 胸.


 痛い.


「帰ります」


 言う.


 女性.


 見る.


「うん」


     ◇


 薬師.


 小さい.


 袋.


 確認.


「これは酔い止め」


「はい」


「これは腹」


「はい」


「熱」


「はい」


「眠れない」


「はい」


「不安」


 私.


 見る.


「不安?」


「薬草茶」


「あ」


「薬ではない」


「はい」


「飲め」


「はい」


「王宮の医者にも頼れ」


「はい」


「意地張るな」


「はい」


 リオ.


 横.


「それ俺にも言って」


「お前は腹壊しても黙りそう」


「壊さない」


「ほら」


 笑い.


     ◇


 子どもたち.


 集まる.


 でも.


 最初.


 誰も.


 何も.


 言わない.


 エマ.


 唇.


 噛む.


 トト.


 地面.


 見る.


 サム.


 板.


 持つ.


 でも.


 書かない.


 ニコ.


 歌わない.


 ルル.


 私.


 見る.


 リーナ.


 布.


 握る.


 私.


 しゃがむ.


 目線.


 同じ.


「皆さん」


 声.


 震える.


「いってきます」


 エマ.


 すぐ.


 泣く.


「……いってらっしゃい」


 声.


 崩れる.


 私.


 涙.


 出る.


 トト.


「帰ってこいよ」


 周囲.


 少し.


 空気.


 固い.


 でも.


 私は.


 笑う.


「はい」


「絶対」


「はい」


 サム.


「記録」


 声.


 震える.


「全部残す」


「全部でなくていいです」


「必要な分」


「はい」


「でも」


 板.


 胸.


「先生が帰ってから読めるようにする」


「お願いします」


 ニコ.


「歌」


「はい」


「新しいの作る」


「はい」


「帰ってきたら歌う」


「楽しみにしています」


 ルル.


 小さい.


 声.


「キズナ」


「はい」


「大きくなる」


「はい」


「皺、残るかも」


「はい」


「見る?」


 私.


 涙.


「見ます」


 リーナ.


 花守り布.


 触る.


「道」


「はい」


「帰ったら」


「続き」


「うん」


 私.


 両手.


 膝.


 置く.


 でも.


 もう.


 涙.


 止まらない.


「皆さん」


 一度.


 声.


 詰まる.


「私がいない間」


 子ども.


 見る.


「楽しく過ごしてください」


 エマ.


 泣きながら.


「先生いないのに?」


 胸.


 痛む.


「はい」


「嫌」


「分かります」


「楽しくないかも」


「それでもいいです」


 私は.


 続ける.


「でも」


 息.


 吸う.


「私を待つために、全部止めないでください」


 子どもたち.


 静か.


「畑を見て」


「はい」


「遊んで」


「うん」


「喧嘩して」


 トト.


「する」


 笑い.


 少し.


「歌って」


 ニコ.


「うん」


「縫って」


 リーナ.


「うん」


「記録して」


 サム.


「はい」


「そして」


 私.


 笑う.


「帰ってきたら、全部教えてください」


 エマ.


 涙.


 拭く.


「いっぱい?」


「はい」


「全部?」


「覚えている分で」


「いっぱい話す」


「お願いします」


     ◇


 使者.


 時間.


 気にしている.


 でも.


 急かさない.


 王家の馬車.


 待つ.


 馬.


 足.


 地面.


 掻く.


 出発.


 もう.


 すぐ.


 私は.


 広場.


 皆.


 見る.


 顔.


 顔.


 顔.


 以前.


 皆.


 顔のない.


 人々.


 でも.


 今.


 全部.


 誰か.


 パン.


 焼く人.


 薬.


 作る人.


 木.


 削る人.


 見張る人.


 歌う子.


 記録する子.


 泣く子.


 笑う人.


 私.


 知っている.


 全部.


 名前.


 知らなくても.


 顔.


 ある.


 私.


 胸.


 手.


 置く.


「皆さん」


 声.


 広場.


 届く.


 静か.


「私は」


 一度.


 息.


「王都へ行ってきます」


 涙.


 でも.


 言う.


「公爵家へ帰るためではありません」


 皆.


 静か.


「私が、ここで暮らしたいと」


 声.


 少し.


 強く.


「自分の言葉で伝えるために、行ってきます」


 風.


 吹く.


 花守り布.


 端.


 揺れる.


「分からないことは、分からないと言います」


 村長さん.


 頷く.


「嫌なことは、嫌だと言います」


 パン屋の女性.


 目.


 拭く.


「怖くなったら、少し待ってくださいと言います」


 ミナ.


 静か.


「大丈夫ではない時に」


 リオ.


 見る.


「大丈夫と言ってしまったら」


 一度.


 笑う.


「疑ってもらいます」


 リオ.


「任せろ」


 周囲.


 少し.


 笑い.


 私.


 続ける.


「そして」


 広場.


 畑.


 森.


 空.


 全部.


 見る.


「必ず、戻ります」


 声.


 震える.


 でも.


 聞こえる.


「ただいま、と言いに」


 長い.


 沈黙.


 そのあと.


 村長さん.


 一歩.


 前.


「いってらっしゃい」


 言う.


 パン屋の女性.


「いってらっしゃい」


 薬師.


「いってらっしゃい」


 井戸番の老人.


「いってこい」


 子ども.


「いってらっしゃい!」


 声.


 増える.


「いってらっしゃい!」


「気をつけて!」


「帰ってこいよ!」


「王様にちゃんと言えよ!」


「食べろよ!」


「寝ろ!」


「泣いてもいいから!」


「戻ってきて!」


 声.


 声.


 声.


 重なる.


 私は.


 もう.


 泣く.


 でも.


 笑う.


「いってきます!」


 初めて.


 大きく.


 言う.


 森.


 村.


 全部.


 返る.


     ◇


 馬車.


 階段.


 低い.


 でも.


 足.


 重い.


 私は.


 一段.


 上がる.


 止まる.


 振り返る.


 皆.


 いる.


 エマ.


 手.


 振る.


 トト.


 大きく.


 振る.


 サム.


 板.


 胸.


 リーナ.


 布.


 ミナ.


 先に.


 馬車.


 中.


 リオ.


 私.


 後ろ.


 待つ.


「乗れる?」


 小さい.


 声.


「はい」


 でも.


 足.


 動かない.


 リオ.


 手.


 出す.


「使う?」


 私は.


 見る.


 以前.


 村長さん.


 使者.


 手.


 借りた.


 自分.


 立つ.


 でも.


 支え.


 私は.


 手.


 取る.


「お願いします」


 リオ.


 強く.


 引かない.


 少し.


 支える.


 私は.


 馬車.


 乗る.


 中.


 座席.


 柔らかい.


 王家.


 作り.


 良い.


 でも.


 知らない.


 匂い.


 革.


 木.


 油.


 村.


 毛布.


 膝.


 置く.


 煙.


 草.


 匂い.


 少し.


 安心.


 ミナ.


 隣.


 リオ.


 向かい.


 窓.


 開いている.


 外.


 皆.


 見える.


 使者.


 合図.


 御者.


 手綱.


 馬.


 動く.


 車輪.


 ぎし.


 少し.


 音.


 馬車.


 ゆっくり.


 前.


 私は.


 窓.


 手.


 置く.


 村.


 動く.


 いや.


 馬車.


 動く.


 皆.


 遠く.


「いってらっしゃい!」


 声.


 まだ.


 聞こえる.


「いってきます!」


 私.


 また.


 言う.


 馬車.


 村.


 出る.


 見張り.


 丸.


 そして.


 深く.


 頭.


 下げる.


「いってらっしゃいませ!」


「いってきます!」


 森.


 道.


 入る.


     ◇


 最初.


 馬車.


 遅い.


 村.


 まだ.


 見える.


 屋根.


 煙.


 人.


 小さい.


 手.


 振る.


 私は.


 ずっと.


 見る.


 リオ.


 何も.


 言わない.


 ミナ.


 何も.


 言わない.


 村.


 曲がり.


 見えなくなる.


 最後.


 エマ.


 赤い.


 何か.


 振る.


 布?


 見えない.


 消える.


 私は.


 息.


 止まる.


 村.


 見えない.


 胸.


 一気に.


 痛い.


「……見えなくなりました」


 声.


 崩れる.


 ミナ.


「はい」


「本当に」


 涙.


「出ました」


「はい」


 私.


 両手.


 毛布.


 握る.


「戻りたいです」


 正直.


 言う.


 リオ.


「戻る?」


 聞く.


 責めない.


 確認.


 私は.


 目.


 閉じる.


 胸.


 森.


 村.


 でも.


 王都.


 言葉.


 五つ.


「いいえ」


 答える.


「進みます」


 リオ.


「うん」


 それだけ.


 馬車.


 森.


 道.


 進む.


     ◇


 家.


 まだ.


 見えるか.


 窓.


 反対.


 木.


 多い.


 でも.


 道.


 知る.


 春待ちの根元.


 近い.


 私は.


 御者.


 止めて.


 言いたい.


 最後.


 ではない.


 でも.


 寄りたい.


 でも.


 昨日.


 行った.


 いってきます.


 言った.


 だから.


 止めない.


 馬車.


 その近く.


 通る.


 白樹.


 一瞬.


 見える.


 三つ岩.


 私は.


 窓.


 手.


「いってきます」


 小さい.


 言う.


 通り過ぎる.


 花.


 見えない.


 でも.


 場所.


 ある.


     ◇


 森の外縁.


 近づく.


 木.


 少し.


 減る.


 空.


 広い.


 私は.


 身体.


 固くなる.


 森.


 出る.


 最初.


 来た時.


 私は.


 王都.


 背.


 逃げた.


 森.


 入った.


 今日.


 逆.


 森.


 背.


 外.


 出る.


 同じ道.


 ではない.


 でも.


 境界.


 怖い.


 ガルドさん.


 見送り.


 ここまで.


 馬.


 横.


 走る.


 外縁.


 止まる.


 馬車.


 少し.


 止まる.


 私.


 降りない.


 窓.


 開く.


 ガルドさん.


 馬上.


 頭.


 下げる.


「ここまでです」


「はい」


 胸.


 痛む.


 村側.


 護衛.


 残る.


 王家.


 護衛.


 引き継ぐ.


「森を」


 私.


 言う.


「お願いします」


「お任せください」


「畑も」


「はい」


「家も」


「はい」


「村も」


「はい」


 私.


 少し.


 笑う.


「全部ですね」


「全部です」


 ガルドさん.


 僅か.


 笑う.


「フローラ様」


「はい」


「王都で、危険を感じたら」


「はい」


「王家の護衛だけでなく」


「はい」


「リオとミナへ」


「はい」


「必ず言ってください」


「はい」


「大丈夫です、で終わらせない」


 リオ.


 横.


「俺も言った」


「はい」


 私.


 涙.


「分かりました」


 ガルドさん.


 さらに.


「そして」


 一度.


 間.


「帰ってきてください」


 声.


 低い.


 でも.


 強い.


 私は.


 頷く.


「はい」


「必ず」


「はい」


「いってらっしゃいませ」


 私.


 涙.


 笑う.


「いってきます」


 馬車.


 動く.


 ガルドさん.


 後ろ.


 小さく.


 なる.


 森.


 外縁.


 越える.


     ◇


 空.


 広い.


 本当に.


 広い.


 森.


 上.


 見ていた.


 空.


 枝.


 隙間.


 でも.


 今.


 全部.


 見える.


 青.


 薄い.


 白い雲.


 遠く.


 丘.


 道.


 畑.


 知らない.


 村.


 私は.


 胸.


 苦しくなる.


 空.


 広い.


 国王陛下.


 幼い頃.


 言った.


 空の色を持つ者は.


 空の広さを知るのだろうか.


 私.


 今.


 空.


 見る.


「広いです」


 呟く.


 ミナ.


「空が?」


「はい」


「森より」


「はい」


 リオ.


 窓.


 見る.


「普通だろ」


 私.


 少し.


 笑う.


「私には、久しぶりです」


 森.


 木.


 守る.


 でも.


 隠す.


 空.


 全部.


 見えない.


 今.


 空.


 広い.


 怖い.


 でも.


 少し.


 きれい.


「国王陛下へ」


 私は.


 小さく.


「答えられるかもしれません」


 ミナ.


「何を」


「空の広さを知るか」


 リオ.


「何て」


 私は.


 少し.


 考える.


「森の中から見る空と、外から見る空は違います」


「うん」


「でも」


 胸.


 少し.


 温かい.


「どちらも、空です」


 リオ.


「難しい」


「はい」


 ミナ.


 笑う.


     ◇


 最初.


 休憩.


 昼前.


 小川.


 近く.


 王家.


 休憩場所.


 決めている.


 馬.


 水.


 護衛.


 食事.


 私.


 馬車.


 降りる.


 足.


 少し.


 震える.


 地面.


 森.


 外.


 土.


 同じ.


 でも.


 匂い.


 違う.


 草.


 乾く.


 風.


 広い.


 人.


 通る.


 街道.


 遠く.


 商人.


 荷車.


 私.


 反射.


 身体.


 固い.


 視線.


 青い髪.


 見られる.


 花守り布.


 かぶる.


 でも.


 髪.


 一部.


 見える.


 商人.


 通る.


 見る.


 少し.


 驚く.


 でも.


 行く.


 化け物.


 言わない.


 何も.


 私は.


 息.


 吐く.


 リオ.


「見てた」


「はい」


「気になる?」


「はい」


「でも何も言ってない」


「はい」


「なら食べろ」


 いきなり.


「なぜ」


「今、大丈夫って言いそうな顔」


 私.


 止まる.


 ミナ.


 笑う.


「正しいです」


 私.


 少し.


 不満.


「まだ何も」


「食欲は?」


 ミナ.


「少し」


「では、少し食べましょう」


 村.


 パン.


 包み.


 開く.


 固い.


 パン.


 干した果物.


 私は.


 一口.


 噛む.


 村.


 匂い.


 少し.


 する.


 涙.


 出そう.


「おいしいです」


 言う.


 リオ.


「固い」


「道中用です」


「顎痛い」


「鍛えられます」


 ミナ.


 少し.


 笑う.


 緊張.


 少し.


 減る.


     ◇


 休憩.


 後.


 馬車.


 再び.


 進む.


 私は.


 花守り布.


 中.


 五つの言葉.


 確認.


 紙.


 取り出す.


 一.


 森で暮らしたい.


 二.


 住む場所は私も決める.


 三.


 今は婚姻を望まない.


 四.


 公爵家をどうするかは、まだ分からない.


 五.


 分からないことを、今すぐ決めたことにしない.


 読む.


 胸.


 落ち着く.


 リオ.


「読むの?」


「はい」


「覚えた?」


「覚えています」


「じゃあ何で」


「戻るためです」


「紙に?」


「はい」


 ミナ.


「言葉へ戻る」


「はい」


 私は.


 紙.


 折る.


 布.


 戻す.


     ◇


 午後.


 道.


 長い.


 森.


 少しずつ.


 遠い.


 丘.


 畑.


 村.


 橋.


 川.


 知らない.


 景色.


 私.


 窓.


 見る.


 時々.


 青い髪.


 見られる.


 子ども.


 指.


 差す.


 母親.


 手.


 下げる.


 昔.


 胸.


 刺さる.


 でも.


 化け物.


 聞こえない.


 一度.


 小さい.


 村.


 通る.


 人.


 王家の馬車.


 見る.


 私.


 見えない.


 でも.


 緊張.


 強い.


「王都は」


 私.


 突然.


 言う.


「もっと、人が多いですね」


 ミナ.


「はい」


「もっと、見られます」


「はい」


「怖いです」


「はい」


「でも」


 私は.


 窓.


 外.


 見る.


「今、言えました」


 ミナ.


「はい」


 リオ.


「何が」


「怖いです、と」


「うん」


「昔なら」


 声.


 少し.


 震える.


「大丈夫です、と」


 リオ.


「言ってた」


「はい」


「今も言う」


「はい」


「だから俺いる」


 胸.


 熱い.


「はい」


     ◇


 夕方.


 最初の宿場.


 王家.


 予約.


 宿.


 大きい.


 でも.


 王都ほど.


 豪華.


 ではない.


 私.


 馬車.


 降りる.


 足.


 疲れ.


 身体.


 固い.


 宿.


 人.


 多い.


 主人.


 深く.


 頭.


 下げる.


「フローラ・フォン・スプリング様」


 名前.


 家名.


 胸.


 固く.


 なる.


 でも.


 逃げない.


「はい」


「お部屋を、ご用意しております」


「ありがとうございます」


 言えた.


 周囲.


 客.


 見る.


 青い髪.


 少し.


 囁き.


 聞こえる.


「青……」


「公爵家?」


「森へ行った……」


 胸.


 冷える.


 足.


 止まりそう.


 リオ.


 横.


 少し.


 前.


 出そう.


 私は.


 手.


 小さく.


 上げる.


 止める.


 まだ.


 大丈夫.


 いや.


「少し、怖いです」


 ミナへ.


 言う.


「はい」


「でも、歩けます」


「はい」


 リオ.


 顔.


 怒り.


 出る.


 私.


 見る.


「大丈夫ではありません」


 先に.


 言う.


 リオ.


 一瞬.


 目.


 見開く.


「でも」


 私は.


 少し.


 笑う.


「歩けます」


 リオ.


 拳.


 緩む.


「分かった」


     ◇


 部屋.


 王家.


 用意.


 三人.


 別室.


 でも.


 近い.


 私.


 一人.


 部屋.


 広い.


 寝台.


 机.


 窓.


 森の家.


 より.


 大きい.


 でも.


 知らない.


 私は.


 入る.


 扉.


 閉まる.


 静か.


 胸.


 一気に.


 苦しい.


 家.


 違う.


 匂い.


 違う.


 音.


 違う.


 私は.


 荷物.


 毛布.


 出す.


 村.


 古い.


 毛布.


 寝台.


 かける.


 煙.


 草.


 匂い.


 少し.


 泣く.


「森の匂いです」


 言う.


 胸.


 少し.


 落ち着く.


 戸.


 叩く.


「フローラ様」


 ミナ.


「はい」


「夕食ですが」


「少し待ってください」


 言えた.


 一瞬.


 自分で.


 驚く.


 待ってください.


 使えた.


「はい」


 ミナ.


 すぐ.


 答える.


「準備できたら、お呼びください」


「はい」


 足音.


 離れる.


 私は.


 椅子.


 座る.


 胸.


 手.


「言えました」


 誰も.


 いない.


「少し待ってください、と」


 涙.


 出る.


 でも.


 少し.


 嬉しい.


     ◇


 夕食.


 三人.


 一緒.


 別室.


 王家.


 用意.


 宿の食事.


 肉.


 野菜.


 パン.


 スープ.


 森.


 より.


 味.


 濃い.


 私は.


 一口.


 少し.


 驚く.


 リオ.


「濃い」


「はい」


「村の薄いスープ」


「帰ってからです」


「もう帰りの飯考えてる」


「はい」


 ミナ.


 笑う.


「よいことです」


 私.


 食べる.


 食欲.


 少ない.


 でも.


 半分.


 食べる.


 リオ.


 見る.


「もう少し」


「お腹が」


「無理?」


 私は.


 少し.


 考える.


「あと三口」


「数える?」


「はい」


 三口.


 食べる.


 終わり.


「食べました」


「うん」


 私.


 笑う.


     ◇


 夜.


 宿.


 部屋.


 一人.


 窓.


 外.


 街道.


 灯り.


 森.


 見えない.


 初めて.


 今日.


 完全に.


 見えない.


 私は.


 胸.


 痛い.


 花守り布.


 膝.


 広げる.


 道.


 二つの点.


 森.


 たくさん.


 点.


 私.


 まだ.


 縫っていない.


 今.


 ここ.


 道.


 途中.


 リーナ.


 言った.


 動くから.


 その通り.


 私は.


 日記.


 持ってきていない.


 日記.


 森.


 残した.


 だから.


 今日.


 書けない.


 一瞬.


 不安.


 今日.


 記録.


 どうする.


 でも.


 旅用.


 小さい.


 紙.


 ある.


 私は.


 それ.


 出す.


「今日の記録」


 書く.


 森の家を出た.


 いってきます.


 と言った.


 村で.


 皆から.


 いってらっしゃい.


 と言われた.


 馬車へ.


 乗った.


 村が見えなくなった時.


 戻りたいと思った.


 でも.


 進むと答えた.


 森の外へ出た.


 空が.


 広かった.


 人に見られて.


 怖かった.


 大丈夫ではない.


 と言えた.


 宿で.


 少し待ってください.


 と言えた.


 夕食.


 全部ではない.


 でも.


 食べた.


 私は.


 筆.


 止める.


 その下.


 今日.


 私は.


 森から離れた.


 でも.


 森を捨てていない.


 戻る場所を持ったまま.


 外へ出た.


 書く.


 そして.


 最後.


 明日も.


 進む.


 王都へ.


 でも.


 私の答えは.


 王都へ近づくほど.


 王都のものになるのではない.


 森で決めた.


 五つの言葉を.


 持っていく.


 私は.


 紙.


 折る.


 五つの言葉.


 一緒.


 花守り布.


 入れる.


     ◇


 寝台.


 村の毛布.


 かける.


 匂い.


 少し.


 落ち着く.


 でも.


 眠れない.


 外.


 馬.


 足.


 人.


 声.


 知らない.


 森.


 鳥.


 小川.


 ない.


 私は.


 目.


 閉じる.


 青豆一号.


 想像.


 アオジロウ.


 ムラマル.


 モリタン.


 オカエリ.


 キズナ.


 春待ち.


 村.


 皆.


 今頃.


 夕食.


 終わった.


 子ども.


 寝る.


 エマ.


 今日.


 泣いた.


 サム.


 記録.


 リーナ.


 布.


 続きを.


 まだ.


 縫わない.


 私.


 胸.


 痛い.


「おやすみなさい」


 小さく.


 言う.


 森.


 遠い.


 でも.


 言う.


「今日は」


 声.


 少し.


 震える.


「ただいま、は言えません」


 涙.


 一滴.


「でも」


 毛布.


 握る.


「いってきます、の途中です」


 そう.


 今日.


 終わり.


 ではない.


 いってきます.


 まだ.


 続いている.


 王都へ.


 行く.


 話す.


 戻る.


 全部.


 いってきます.


 の中.


「まだ、途中です」


 私は.


 目.


 閉じる.


 その言葉.


 少し.


 安心.


 今日.


 森を出た.


 でも.


 帰る道を.


 失っていない.


 むしろ.


 初めて.


 帰る場所を.


 自分で決めたまま.


 外へ出た.


 馬車は.


 もう.


 森から.


 遠い.


 それでも.


 私の中には.


 小さな.


 曲がった柵と.


 芽を出したばかりの.


 オカエリと.


 皺を残したまま.


 大きくなるキズナと.


 さようならを言わなかった.


 たくさんの声が.


 残っている.


 いってらっしゃい.


 その言葉を.


 胸へ抱いたまま.


 私は.


 王都へ向かう.


 最初の夜を.


 ゆっくり.


 眠りへ.


 渡していった.

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