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『青の姫君の森暮らし 〜化け物と恐れられた公爵令嬢は、今日も畑を耕します〜』  作者: 伊佐波瑞樹


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75/101

第75話 青の姫君、さようならではなくいってきますと言う



 翌朝。


 私は。


 いつもより。


 少し早く。


 目を覚ました。


 鳥の声は。


 まだ。


 少ない。


 森全体が。


 夜から朝へ。


 ゆっくり。


 身体の向きを変えているような。


 そんな時間。


 窓の外。


 黒に近かった木々が。


 少しずつ。


 灰色へ。


 そして。


 薄い緑へ。


 戻っていく。


 私は。


 寝台の上。


 目を開けたまま。


 長い時間。


 天井を見ていた。


 今日。


 出発前日。


 明日の朝。


 私は。


 森を出る。


 王都へ。


 行く。


 公爵家へ。


 帰るためではない。


 ここへ。


 戻るため。


 その言葉。


 何度も。


 何度も。


 自分へ。


 言ってきた。


 でも。


 今日。


 最後。


 ではない。


 出発前。


 最後の一日。


 その言葉を。


 昨夜。


 使いそうになって。


 やめた。


 最後。


 ではない。


 帰ってくる。


 なら。


 今日は。


 終わりの日ではない。


 今日。


 見た畑も。


 村も。


 子どもたちも。


 私の家も。


 続く。


 私が。


 一度。


 離れるだけ。


 でも。


 身体は。


 そんなに。


 簡単には。


 納得してくれない。


 胸。


 重い。


 喉。


 少し。


 狭い。


 涙。


 まだ。


 出ていない。


 でも。


 奥。


 ある。


 私は。


 右手。


 上げる。


 指。


 一つ。


「一日」


 声。


 小さい。


 明日。


 出発。


 今日。


 一日。


 何をする。


 決めている。


 畑を見る。


 自分で。


 昨日。


 一日。


 任せた。


 今日は。


 自分で見る。


 村へ行く。


 キズナを見る。


 皆と。


 食べる。


 荷物。


 最終確認。


 礼装。


 確認。


 母様の手紙。


 村長さんへ。


 改めて。


 預ける。


 そして。


 いってきます。


 言う。


 でも。


 一度に。


 全部。


 しない。


「朝です」


 私は。


 天井へ。


 言う。


「まず、起きます」


 少し。


 笑う。


 当たり前。


 でも。


 大事。


 私は。


 布団を。


 めくる。


 床。


 冷たい。


 足。


 下ろす。


 立つ。


 窓。


 開ける。


 朝の。


 湿った。


 冷たい。


 空気。


 顔。


 触れる。


 土。


 木。


 草。


 少し。


 煙。


 村。


 遠く。


 朝食。


 火。


 匂い。


「おはようございます」


 私は。


 森へ。


 言う。


 そして。


「おはようございます、母様」


 少し。


 間。


「明日、王都へ行きます」


 胸。


 痛む。


「会うかどうかは、まだ決めていません」


 昨日。


 今日。


 変わらない。


「でも」


 一度。


 目を閉じる。


「もし会っても」


 声。


 少し。


 震える。


「私は、手紙の続きを読んだから会うのではありません」


 母様。


 今。


 目の前に。


 いる。


 その人へ。


 会う。


 手紙。


 別。


「許すためでもありません」


 言える。


「会ってもよいと思ったら、会います」


 それだけ。


「今日は、手紙へは行きません」


 村長さんの家。


 引き出し。


 灰色。


 ある。


 でも。


 今日は。


 開けない。


 触れない。


 預ける。


 それだけ。


「帰ってから」


 胸。


 少し。


 温かい。


「続きを読みます」


 私は。


 窓を。


 開けたまま。


 顔を洗う。


 髪。


 梳く。


 一度。


 二度。


 三度。


 鏡。


 空色。


 母様。


 同じ。


 でも。


 私。


 今。


 森。


 明日。


 王都。


 そして。


 戻る。


 花守り布。


 机。


 昨日。


 置いた。


 私は。


 両手で。


 持つ。


 三つの芽。


 途中の花。


 開いた花。


 閉じ始めた花。


 少し立ったキズナ。


 皺のある葉。


 赤い線。


 途中までの道。


 二つの点。


 ミナ。


 リオ。


 中。


 五つの言葉。


 今日は。


 かぶる。


「今日は、一緒に行きましょう」


 布。


 頭。


 かぶる。


 少し。


 安心。


 私は。


 外へ出た。


     ◇


 朝。


 畑。


 夜露。


 薄い。


 空。


 雲。


 少し。


 でも。


 雨。


 なし。


 風。


 穏やか。


 新しい柵。


 昨日と。


 同じように。


 少し。


 曲がっている。


 私は。


 まず。


 そこへ。


 手。


 触れる。


 ざら。


 濡れ。


 少し。


 木。


 冷たい。


「おはようございます」


 柵。


 返事。


 ない。


 でも。


 今日。


 言いたい。


 青豆一号。


 新葉。


 昨日。


 村の記録。


 角度。


 ほぼ。


 同じ。


 今日。


 自分の目。


 確認。


 少し。


 上。


 光。


 受ける。


 虫。


 なし。


 折れ。


 なし。


「おはようございます」


 アオジロウ。


 茎。


 安定。


 葉。


 問題なし。


 ムラマル。


 白い擦れ跡。


 残る。


 でも。


 広がっていない。


 乾燥草。


 泥跳ね。


 防いだ。


 モリタン。


 本葉。


 大きい。


 最初。


 開く。


 待っていた頃。


 思い出す。


 今。


 もう。


 葉として。


 当たり前のように。


 そこ。


 ある。


 私は。


 しゃがむ。


「おはようございます、モリタン」


 指。


 触れない。


 でも。


 近く。


 見る。


 葉脈。


 濃い。


 色。


 深い。


 厚み。


 増えた。


 昨日。


 私は。


 見なかった。


 でも。


 育った。


 今日。


 見た。


 でも。


 育つのは。


 私が。


 見たからではない。


 そのこと。


 もう。


 分かる。


「昨日、ありがとうございました」


 誰へ。


 モリタン。


 村。


 自分。


 全部。


 次。


 オカエリ。


 小石。


 円。


 中央。


 昨日。


 二ミリ。


 今日。


 私は。


 息を止める。


 芽。


 出ている。


 はっきり。


 淡い緑。


 小さな。


 曲がった首。


 土。


 押し上げる。


 まだ。


 完全に。


 立っていない。


 先端。


 種皮?


 少し。


 茶色。


 残っている。


「……おはようございます」


 声。


 震える。


「オカエリ」


 仮名。


 でも。


 もう。


 名前。


 呼ぶ。


 昨日。


 私が。


 見ていない時。


 出た。


 今日。


 もう少し。


 大きい。


 私。


 明日。


 出る。


 戻る頃。


 どれくらい。


 大きい。


 分からない。


「見られません」


 言う。


 胸。


 痛む。


 でも。


「見てもらいます」


 村。


 子ども。


 皆。


「そして」


 私は。


 少し。


 笑う。


「帰ってから、見ます」


 記録板。


 開く。


 青豆一号。


 古い葉離脱後三十一日目。


 新葉。


 葉柄角度。


 前日比微増。


 虫害・折損なし。


 アオジロウ。


 茎・葉安定。


 追加処置不要。


 ムラマル。


 葉端擦過跡。


 変化なし。


 周囲変色なし。


 モリタン。


 本葉完全展開後八日目。


 葉色良好。


 葉面厚み増加。


 葉脈明瞭。


 三芽。


 状態良好。


 赤色木の実。


 仮称オカエリ。


 播種後五日目。


 発芽二日目。


 地表露出。


 前日比増加。


 淡緑色芽。


 湾曲状態。


 種皮残存の可能性。


 未接触。


 土壌水分適正。


 追加処置不要。


 私は。


 一度。


 筆。


 止める。


 明日から。


 自分。


 書かない。


 誰か。


 続き。


 書く。


 その下。


 観察者。


 明朝。


 王都へ向け出発予定。


 本日以降。


 本人帰還まで。


 村の共同記録へ移行。


 書く。


 胸。


 重い。


 でも。


 さらに。


 書く。


 観察は中断ではない。


 観察者が変わる。


 本人帰還後。


 記録を受け取り。


 継続する。


 書き終える。


 私は。


 板。


 閉じない。


 もう一行。


 必要。


 何。


 分からない。


 でも。


 手。


 動く。


 観察者。


 今日。


 全部に。


 おはようを言えた。


 私は。


 少し。


 笑う。


 それで。


 いい。


     ◇


 朝食。


 今日は。


 少し。


 多め。


 なぜ。


 分からない。


 明日。


 道中。


 食べる。


 でも。


 今。


 食べる。


 芋。


 豆。


 葉野菜。


 卵。


 パン。


 薬草茶。


 私は。


 机。


 一人。


 でも。


 今日は。


 一人で。


 食べる最後。


 出発前。


 また。


 言いそうになる。


 最後。


 私は。


 首。


 横。


「今日の朝食です」


 言い直す。


 今。


 この朝食。


 それだけ。


 一口。


 芋。


 二口。


 豆。


 三口。


 卵。


 味。


 する。


 喉。


 少し。


 詰まる。


 でも。


 食べる。


 明日。


 緊張。


 食べられないかもしれない。


 だから。


 今。


 食べる。


「王都でも」


 私は。


 薬草茶。


 持つ。


「食べます」


 リオ。


 きっと。


 見ている。


 ミナ。


 言う。


 食べてください。


 私。


 大丈夫。


 言う。


 でも。


 二人。


 疑う。


 少し。


 笑う。


「選んでよかったです」


 誰も。


 いない。


 でも。


 言う。


     ◇


 結界。


 気配。


 今日は。


 三つ。


 ではない。


 たくさん。


 私は。


 手。


 止まる。


 耳。


 澄ます。


 リオ。


 ミナ。


 ガルドさん。


 そして。


 子ども。


 大人。


 何人。


 分からない。


 私は。


 戸。


 開ける。


「おはようございます」


 目の前。


 人。


 多い。


 エマ。


 トト。


 サム。


 ニコ。


 ルル。


 リーナ。


 パン屋の女性。


 昨日。


 髪を。


 編んでくれた女性。


 木工職人。


 薬師。


 井戸番の老人。


 他。


 十人以上。


「……なぜ」


 私は。


 驚く。


 パン屋の女性。


「迎えに来た」


「村まで?」


「そう」


「道、分かります」


「知ってるよ」


「では」


「今日くらい」


 女性。


 少し。


 笑う。


「皆で行こうと思ってね」


 私。


 言葉。


 出ない。


 リオ。


 荷物。


 背負っている。


 昨日より。


 少し。


 まとまっている。


 ミナ。


 旅箱。


 小さい。


 ガルドさん。


 通常。


 でも。


 今日は。


 皆。


 私。


 見る。


「大げさです」


 私は。


 言う。


 すると。


 井戸番の老人。


「大げさにしないと、明日もっと大げさになる」


「どういう意味ですか」


「明日、全員来る」


 私。


 固まる。


「全員?」


「来られる奴は」


 パン屋の女性。


「見送り」


 胸。


 締まる。


「いりません」


 反射。


 言う。


 皆。


 静か。


 私。


 自分で。


 驚く。


「……違います」


 すぐ。


 言い直す。


「いらない、ではなく」


 喉。


 詰まる。


「多すぎると、泣きます」


 周囲。


 一瞬。


 静か。


 その後。


 誰か。


 笑う。


「それはもう無理だ」


「今日から泣いてる」


「まだ泣いていません」


「目が赤い」


「朝です」


 リオ。


「俺と同じ言い訳」


 笑い。


 空気。


 柔らかい。


 私は。


 息。


 吐く。


「明日」


 言う。


「来たい方は」


 一度。


 胸。


 手。


「来てください」


 言えた。


「でも」


 皆。


 待つ。


「さようならは、言わないでください」


 静か。


「いってらっしゃい、と」


 声。


 震える。


「言ってください」


 パン屋の女性。


 目。


 少し。


 潤む。


「分かったよ」


 村長さん。


 いない。


 でも。


 皆。


 頷く。


「さようなら禁止」


 トト。


 言う。


「記録」


 サム。


「書かなくていいです」


「大事」


「はい」


 私は。


 少し。


 笑う。


     ◇


 皆で。


 村へ。


 歩く。


 森。


 道。


 いつも。


 私。


 リオ。


 ミナ。


 ガルドさん。


 今日は。


 後ろ。


 人。


 声。


 多い。


「明日の天気」


「晴れだって」


「誰が」


「空」


「空が言ったのか」


「雲見た」


「それお前だろ」


「馬車、何時」


「朝」


「朝って何時」


「明るくなってから」


「早い」


「王都遠い」


 子ども。


 話。


 止まらない。


 私は。


 前。


 歩く。


 でも。


 時々。


 振り返る。


 人。


 いる。


 笑う。


 普通。


 でも。


 明日。


 ここ。


 私は。


 馬車。


 乗る。


 胸。


 痛い。


 一歩。


 二歩。


 三歩。


 明日。


 四歩。


 王都。


 五歩。


 ミナ。


 六歩。


 リオ。


 七歩。


 戻る。


 いつもの。


 数え方。


 今日は。


 後ろ。


 エマ。


「何数えてるの?」


「歩数です」


「毎日?」


「時々」


「なんで七?」


 私。


 少し。


 考える。


「戻るまでの区切りです」


 エマ。


「八は?」


「また一から」


「変」


「はい」


 笑う。


     ◇


 村。


 入口。


 見張り。


 丸。


 今日は。


 見張り。


 私を見る。


 いつもより。


 長く。


 手。


 上げる。


「おはようございます」


「おはようございます」


 返す。


 村。


 入る。


 広場。


 人。


 多い。


 でも。


 仕事。


 している。


 明日。


 私。


 出る。


 でも。


 止まっていない。


 それが。


 嬉しい。


 パン。


 焼く。


 井戸。


 水。


 洗濯。


 木。


 削る。


 荷。


 運ぶ。


 子ども。


 走る。


 薬師。


 薬。


 干す。


 私。


 いなくても。


 暮らす。


 でも。


 私を。


 見ると。


「おはよう」


「明日だね」


「準備できた?」


「忘れ物するなよ」


「食べろよ」


 声。


 かける。


 いなくても。


 暮らす。


 でも。


 どうでもいい。


 ではない。


 昨日の。


 言葉。


 胸。


 戻る。


     ◇


 共同畑。


 キズナ。


 発芽九日目。


 私は。


 しゃがむ。


「おはようございます」


 茎。


 ほぼ。


 立っている。


 でも。


 根元。


 少し。


 曲がり。


 残る。


 皺のある葉。


 大きさ。


 もう片方。


 ほぼ。


 同じ。


 でも。


 皺。


 ある。


 形。


 違う。


 色。


 両方。


 濃い。


 葉脈。


 はっきり。


 私は。


 長く。


 見る。


 明日。


 見ない。


 明後日。


 見ない。


 その次。


 見ない。


 何日。


 見ない。


 分からない。


 戻る。


 その時。


 葉。


 もっと。


 増える。


 本葉。


 出る。


 茎。


 太い。


 皺。


 残る。


 残らない。


 分からない。


「大きくなりますね」


 私。


 言う。


 エマ。


「うん」


「私がいない間も」


「うん」


「記録、お願いします」


 サム。


「任せて」


 今日は。


 短い。


 でも。


 強い。


 私は。


 記録板。


 開く。


 赤筋葉。


 観察鉢。


 キズナ。


 発芽九日目。


 茎。


 ほぼ直立。


 根元湾曲。


 残存。


 初葉二枚。


 成長良好。


 圧迫側片葉。


 皺残存。


 葉長・葉幅。


 反対葉との差。


 ほぼ解消。


 形状差。


 継続。


 葉色。


 両葉良好。


 追加処置不要。


 その下。


 観察者。


 明朝。


 王都へ向け出発。


 本人不在中。


 子どもたちおよび村担当者。


 共同記録。


 継続。


 私は。


 書き終える。


 サムへ。


 板。


 渡す。


「続き、お願いします」


 サム。


 受け取る。


 両手。


「はい」


 その返事。


 丁寧。


 いつもより。


 私は。


 涙。


 出そう。


 でも。


 まだ。


     ◇


 今日。


 授業。


 しない。


 でも。


 子どもたちは。


 私。


 囲む。


 エマ。


「先生、王都で何するの?」


「国王陛下へ、お話します」


「何を」


「私が、どうしたいか」


「畑?」


「はい」


「結婚?」


 ニコ。


 言う。


 周囲の大人。


 少し。


 こちら。


 見る。


 私。


 一瞬。


 固まる。


 でも。


 子ども。


 知っている。


 婚姻。


 話。


 少し。


 伝わっている。


「今は、結婚したくありません、と言います」


 子どもたち。


 静か。


 トト。


「嫌だから?」


「怖いからです」


 正直。


「結婚が?」


「結婚そのものが、ではないかもしれません」


「じゃあ何」


「私ではなく、公爵家や血筋だけを見て、結婚したいと言う人たちが」


 言葉。


 難しい。


 ルル。


「フローラ先生じゃなくて」


「はい」


「公爵の娘?」


「はい」


 エマ。


「青い髪も?」


「それも」


「青い髪好きだから結婚は?」


 私。


 少し。


 困る。


「髪だけなら、嫌です」


「じゃあ全部好きなら?」


 周囲。


 静か。


 リオ。


 少し。


 咳。


 ミナ。


 顔。


 平静。


 私は。


 胸。


 少し。


 熱い。


「分かりません」


 答える。


 子ども。


「分からない多い」


「はい」


「王様にも?」


「言います」


「分からないって?」


「はい」


 トト。


「王様怒らない?」


「分かりません」


「また」


 笑い。


 私は。


 笑う。


 でも。


 大事。


 分からない。


 言う。


 恥ではない。


「ただ」


 私は。


 続ける。


「分からないのに、分かっているふりはしません」


 サム。


 板。


 書こうとする。


「今は授業ではありません」


「大事」


「はい」


 また。


 書く。


 私。


 苦笑。


     ◇


 昼。


 広場。


 出発前日。


 食事。


 大きい。


 でも。


 宴会。


 ではない。


 皆。


 普通。


 少し。


 多い。


 パン。


 豆。


 芋。


 肉。


 野菜。


 スープ。


 そして。


「小さい鍋」


 井戸番の老人。


 誇らしそう。


 持つ。


 私。


 見る。


「本当に小さいです」


「大鍋は帰ってから」


「はい」


「約束」


「はい」


 皆。


 笑う。


 座る。


 私。


 中央。


 ではない。


 いつもの。


 木陰。


 子ども。


 横。


 リオ。


 少し。


 離れ。


 ミナ。


 食事。


 配る。


 村長さん。


 向かい。


「明日」


 誰か。


 言いかける。


 空気。


 少し。


 止まる。


 村長さん。


「今日は食べよう」


 言う。


 皆。


 頷く。


 その。


 さりげなさ。


 嬉しい。


 私。


 食べる。


 パン。


 一口。


 スープ。


 二口。


 肉。


 三口。


「ちゃんと食べてる」


 リオ。


「はい」


「明日も」


「はい」


「絶対」


「努力します」


「努力じゃなくて」


 ミナ。


「まず朝食を用意します」


「ありがとうございます」


 リオ。


「逃げた」


「逃げていません」


 笑い。


 パン屋の女性。


「王都で痩せて帰ってきたら、また食わせるよ」


「帰ってきたら」


 胸。


 詰まる。


「はい」


「何食べたい」


 私は。


 考える。


 帰ってきた。


 最初。


 食べる。


 何。


「豆のスープ」


 皆。


 一瞬。


 静か。


 その後。


「普通」


「肉じゃないのか」


「王都で肉食べるだろ」


「豆がいい?」


 私は。


 笑う。


「はい」


「薄味?」


 昨日までの。


 スープ。


 思い出す。


「少し薄め」


 鍋の女性。


「塩忘れても怒らない?」


「忘れたら言います」


 笑い。


 私。


 胸。


 温かい。


 帰還後。


 食事。


 豆のスープ。


 約束。


 また。


 一つ。


     ◇


 食後。


 村長さん。


 私。


 仕事部屋。


 二人。


 母様の手紙。


 最後。


 ではない。


 出発前。


 確認。


 引き出し。


 かたり。


 灰色の包み。


 出さない。


 村長さん。


 鍵。


 確認。


「ここ」


「はい」


「フローラが戻るまで」


「はい」


「誰も開けない」


「はい」


「君が王都から頼んでも」


「はい」


「開けない」


「お願いします」


 私は。


 引き出しへ。


 手。


 触れる。


 木。


 冷たい。


 中。


 母様。


 五つ目の一文まで。


 待つ。


「母様へ」


 村長さん。


 聞く。


「王都で会うか」


「まだ決めていません」


「うん」


「会う可能性は」


「閉じない」


「はい」


「会わなくても」


「はい」


「それでいい」


 私は。


 息。


 吐く。


「村長さん」


「うん」


「もし」


 言葉。


 止まる。


「私が、帰ってこないようなことが」


 村長さん。


 すぐ。


 眉。


 寄る。


「フローラ」


「可能性の話です」


「言わなくていい」


 声。


 少し。


 強い。


 私。


 驚く。


 村長さん。


 普段。


 静か。


 でも。


 今。


「帰ってこない前提の話は、今しなくていい」


「でも」


「必要なことは決めた」


「はい」


「畑」


「はい」


「家」


「はい」


「手紙」


「はい」


「何か事故があれば、それはその時に考える」


 私は。


 黙る。


「今」


 村長さん。


 ゆっくり。


「君が決めるべきなのは」


 一度。


 息。


「帰ることだ」


 胸。


 痛い。


「はい」


「帰らなかった場合の後始末まで、今の君が全部背負うな」


 また。


 全部。


 やろうとする。


「……はい」


「怖いのは分かる」


「はい」


「でも」


 村長さん。


 少し。


 笑う。


「戻ってきてから、必要なら心配しなさい」


 変。


 言葉。


 でも。


 私。


 笑う。


「はい」


 涙。


 一滴。


 出る。


 村長さん。


 見ないふり。


 してくれる。


 私は。


 引き出し。


 手。


 離す。


「いってきます」


 小さく。


 言う。


 母様の手紙へ。


 初めて。


「待っていてください」


 今度。


 母様。


 待たせる。


 罪悪感。


 少し。


 でも。


「戻ります」


 言える。


     ◇


 午後。


 礼装。


 最終。


 確認。


 深い青。


 白。


 銀。


 肩。


 動く。


 首。


 苦しくない。


 腰。


 締めすぎない。


 裾。


 歩ける。


 私は。


 鏡。


 前。


 立つ。


 以前。


 王都。


 公爵令嬢。


 同じ。


 深い青。


 でも。


 違う。


 身体。


 違う。


 服。


 違う。


 表情。


 違う。


 手。


 土。


 小さな傷。


 手袋。


 外す。


 自分の手。


 見る。


「どう?」


 女性。


 聞く。


 私は。


 鏡。


「私です」


 答える。


 女性。


 少し。


 笑う。


「そりゃそうだ」


「違います」


 私は。


 少し。


 笑う。


「前は、服を着ると、公爵令嬢にならなければと思いました」


「うん」


「今は」


 鏡。


 見る。


「私が、公爵令嬢の服を着ていると思えます」


 沈黙。


 女性たち。


 少し。


 目。


 潤む。


 一人。


「それでいい」


 言う。


「服に着られちゃ駄目だよ」


「はい」


「王様の前でも」


「はい」


「息する」


「はい」


「苦しくなったら」


「少し待ってください、と言います」


「よし」


 皆。


 笑う。


 髪。


 今日は。


 簡単に。


 王都用。


 試す。


 空色。


 編む。


 小さい。


 青い石。


 一つ。


 銀。


 つける。


 重くない。


 鏡。


 私。


 青。


 でも。


 化け物。


 ではない。


 公爵令嬢。


 でも。


 それだけ。


 ではない。


 畑。


 先生。


 おねえちゃん。


 フローラ。


 全部。


 私。


「写真」


 ない。


 鏡。


 だけ。


 私は。


 その姿。


 目へ。


 残す。


 明日。


 王都へ。


 着るのは。


 到着後。


 道中。


 普通の旅服。


 でも。


 これ。


 王都で。


 私。


 話す。


「大丈夫」


 女性。


 言う。


 私。


 反射。


「大丈夫です」


 リオ。


 遠くから。


「本当に?」


 皆。


 笑う。


 私。


 振り返る。


 リオ。


 入口。


 荷物。


 持つ。


「いつからいたのですか」


「今」


「聞いていた?」


「大丈夫から」


「よかったです」


「なんで」


「その前は、見られたくなかったので」


「俺も見てない」


「はい」


 耳。


 赤い。


 皆。


 笑う。


「似合ってる」


 リオ。


 小さい。


 言う。


 私。


 聞こえる。


「ありがとうございます」


 リオ。


 さらに。


 赤い。


「別に」


「褒めたのに?」


「うるさい」


 空気。


 柔らかい。


     ◇


 夕方。


 私は。


 村を。


 一人で。


 歩く。


 同行。


 なし。


 でも。


 見守り。


 遠く。


 いる。


 村長さん。


 許可。


 今日は。


 少し。


 一人。


 歩きたい。


 パン屋。


 匂い。


「明日、持っていくパン」


 女性。


 包む。


「焼きたてじゃ傷むから、少し固め」


「ありがとうございます」


「帰りは?」


「王都から?」


「違う」


 女性。


 笑う。


「帰ってきた日のパン」


 私。


 胸。


「柔らかいの」


「はい」


「甘いやつ」


「はい」


「覚えとく」


 次。


 薬師。


 薬。


「飲み方」


 紙。


 もう一度。


 説明。


「分からなくなったら」


「ミナへ」


「はい」


「王宮の医師もいる」


「はい」


「意地張らない」


「はい」


「大丈夫って言わない」


「それは難しいです」


「正直」


 笑い。


 次。


 木工職人。


 旅箱。


 蓋。


 確認。


「重い?」


「大丈夫です」


「持つのはリオ」


「私の荷物です」


「王都まで」


「馬車です」


「でも持つ時ある」


「はい」


 次。


 井戸。


 老人。


「大鍋」


「帰ってから」


「忘れるな」


「はい」


「豆」


「はい」


「肉も」


「豆のスープです」


「肉入れても豆」


「少しなら」


「よし」


 次。


 子ども。


 広場。


 待っている。


 でも。


 今日は。


 授業。


 ではない。


「先生」


 エマ。


「明日、泣く?」


「たぶん」


「今も?」


「少し」


「じゃあ今日も泣く」


「はい」


 ニコ。


「泣きすぎ」


「すみません」


 ルル。


「帰るから」


「はい」


「泣いていい」


「はい」


 リーナ。


 花守り布。


 持ってくる。


 今日。


 追加。


 森側。


 小さな。


 点。


 たくさん。


 全部。


 ではない。


 でも。


 増えた。


「残る人」


「はい」


「まだ途中」


「はい」


「帰ったら続き」


「はい」


 私は。


 布。


 受け取る。


 道。


 二つの点。


 ミナ。


 リオ。


 森。


 たくさんの点。


 私。


 中央?


 いない。


 私は。


 聞く。


「私は、どこですか」


 リーナ。


 少し。


 考える。


 指。


 道。


 途中。


「ここ」


 縫っていない。


「まだ?」


「動くから」


 胸。


 熱い。


 私。


 固定。


 しない。


 道。


 途中。


 今。


 移動。


「帰ったら」


 リーナ。


 森。


 指。


「ここ」


 縫う。


 私は。


 泣く。


「お願いします」


     ◇


 日。


 傾く。


 私は。


 春待ちの根元へ。


 行く。


 今日は。


 一人。


 少し。


 後ろ。


 ガルドさん。


 見守り。


 でも。


 離れて。


 白樹。


 三つ岩。


 花。


 第一。


 ほぼ。


 土。


 第二。


 崩れ。


 第三。


 落ち。


 分解。


 第四。


 ついに。


 枝。


 花。


 ほとんど。


 ない。


 最後の。


 花弁。


 一枚。


 残る。


 私は。


 しゃがむ。


「明日、行きます」


 花。


 返事。


 ない。


「帰ってくる頃には」


 枝。


 見る。


「全部、落ちていますね」


 たぶん。


 葉。


 もっと。


 増える。


 花。


 終わる。


 でも。


 根元。


 ある。


「見られません」


 悲しい。


「でも」


 私は。


 板。


 開く。


「見てもらわなくても」


 一度。


 笑う。


「花は、落ちます」


 自然。


 私。


 関係ない。


 それでいい。


 記録。


 第四花。


 残存花弁一。


 花期終末。


 第一〜第三花。


 分解進行。


 観察者。


 翌朝。


 王都へ出発。


 帰還時。


 花期終了見込み。


 その下。


 花がなくなっても。


 場所を忘れない。


 書く。


 私は。


 板。


 閉じる。


「いってきます」


 花。


 初めて。


 言う。


「また」


 一度。


 止まる。


 明日。


 ではない。


「帰ってきたら」


 言う。


「会いに来ます」


     ◇


 森の家。


 夕暮れ。


 戻る。


「ただいま」


 今日。


 言える。


 明日。


 夜。


 ここ。


 いない。


 胸。


 詰まる。


 でも。


「明日は、言えません」


 家。


 静か。


「その次も」


 何日。


 分からない。


「でも」


 戸。


 内側。


 触れる。


「帰ってきたら、また言います」


 ただいま。


 その言葉。


 未来。


 残す。


 私は。


 最後。


 ではない。


 出発前。


 夕食。


 作る。


 今日。


 村。


 食べた。


 でも。


 夜。


 少し。


 食べる。


 粥。


 豆。


 少し。


 野菜。


 簡単。


 食卓。


 一人。


 いつも。


 でも。


 今夜。


 違う。


 胸。


 重い。


 一口。


 二口。


 三口。


 食べる。


 途中。


 涙。


 出る。


 止めない。


 食べる。


「味がします」


 泣きながら。


 言う。


 以前。


 つらい時。


 味。


 消えた。


 今日。


 悲しい。


 怖い。


 でも。


 味。


 する。


 それ。


 大きい。


     ◇


 食後。


 荷物。


 最終。


 旅箱。


 一つ。


 小袋。


 一つ。


 花守り布。


 手元。


 父様の手紙。


 国王陛下の召喚状。


 五つの言葉。


 薬。


 衣類。


 毛布。


 村の。


 古い。


 煙。


 草。


 匂い。


 私は。


 毛布。


 顔。


 近づける。


 森。


 村。


 匂い。


「持っていきます」


 次。


 非常用の袋。


 家。


 残す。


 水。


 乾燥パン。


 薬草。


 火打ち。


 何か。


 帰還。


 後。


 使う。


 そのまま。


 ガルドさん。


 必要なら。


 確認。


 鍵。


 明日。


 村長さん。


 ガルドさんへ。


 渡す。


 今夜。


 まだ。


 私。


 持つ。


 机。


 日記。


 最後。


 ではない。


 出発前。


 記録。


 私は。


 開く。


 今日。


 出発前日。


 朝。


 畑を。


 自分で見た。


 オカエリは。


 昨日より。


 地表へ出た。


 小さく。


 曲がっていた。


 私が戻る頃。


 どのくらい。


 大きくなっているか。


 分からない。


 キズナ。


 発芽九日目。


 茎。


 ほぼ直立。


 皺のある葉と。


 もう片方。


 大きさの差は。


 ほとんどなくなった。


 でも。


 形は違う。


 皺は残る。


 同じ大きさになっても。


 同じ形にはならない。


 それで。


 どちらも。


 葉。


 私は。


 ペン。


 止める。


 自分。


 母様。


 父様。


 公爵家。


 森。


 同じ。


 違う。


 全部。


 重なる。


 でも。


 今夜。


 深く。


 考えすぎない。


 続き。


 私は。


 村長さんへ。


 母様の手紙を。


 改めて。


 預けた。


 戻るまで。


 開けない。


 王都から。


 私が頼んでも。


 開けない。


 私は。


 今日。


 母様の手紙へ。


 初めて。


 いってきます。


 と言った。


 待っていてください。


 とも。


 言った。


 母様を。


 待たせる。


 以前より。


 怖くない。


 手紙も。


 私を。


 待てる。


 その下。


 村の皆。


 明日。


 見送りへ。


 来る。


 私は。


 最初。


 いりません。


 と言った。


 でも。


 違う。


 多すぎると。


 泣くのが。


 怖かった。


 来てほしくないのではない。


 だから。


 来たい人は。


 来てください。


 と。


 言った。


 ただし。


 さようならは。


 言わないでほしい。


 いってらっしゃい。


 と言ってほしい。


 私は。


 帰るから。


 続き。


 パン屋の女性へ。


 帰ってきたら。


 豆のスープを。


 食べたいと。


 言った。


 少し薄め。


 井戸番の老人の。


 大鍋。


 使う。


 肉。


 少し。


 入るかもしれない。


 柔らかい。


 甘いパンも。


 食べる。


 帰還後の。


 食事。


 また。


 約束。


 増えた。


 私は。


 書きながら。


 泣く。


 でも。


 笑う。


 変。


 でも。


 いい。


 その下。


 深い青の礼装。


 完成。


 以前。


 その服を着ると。


 公爵令嬢にならなければ。


 と思った。


 今日。


 私は。


 私が。


 公爵令嬢の服を。


 着ていると思えた。


 服。


 役目。


 私。


 順番。


 少し。


 変わった。


 私は。


 明日。


 王都へ。


 行く。


 王宮。


 国王陛下。


 父様。


 貴族。


 母様。


 会うかもしれない。


 会わないかもしれない。


 怖い。


 でも。


 五つ。


 忘れない。


 一。


 森で暮らしたい。


 二。


 住む場所は。


 私も決める。


 三。


 今は。


 婚姻を望まない。


 四。


 公爵家をどうするかは。


 まだ分からない。


 五。


 分からないことを。


 今すぐ。


 決めたことにしない。


 私は。


 ペン。


 最後。


 一行。


 書く。


 明日。


 私は。


 さようならを言わない。


 いってきます。


 と言う。


 そして。


 帰ってきたら。


 ただいま。


 と言う。


 日記帳。


 閉じる。


     ◇


 夜。


 遅い。


 でも。


 眠れない。


 私は。


 寝台へ。


 入る。


 目。


 閉じる。


 開ける。


 天井。


 何度。


 見る。


 明日。


 朝。


 馬車。


 来る。


 荷物。


 積む。


 鍵。


 渡す。


 村。


 皆。


 見送り。


 乗る。


 森。


 遠ざかる。


 想像。


 胸。


 苦しい。


 私は。


 起き上がる。


 窓。


 開ける。


 夜。


 森。


 月。


 雲。


 風。


 畑。


 暗い。


 新しい柵。


 影。


 オカエリ。


 見えない。


 でも。


 いる。


「眠れません」


 森へ。


 言う。


 返事。


 ない。


「怖いです」


 言う。


 涙。


 出る。


「行きたくないです」


 また。


 言う。


 矛盾。


 王都へ。


 行くと。


 決めた。


 でも。


 行きたくない。


 両方。


 ある。


「ここにいたいです」


 声。


 震える。


 でも。


「だから」


 胸。


 手。


「行きます」


 戻るため。


 自分の言葉。


 言うため。


「怖いまま、行きます」


 強く。


 ならなくていい。


 怖くなくなる。


 必要。


 ない。


「ミナがいます」


 待つ人。


「リオがいます」


 疑う人。


 今の私。


 違う。


 言う人。


「森に」


 声。


 詰まる。


「皆さんがいます」


 帰る場所。


 私は。


 窓枠。


 握る。


「大丈夫ではありません」


 昨日。


 言った。


「でも」


 息。


 吸う。


「一人ではありません」


 その言葉。


 胸。


 少し。


 落ち着く。


 私は。


 窓。


 閉じる。


 寝台。


 戻る。


 花守り布。


 枕元。


 置く。


 普段。


 しない。


 でも。


 今夜。


 そば。


 置く。


 布。


 中。


 五つの言葉。


 道。


 二つの点。


 森。


 点。


 私は。


 指。


 触れる。


「おやすみなさい」


 言う。


 森。


 畑。


 村。


 母様の手紙。


 春待ちの根元。


 キズナ。


 オカエリ。


 皆。


「明日」


 言葉。


 止まる。


「いってきます」


 先に。


 練習。


 する。


 涙。


 出る。


「いってきます」


 もう一度。


 言う。


 今度。


 少し。


 声。


 はっきり。


 そして。


 未来。


「ただいま」


 小さく。


 言う。


 まだ。


 早い。


 でも。


 言ってみる。


 胸。


 温かい。


 目。


 閉じる。


 眠り。


 すぐ。


 来ない。


 でも。


 少しずつ。


 森の音。


 遠く。


 なる。


 明日。


 私は。


 この家の扉を。


 外から。


 閉める。


 でも。


 終わりではない。


 鍵を。


 捨てるのでもない。


 ただ。


 一度。


 離れる。


 戻るために。


 自分で。


 選んだ道へ。


 出る。


 その前の夜。


 私は。


 さようならを。


 一度も。


 言わなかった。

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