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『青の姫君の森暮らし 〜化け物と恐れられた公爵令嬢は、今日も畑を耕します〜』  作者: 伊佐波瑞樹


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73/101

第73話 青の姫君、留守にする森へ自分の言葉を残す



 翌朝。


 私は。


 雨音で目を覚ました。


 強くはない。


 けれど。


 細かい雨が。


 屋根を。


 絶え間なく叩いている。


 ぱら。


 ぱら。


 ぱら。


 時々。


 葉から落ちた大きな雫が。


 とん。


 と。


 少し重い音を立てる。


 私は。


 寝台の上で。


 しばらく。


 その音を聞いていた。


 出発まで。


 あと三日。


 三日。


 昨日。


 四日だった。


 一晩眠っただけで。


 一日。


 減った。


 当然のこと。


 でも。


 数字にすると。


 胸の中へ。


 少し重く落ちる。


 私は。


 布団の上で。


 指を。


 三本。


 立てた。


「三日」


 言ってみる。


 短い。


 でも。


 何もできないほど。


 短くはない。


 一日。


 一つずつ。


 昨日。


 同行者を決めた。


 ミナ。


 リオ。


 二人。


 母様の。


 二つ目の伝言も。


 聞いた。


 母様は。


 私へ戻ってきてほしいとは。


 言っていない。


 会ってほしいとも。


 急かしていない。


 もし。


 いつか。


 私が会ってもよいと思ったなら。


 一度だけ。


 直接。


 謝る機会がほしい。


 そう。


 伝えたという。


 私は。


 返答しなかった。


 会うか。


 会わないか。


 まだ。


 決めていない。


 でも。


 可能性は。


 閉じていない。


 母様の手紙は。


 村長さんの家。


 灰色の布。


 引き出し。


 私が。


 王都から。


 戻るまで。


 開けない。


 私が。


 王都から。


 開いてほしいと。


 頼んでも。


 開けない。


 そう。


 お願いした。


 その約束。


 少し。


 怖い。


 でも。


 安心でもある。


 王都で。


 何があっても。


 手紙は。


 森にある。


 帰ってこなければ。


 続きは読めない。


 それは。


 私を。


 森へつなぐ。


 一つの糸になるのかもしれない。


 私は。


 胸へ。


 手を置く。


 心臓。


 昨日より。


 少し。


 静か。


 雨。


 朝。


 森の家。


 あと三日。


「おはようございます」


 私は。


 天井へ。


 言う。


「今日も、森の家です」


 少し間を置く。


「おはようございます、母様」


 胸。


 痛む。


 でも。


 昨日より。


 言いやすい。


「昨日、二つ目の伝言を聞きました」


 返事はない。


「会ってもよいと思った時に」


 声。


 少し。


 震える。


「謝りたいと」


 私は。


 目を閉じる。


「まだ、会うとは決めていません」


 でも。


「会わないとも、決めていません」


 それでいい。


「今日は」


 私は。


 少し考える。


「森へ残す言葉を決めます」


 出発。


 王都。


 その準備。


 荷物。


 服。


 同行者。


 道中。


 そういうものばかり。


 考えていた。


 でも。


 私がいない間。


 森には。


 時間が流れる。


 畑。


 キズナ。


 子どもたち。


 村。


 雨。


 風。


 病気。


 虫。


 収穫。


 失敗。


 笑い。


 私がいなくても。


 続く。


 そして。


 私は。


 戻ってくる。


 その間。


 何を。


 どう残すのか。


 昨日。


 子どもたちの。


 観察練習を見た。


 私がいなくても。


 記録できる。


 でも。


 記録だけでは。


 足りない。


 何か起きた時。


 どこまで触ってよいか。


 誰が決めるか。


 私なら。


 どうするか。


 書いておいたほうがいい。


 でも。


 全部。


 決めてはいけない。


 私がいないのに。


 私の指示だけで。


 皆が動く。


 それでは。


 森を。


 置いていくのではなく。


 縛っていく。


 私は。


 少し。


 笑った。


「また、決まりを増やしすぎないようにします」


 昨日。


 村長さんに言われた。


 昔から。


 自分で。


 決まりを増やす。


 そう。


 今日。


 森へ残すものも。


 細かすぎる規則ではなく。


 考えるための。


 基準。


 そんなもの。


「まず、畑です」


 私は。


 寝台から下りた。


     ◇


 窓を開ける。


 雨。


 細い。


 風。


 弱い。


 空気。


 湿っている。


 土の匂い。


 昨日より。


 強い。


 新しい柵。


 濡れて。


 色が濃い。


 木の表面。


 雨粒。


 つや。


 私は。


 雨布を。


 肩へ。


 畑。


 青豆一号。


 葉。


 雨粒。


 重み。


 少し下がっている。


 でも。


 折れなし。


 アオジロウ。


 茎。


 安定。


 ムラマル。


 乾燥草。


 泥跳ね。


 防げている。


 白い擦れ跡。


 変化なし。


 モリタン。


 本葉。


 雨。


 表面。


 濡れて。


 さらに濃い緑。


 私は。


 しゃがむ。


 土。


 湿り。


 十分。


 水やり。


 不要。


「おはようございます」


 雨。


 葉。


 ぽつ。


 ぽつ。


 小石の円。


 赤い実。


 土。


 表面。


 昨日と。


 少し違う。


 私は。


 目を細める。


 中央。


 ごくわずかに。


 土。


 盛り上がっている。


 雨で。


 土が。


 動いただけかもしれない。


 芽。


 では。


 ないかもしれない。


 私は。


 手を。


 伸ばしかけ。


 止める。


「触りません」


 見る。


 だけ。


 土の中央。


 ほんの少し。


 亀裂。


 あるようにも。


 見える。


 でも。


 雨。


 土。


 判断。


 難しい。


 私は。


 記録板を。


 雨布の下で。


 開く。


 青豆一号。


 古い葉離脱後二十九日目。


 雨天。


 葉面濡れ。


 新葉、雨重による一時的下垂。


 折損・虫害なし。


 アオジロウ。


 茎・葉安定。


 雨天処置不要。


 ムラマル。


 乾燥草による泥跳ね防止継続。


 擦過跡変化なし。


 モリタン。


 本葉完全展開後六日目。


 葉色良好。


 葉面濡れ。


 追加処置不要。


 三芽。


 状態良好。


 赤色木の実。


 播種後三日目。


 表土中央部。


 ごく軽微な隆起および亀裂様変化。


 発芽兆候の可能性。


 雨による表土変化の可能性あり。


 触診・掘削なし。


 経過観察。


 私は。


 最後の一行を。


 もう一度。


 見る。


 発芽。


 かもしれない。


 出発まで。


 三日。


 間に合う。


 間に合わない。


 そう。


 考えた瞬間。


 自分で。


 苦笑する。


 芽は。


 私の出発へ。


 間に合わせるために。


 出るのではない。


「あなたの時間で、どうぞ」


 土へ。


 言う。


「私が見られなくても」


 一度。


 胸。


 痛む。


「誰かが見てくれます」


 そして。


 私は。


 戻る。


 記録板へ。


 その下。


 観察者不在中の畑管理方針。


 書こうとする。


 でも。


 止める。


 ここで。


 一人で。


 全部決めない。


 今日。


 村で。


 皆と。


 話す。


 私は。


 一行だけ。


 観察者不在中の管理基準を、本日、村の担当者と共同作成予定。


 書く。


 共同。


 一人で。


 決めない。


「よし」


 私は。


 小さく言った。


     ◇


 朝食。


 雨。


 少し。


 強くなる。


 屋根。


 音。


 一定。


 今日は。


 豆の粥。


 乾燥した葉。


 少し。


 塩。


 昨日。


 出発前に食べると。


 分けたパン。


 一つ。


 焼く。


 薬草茶。


 湯気。


 私は。


 食卓へ。


 座る。


 食べながら。


 今日。


 やること。


 考える。


 一つ。


 畑の。


 留守中。


 管理基準。


 二つ。


 森の家。


 入ってよい人。


 触ってよいもの。


 火。


 水。


 三つ。


 母様の手紙。


 村長さんへ。


 改めて。


 預ける。


 四つ。


 王都へ持っていく。


 書類。


 言葉。


 自分の答え。


 国王陛下へ。


 何を。


 言うのか。


 まだ。


 決まっていない。


 森で暮らしたい。


 婚姻は。


 今は望まない。


 公爵家を継ぐか。


 分からない。


 母様へ会うか。


 分からない。


 父様へ。


 怒っている。


 でも。


 話す。


 それ。


 全部。


 王都で。


 うまく。


 言えるか。


 分からない。


 だから。


 今日は。


 言葉も。


 整理する。


 でも。


 台本。


 作りすぎない。


 決められた文章を。


 覚えると。


 また。


 正しい答えへ。


 逃げるかもしれない。


「何を言うかではなく」


 私は。


 粥を。


 一口。


「何を忘れたくないか」


 それ。


 書く。


 王都で。


 言葉が。


 変わっても。


 泣いても。


 詰まっても。


 忘れたくないこと。


 ここへ戻りたい。


 私の住む場所を。


 私以外に決めてほしくない。


 婚姻は。


 今は望まない。


 公爵家については。


 まだ。


 決められない。


 分からない。


 それを。


 言う。


 それで。


 いい。


「四つ」


 私は。


 指。


 立てる。


 今のところ。


 四つ。


 それだけ。


 朝食。


 最後まで。


 食べる。


     ◇


 結界。


 気配。


 三つ。


 リオ。


 ミナ。


 ガルドさん。


 雨。


 三人とも。


 雨布。


 濡れている。


 私は。


 戸を開ける。


「おはようございます」


「おはよう」


 リオ。


 髪。


 少し。


 額へ。


 張り付いている。


「濡れています」


「雨だから」


「拭いてください」


「あとで」


 ミナ。


 布。


 すぐ。


 リオへ。


 渡す。


「今」


「子どもじゃない」


「風邪を引くと、王都同行は交代です」


 リオ。


 即。


 拭く。


 私は。


 少し笑う。


「効きますね」


「交代は困る」


「誰と」


「別に」


 昨日。


 選ばれた。


 そのこと。


 まだ。


 少し。


 照れているらしい。


「今日は」


 私は。


 三人を。


 家へ。


 入れる。


「留守中のことを、皆と決めたいです」


 ガルドさん。


「畑?」


「畑だけではありません」


「森の家も」


 ミナ。


 気づく。


「はい」


 私は。


 部屋を。


 見る。


 机。


 寝台。


 暖炉。


 棚。


 花守り箱。


 引き出し。


 非常用の袋。


 王都へ。


 行っている間。


 誰か。


 入る。


 昨日。


 女性が。


 掃除する。


 窓辺の花。


 水。


 道具。


 錆。


 そう。


 話した。


 でも。


 私は。


 まだ。


 ちゃんと。


 どこまで。


 頼むか。


 決めていない。


「誰でも入ってよい、にはしたくありません」


「当然です」


 ミナ。


「でも」


 私は。


 少し。


 言葉を選ぶ。


「誰も入れない、にもしたくありません」


 火。


 雨漏り。


 結界。


 窓。


 畑道具。


 何か。


 起きる。


「必要な時に、入ってほしいです」


 リオ。


「俺?」


「王都へ行きます」


「あ」


「忘れないでください」


「今決まったばっかだから」


「昨日です」


「一日」


 ミナ。


 少し。


 笑う。


「では、留守宅担当も決めましょう」


「はい」


「村で」


「はい」


 ガルドさん。


「結界管理は、私が残るので見ます」


「結界の中へは」


「許可があれば」


「はい」


 私は。


 少し。


 考える。


 誰へ。


 鍵。


 預ける。


 森の家。


 私の場所。


 誰かへ。


 鍵を渡す。


 怖い。


 以前。


 公爵家。


 私の部屋。


 鍵。


 あっても。


 父様。


 侍女長。


 家令。


 皆。


 入れた。


 私の部屋なのに。


 私だけの場所ではなかった。


 森の家は。


 初めて。


 私が。


 扉を閉めて。


 誰も入らない場所。


 その鍵。


 渡す。


 でも。


 今は。


 自分で。


 誰へ渡すか。


 決められる。


 勝手に。


 入られる。


 ではない。


「鍵は」


 私は。


 少し。


 胸へ手を置く。


「村長さんと、ガルドさんへ」


「二つ?」


「予備があります」


「分かりました」


「ただし」


 私は。


 続ける。


「入る前に、記録してください」


 リオ。


「誰に?」


「記録板へ」


「家に入った記録?」


「はい」


 日付。


 目的。


 誰。


 触ったもの。


 持ち出したもの。


 戻したもの。


「細かい」


 リオ。


 言う。


 私は。


 一瞬。


 固まる。


 また。


 決まり。


 増やしすぎ。


 でも。


 これは。


 必要?


 私は。


 ミナを見る。


 すぐ。


 答えない。


 待ってくれる。


 ガルドさん。


「目的と入室者だけで十分では」


 私は。


 考える。


 全部。


 書かせる。


 負担。


 誰も。


 入らなくなる。


 必要な時も。


「そうですね」


 私は。


 自分で。


 一つ。


 減らす。


「日付。入った人。理由。それだけ」


 ガルドさん。


「十分です」


「何か持ち出した時だけ、書く」


「はい」


 リオ。


「決まり減った」


「はい」


「今、増えそうだった」


「はい」


「自覚ある」


「あります」


 少し。


 笑い。


 私は。


 恥ずかしい。


 でも。


 以前なら。


 指摘されること。


 怖かった。


 今は。


 直せる。


「村へ行きましょう」


 雨。


 少し。


 弱くなった。


     ◇


 森の道。


 雨。


 葉。


 雫。


 地面。


 柔らかい。


 一歩。


 二歩。


 三歩。


 畑の基準。


 四歩。


 家の鍵。


 五歩。


 残す言葉。


 六歩。


 王都の言葉。


 七歩。


 戻る。


 リオが。


 後ろ。


 今日は。


 少し。


 荷物。


 背負っている。


「何ですか」


「旅の荷物」


「もう?」


「ミナに言われた」


 ミナ。


「重さを確認します」


「今日ずっと?」


「村まで」


「雨なのに」


「雨の重さも確認できます」


「鬼」


「王都まで歩かせてもよいですよ」


「馬車乗る」


 私は。


 少し。


 笑う。


 同行者。


 二人。


 その準備も。


 もう。


 始まっている。


 村。


 見張り。


 丸。


 広場。


 雨のため。


 皆。


 軒下。


 でも。


 人。


 多い。


 出発まで。


 三日。


 昨日より。


 空気。


 少し。


 忙しい。


 縫い物。


 荷物。


 乾燥肉。


 薬。


 旅箱。


 馬車用。


 縄。


 王都へ。


 行くのは。


 私と。


 ミナと。


 リオ。


 でも。


 準備は。


 村全体。


 私は。


 その様子を見る。


 胸。


 熱い。


 同時に。


 申し訳ない。


 皆の時間。


 私のため。


 でも。


 すぐ。


 自分へ。


 言う。


 返さなければ。


 ではない。


 受け取る。


 帰ってきて。


 また。


 自分ができる時。


 する。


「フローラ先生!」


 エマ。


 軒下。


 手。


 振る。


「赤い実!」


「どうしましたか」


「土!」


 私は。


 畑。


 朝。


 見た。


 隆起。


「少し上がっていました」


「芽?」


「まだ分かりません」


「見に行く?」


「雨が弱くなったら」


「今弱い!」


「道が滑ります」


「じゃああと」


 待てる。


 以前より。


 すぐ。


 行こう。


 ではない。


 子どもたちも。


 変わっている。


     ◇


 まず。


 村長さんの家。


 広い食堂。


 今日。


 留守中の。


 管理。


 話し合い。


 村長さん。


 ガルドさん。


 畑担当。


 三人。


 子ども代表。


 サム。


 エマ。


 なぜか。


 トトも。


「代表?」


「俺も」


「二人では」


「補助」


 サム。


「勝手」


「じゃあ帰る」


「いていい」


「どっちだよ」


 少し。


 笑い。


 私は。


 机へ。


 記録板。


 置く。


「私がいない間」


 声。


 少し。


 固くなる。


「畑を、お願いします」


 皆。


 静か。


「ただ」


 私は。


 続ける。


「私と同じようにしてください、とは言いません」


 村長さん。


 見る。


「同じにしなくてよい?」


「はい」


「でも、基準は欲しいです」


 私は。


 板へ。


 一つずつ。


 書く。


 一。


 毎日一回。


 朝か。


 夕方。


 状態確認。


 必ず。


 ではない。


 大雨。


 危険。


 警戒。


 その時は。


 行かない。


「毎日?」


 畑担当の男性。


「安全なら、です」


「危ない日は見ない?」


「はい」


「一日見なかったら」


「遅れではありません」


 母様の手紙。


 読まなかった日。


 同じ。


「戻れる日に見ます」


 サム。


 記録。


 危険日。


 未観察。


 遅れ扱いしない。


「はい」


 二。


 水。


 土が。


 乾いているか。


 植物が。


 萎れているか。


 両方。


 確認。


 決めた量を。


 自動で。


 毎日与えない。


「雨でも水やるな」


 トト。


「はい」


「分かる」


「本当に?」


「分かる」


「前に雨の日やろうとした」


「昔」


「先月」


「昔」


 笑い。


 三。


 病気。


 虫。


 広がる。


 分からない。


 その時。


 勝手に。


 薬草液。


 強い処置。


 しない。


 村の薬師。


 ガルドさん。


 相談。


 必要なら。


 記録。


「フローラ様へ知らせる?」


 村長さん。


「急ぎなら」


 私は。


 考える。


 王都。


 手紙。


 何日。


 かかる。


「重大なら、知らせてください」


「重大とは」


 また。


 決まり。


 細かく。


 作りそう。


 私は。


 止める。


「皆さんが、重大だと思った時」


 人へ。


 任せる。


 基準。


 完全ではない。


 でも。


 信じる。


 四。


 赤い実。


 掘らない。


 全員。


 笑う。


「そこ強い」


「はい」


「芽出たか気になる」


「気になります」


「でも掘らない」


「はい」


 エマ。


 大きく。


 頷く。


「絶対」


「はい」


 五。


 何か。


 枯れた時。


 失敗。


 しおれ。


 死ぬ。


 その場合。


 隠さない。


 捨てない。


 記録。


「怒らない?」


 エマ。


 聞く。


 私は。


 胸。


 痛む。


 帰って。


 枯れていた。


 青豆一号。


 アオジロウ。


 ムラマル。


 モリタン。


 赤い実。


 キズナ。


 想像。


 悲しい。


 怒る?


 誰かの。


 失敗。


 私は。


 少し。


 考える。


「悲しいと思います」


「怒る?」


「原因によります」


 正直。


「でも」


 私は。


 続ける。


「隠されたほうが、もっと悲しいです」


 皆。


 静か。


「枯れたら、枯れたと書いてください」


「はい」


「いつ。どう変わったか。分かる範囲で」


「はい」


「分からなければ、分からない」


「はい」


「私が戻ってから、一緒に考えます」


 失敗。


 隠さない。


 責任。


 誰かへ。


 一人で。


 押しつけない。


 公爵家。


 曲がった線。


 誰が。


 間違えた。


 ではない。


 直す。


 見る。


 考える。


「最後」


 私は。


 板へ。


 書く。


 観察者本人の帰還を待たず。


 必要なことは。


 村で判断してよい。


 ペン。


 止まる。


 怖い。


 私の畑。


 私が。


 いない。


 誰かが。


 判断。


 でも。


 必要。


「本当に?」


 村長さん。


 聞く。


「はい」


「フローラの確認なしで?」


「はい」


「収穫も?」


 私は。


 考える。


 帰るまで。


 十日以上。


 王都。


 滞在。


 もっと。


 植物。


 収穫時期。


 来る。


 待ったら。


 傷む。


「適期なら」


 胸。


 痛む。


「収穫してください」


 言う。


 エマ。


「先生見ない?」


「見られないかもしれません」


「待つ?」


「待つと、悪くなるかもしれません」


「じゃあ取る?」


「はい」


「先生いなくても?」


「はい」


 涙。


 少し。


 出そう。


 でも。


「食べてください」


 言う。


 皆。


 静か。


「保存できるものは、少し残してもらえたら嬉しいです」


「全部残す」


 トト。


「腐る」


 サム。


「乾かす」


「保存」


 エマ。


「先生帰ったら食べる」


「全部ではなくてよいです」


 村長さん。


 笑う。


「また全部残そうとする」


 私は。


 笑う。


 少し。


 涙。


「少しで」


 帰って。


 味わう。


 私がいない間。


 育ったもの。


 皆が。


 見て。


 守って。


 収穫したもの。


「お願いします」


     ◇


 次。


 森の家。


 鍵。


 村長さん。


 ガルドさん。


 二人。


 入室基準。


 火災。


 雨漏り。


 結界異常。


 窓。


 破損。


 畑道具。


 必要。


 花。


 水。


「花?」


 村長さん。


 聞く。


「窓辺の」


 白。


 黄色。


 落ちた花。


 今。


 もう。


 かなり。


 萎れている。


「出発までに、枯れると思います」


「なら」


「枯れたら」


 私は。


 考える。


「そのまま、花守り箱へ入れず」


 落ちた花。


 全部。


 残す?


 いいえ。


「土へ戻してください」


「どこへ」


「春待ちの根元」


 言ったあと。


 胸。


 温かい。


 白。


 黄色。


 落ちた花。


 森へ。


 戻る。


「分かった」


「誰が」


「必要なら私が」


 ガルドさん。


「お願いします」


 家へ。


 入った記録。


 日付。


 人。


 理由。


 持ち出し。


 あれば。


 記録。


 それだけ。


 細かく。


 しすぎない。


「花守り箱は?」


 村長さん。


「触らないでください」


「はい」


「日記も」


「はい」


「母様の手紙は」


「私の家ではなく」


「村長宅」


「はい」


 手紙。


 別。


 確認。


     ◇


 話し合い。


 終わる。


 皆。


 少し。


 息。


 吐く。


 サム。


 板。


 見せる。


 留守中管理。


 簡潔。


 私より。


 ずっと。


 短い。


「これだけ?」


 私は。


 聞く。


「十分」


 サム。


 即答。


 周囲。


 笑う。


 私は。


 板を見る。


 一。


 危険な日は見に行かない。


 二。


 水は土と葉を見てから。


 三。


 分からない病気・虫は相談。


 四。


 赤い実は掘らない。


 五。


 枯れ・失敗は隠さず記録。


 六。


 必要な処置・収穫は村で判断。


 七。


 戻ったら一緒に確認。


 それだけ。


「私が書くより」


 私は。


 少し。


 笑う。


「分かりやすいです」


「長いと読むの大変」


 トト。


「はい」


「先生、長い」


「すみません」


「記録好きだから」


「はい」


 でも。


 これで。


 いい。


 残す言葉。


 命令。


 ではない。


 考えるための。


 基準。


 そして。


 最後。


 戻ったら。


 一緒に確認。


 帰還。


 入っている。


     ◇


 昼。


 雨。


 止む。


 雲。


 まだ。


 厚い。


 でも。


 光。


 少し。


 地面。


 濡れている。


 広場。


 食事。


 今日も。


 持ち寄り。


 でも。


 出発前。


 全部。


 食べない。


 少しずつ。


 パン。


 豆。


 芋。


 卵。


 燻製肉。


 私は。


 皆と。


 食べる。


 井戸番の老人。


 また。


 大鍋。


 話。


「今日使えばいい」


「帰ってからです」


「今日も使える」


「帰ってから使う約束です」


「両方使えば」


「意味が違います」


 周囲。


 笑う。


「頑固だな、フローラ様」


「どちらがですか」


「わし」


「分かっているのですね」


 笑い。


 私も。


 笑う。


 その途中。


 リーナ。


 花守り布。


 持ってくる。


 昨日。


 途中まで。


 縫った道。


 今日は。


 その横。


 小さな。


 点。


 二つ。


「これは?」


「二人」


「二人?」


「ミナ。リオ」


 道。


 横。


 二つの点。


 同行者。


「一緒に行く人」


「はい」


 リーナ。


 指。


 森側。


 道の。


 反対。


 たくさん。


 小さな。


 点。


 まだ。


 縫っていない。


「これは?」


「残る人」


 胸。


 熱い。


「全部?」


「多いから、あと」


 帰ってから。


 縫う。


 また。


 途中。


「今は」


 リーナ。


 言う。


「行く二人だけ」


「はい」


 私は。


 布へ。


 触れる。


 私。


 一人。


 ではない。


 道。


 二つの点。


 でも。


 後ろ。


 森。


 たくさんの人。


 見えない。


 まだ。


 縫っていない。


 でも。


 いる。


     ◇


 午後。


 王都へ。


 持っていく。


 言葉。


 整理。


 村長さんの。


 仕事部屋。


 私。


 ミナ。


 リオ。


 村長さん。


 四人。


 机。


 紙。


 でも。


 台本。


 ではない。


「私が」


 私は。


 言う。


「忘れたくないことだけ、書きたいです」


 村長さん。


「うん」


「言う言葉を、全部決めるのではなく」


「うん」


「何を伝えたいか」


「それがいい」


 ミナ。


 紙。


 一枚。


 差し出す。


「四つでしたね」


 朝。


 考えた。


「はい」


 一。


 森で暮らしたい。


 二。


 自分の住む場所を、他人に決めてほしくない。


 三。


 婚姻は。


 今は望まない。


 四。


 公爵家を継ぐか。


 まだ分からない。


 私は。


 一つずつ。


 書く。


 でも。


 文字。


 固い。


 公爵令嬢として。


 文章。


 作ろうとする。


『私は今後も森を居住地とすることを希望いたします』


 書いて。


 止まる。


 違う。


 間違いではない。


 でも。


 私の言葉。


 ではない。


 私は。


 紙を。


 見つめる。


「固い」


 リオ。


 言う。


「はい」


「王様に言うなら、これでいいんじゃない?」


 私は。


 少し。


 考える。


「でも」


 国王陛下は。


 私の声を。


 聞きたいと。


 書いた。


 他人が語る望みではなく。


 私自身の声。


「私は」


 新しい紙。


 取る。


 書く。


『私は、森で暮らしたいです』


 短い。


 子どもみたい。


 でも。


 私。


 その下。


『畑を耕し、薬草を育て、村の皆さんと暮らしたいです』


 手。


 少し。


 震える。


 でも。


 書ける。


 リオ。


 横。


 見る。


「そっちのほうがフローラ」


「はい」


 ミナ。


 微笑む。


 二。


『私がどこで暮らすかを、私以外の人だけで決めないでほしいです』


 少し。


 弱い?


 お願い。


 ではなく。


 意志。


 私は。


 書き直す。


『私の住む場所は、私も決めます』


 見る。


 胸。


 少し。


 強くなる。


「これです」


 村長さん。


 頷く。


 三。


 婚姻。


 手。


 止まる。


 縁談。


 顔。


 名前。


 争奪。


 噂。


 青い髪。


 血。


 公爵家。


 怖い。


 私は。


 息。


 吸う。


『私は今、婚姻を望んでいません』


 書く。


 その下。


 少し。


 迷う。


『永遠に望まないかは、まだ分かりません』


 私は。


 自分で。


 驚く。


 今まで。


 結婚。


 怖い。


 嫌。


 でも。


 誰か。


 好き。


 友達。


 恋。


 経験。


 ない。


 永遠に。


 望まない。


 と。


 決める必要も。


 ない。


「これも言うのですか」


 ミナ。


「はい」


「今は望まない」


「はい」


「先は分からない」


「はい」


 リオ。


「それでいいじゃん」


「軽いですね」


「分からないなら分からない」


 その言葉。


 父様。


 国王陛下。


 皆。


 同じ。


「はい」


 四。


 公爵家。


 継ぐ。


 継がない。


 私は。


 書く。


『公爵家を継ぎたいのか、今はまだ分かりません』


 その下。


『森で暮らしたいことと、公爵家を捨てたいことは、同じではありません』


 書いた瞬間。


 胸が。


 大きく。


 鳴る。


 私は。


 紙を見る。


 そう。


 森で暮らしたい。


 だから。


 公爵家。


 全部。


 捨てたい?


 まだ。


 分からない。


 父様。


 領地。


 家。


 責任。


 私の血。


 名前。


 嫌なこと。


 苦しいこと。


 でも。


 すべて。


 憎い。


 わけではない。


「これ」


 村長さん。


 紙。


 見る。


「大事だな」


「はい」


 リオ。


「俺、フローラは家捨てたいんだと思ってた」


「私も」


 正直。


「前は、そう思っていたかもしれません」


「今は?」


「分かりません」


 でも。


「戻りたいとは思いません」


「屋敷に?」


「はい」


「家と屋敷も別?」


 リオ。


 聞く。


 私は。


 止まる。


 公爵家。


 屋敷。


 父様。


 母様。


 領地。


 名前。


 役目。


 全部。


 同じ。


 ではない。


「別かもしれません」


 私は。


 書き足す。


『公爵家と、公爵家の屋敷へ戻ることも、同じではありません』


 ミナ。


 静かに。


「分けられています」


「はい」


 胸。


 少し。


 軽い。


 四つ。


 でも。


 父様へ。


 母様へ。


 国王陛下。


 貴族。


 全部。


 別。


「もう一つ」


 私は。


 新しい行。


『分からないことを、今すぐ決めたことにしないでほしいです』


 これ。


 大事。


 王都。


 審議。


 答え。


 求める。


 でも。


 一度。


 王都へ行ったから。


 全部。


 決める。


 ではない。


「これも」


 私は。


 紙へ。


 指。


「絶対に言います」


 村長さん。


「いい」


 リオ。


「五つになった」


「はい」


「朝四つ」


「増えました」


「決まりじゃないからいい?」


 私は。


 少し。


 笑う。


「これは、決まりではありません」


「忘れたくないこと」


 ミナ。


「はい」


 五つ。


 短い。


 でも。


 私。


     ◇


 その後。


 練習。


 ではない。


 でも。


 言ってみる。


 村長さん。


 国王役。


「陛下役は」


「嫌だな」


「お願いします」


「仕方ない」


 リオ。


 横。


 笑い。


 ミナ。


 静か。


 村長さん。


 咳払い。


「フローラ・フォン・スプリング」


 その呼び方。


 胸。


 固い。


「そなたは、どこで暮らしたい」


 私は。


 紙。


 見る。


 でも。


 閉じる。


「私は」


 声。


 小さい。


「森で暮らしたいです」


 村長さん。


 待つ。


「畑を耕して」


 胸。


「薬草を育てて」


 声。


 震える。


「村の皆さんと」


 涙。


 出そう。


「暮らしたいです」


 沈黙。


 リオ。


 言う。


「言えた」


 私は。


 笑う。


 少し。


「はい」


「次」


 村長さん。


「公爵家の責務を、どう考える」


 難しい。


 私は。


 すぐ。


 答えない。


「分かりません」


 言う。


 胸。


 痛い。


「でも」


 続ける。


「森で暮らしたいことと、公爵家を捨てたいことは、同じではありません」


 言えた。


「公爵家をどうするかは」


 呼吸。


「まだ、分かりません」


「いつまでに答える」


 村長さん。


 厳しく。


 聞く。


 想定。


 王都。


 貴族。


 急かす。


 私は。


 胸。


 鳴る。


 昔。


 なら。


 期限。


 言った。


 守れない。


 でも。


「今は、決められません」


「だが」


「決められません」


 もう一度。


 言う。


 声。


 強い。


 自分で。


 驚く。


 村長さん。


 少し。


 笑う。


「いい」


 私は。


 息。


 吐く。


 リオ。


「怖い」


「何が」


「村長が王様役」


 周囲。


 笑う。


「真剣にやっている」


「顔怖い」


「普段からです」


「リオ」


「はい」


 ミナ。


 少し。


 笑う。


 空気。


 和らぐ。


 次。


「婚姻」


 村長さん。


「望まぬのか」


「今は、望みません」


「永遠に?」


 私は。


 少し。


 迷う。


「分かりません」


「理由は」


 縁談。


 怖い。


 人。


 信用。


「私は」


 言葉。


 詰まる。


 ミナ。


 待つ。


 リオ。


 何も。


 言わない。


 私は。


 自分で。


「今まで」


 ゆっくり。


「私ではなく、公爵家や血筋を見ているような縁談が多く」


 胸。


 痛い。


「婚姻が、怖いです」


 言った。


「だから」


 一度。


 息。


「今は望みません」


 沈黙。


 村長さん。


 頷く。


「十分だ」


 私は。


 目。


 熱い。


 正しい。


 文章。


 ではない。


 怖い。


 そのまま。


 でも。


 私の言葉。


     ◇


 練習。


 終わる。


 私は。


 紙。


 折る。


 持っていく?


 迷う。


 これ。


 台本ではない。


 忘れたくないこと。


「持っていけば」


 リオ。


「見られる」


「誰に」


「王様」


「見せてもよいのでは」


 ミナ。


「自分のための紙です」


「はい」


「必要なら、見てもよい」


「はい」


 私は。


 考える。


 王都。


 緊張。


 紙。


 握る。


 読んでしまう。


 でも。


 忘れた時。


 戻れる。


「持っていきます」


「どこに」


「花守り布と一緒に」


 森。


 道。


 芽。


 花。


 赤い線。


 二つの点。


 その布。


 中。


 紙。


 私の言葉。


 いい。


     ◇


 夕方。


 雨。


 上がる。


 雲。


 切れ間。


 光。


 森。


 葉。


 雫。


 きら。


 きら。


 私は。


 子どもたちと。


 畑へ。


 赤い実。


 見る。


 朝。


 土。


 隆起。


 今。


 少し。


 はっきり。


 中央。


 亀裂。


 そして。


「先生」


 エマ。


 息。


 小さく。


「これ」


 土の隙間。


 ほんの。


 針の先ほど。


 白。


 いや。


 薄い緑。


 何か。


 見える。


 私は。


 しゃがむ。


 近づく。


 でも。


 触れない。


 雨。


 土。


 芽。


 かもしれない。


「発芽兆候」


 サム。


 すぐ。


 言う。


「まだ断定しない」


 私は。


 笑う。


「はい」


 トト。


「出た!」


「まだ」


 サム。


「でも出てる!」


「可能性」


「めんどくさい!」


 笑い。


 私は。


 胸。


 熱い。


 出発まで。


 三日。


 赤い実。


 芽。


 見えるかもしれない。


 でも。


 それ。


 私のために。


 出たのではない。


 自分の時間。


 それでも。


 嬉しい。


 私は。


 記録。


 赤色木の実。


 播種後三日目、夕方。


 表土亀裂拡大。


 中央部に淡色部露出。


 発芽兆候の可能性高。


 未接触。


 未掘削。


 追加処置なし。


 その下。


 観察者。


 非常に嬉しい。


 私は。


 書いて。


 止まる。


 記録。


 感情。


「書くの?」


 エマ。


「はい」


「必要?」


「私には」


 笑う。


「必要です」


 サム。


「観察者感情」


 書く。


 私は。


 笑う。


 畑。


 植物。


 記録。


 でも。


 私。


 嬉しい。


 それも。


 残す。


     ◇


 春待ちの根元。


 夕方。


 行く。


 今日は。


 安全。


 第一花。


 ほぼ。


 土へ。


 第二花。


 落ちたまま。


 形。


 崩れる。


 第三花。


 ついに。


 落ちている。


 第四花。


 まだ。


 枝。


 でも。


 花弁。


 二枚。


 落ちた。


 私は。


 しゃがむ。


「もうすぐ」


 花。


 終わる。


 私が。


 王都へ行く頃。


 全部。


 落ちているかもしれない。


 帰ってきたら。


 花。


 ない。


 でも。


 春待ち。


 終わり。


 次。


 葉。


 実。


 季節。


 変わる。


 私は。


 記録。


 第三花。


 自然落花確認。


 第四花。


 花弁二枚脱落。


 残存花弁あり。


 第一・第二花。


 分解進行。


 観察者。


 出発まで三日。


 帰還時。


 花期終了の可能性高。


 その下。


 花がなくても、根元は同じ場所。


 書く。


 胸。


 落ち着く。


 花。


 なくなる。


 でも。


 場所。


 残る。


 私が。


 変わっても。


 森。


 変わっても。


 戻る場所。


 同じでなくても。


 戻れる。


     ◇


 夜。


 森の家。


 私は。


 夕食。


 食べる。


 今日は。


 少し。


 疲れた。


 でも。


 良い。


 疲れ。


 頭。


 いっぱい。


 留守中。


 畑。


 家。


 鍵。


 記録。


 王都。


 言葉。


 赤い実。


 芽。


 春待ち。


 花。


 私は。


 日記帳。


 開く。


 今日。


 森を留守にするための。


 基準を。


 皆と作った。


 私は。


 一人で。


 細かい決まりを。


 たくさん作ろうとした。


 でも。


 皆と。


 必要なものだけにした。


 危険な日は見に行かない。


 水は土と葉を見てから。


 分からない病気や虫は相談。


 赤い実は掘らない。


 枯れや失敗は隠さず記録。


 必要な処置や収穫は村で判断。


 私が戻ったら、一緒に確認する。


 七つ。


 短い。


 でも。


 十分。


 私は。


 自分の畑を。


 皆へ。


 任せる。


 私がいなくても。


 必要な時。


 収穫してよい。


 その言葉を。


 言うのは。


 少し。


 苦しかった。


 でも。


 待たせて。


 傷ませるより。


 育った時。


 受け取ってほしい。


 帰ってきた時。


 少し。


 残っていれば。


 嬉しい。


 全部。


 残さなくていい。


 私は。


 ペン。


 止める。


 その下。


 森の家の鍵を。


 村長さんと。


 ガルドさんへ。


 預ける。


 必要な時。


 入ってよい。


 入った日。


 人。


 理由。


 記録。


 必要なら。


 持ち出し。


 それだけ。


 私の家。


 初めて。


 自分で。


 誰へ鍵を渡すか。


 決めた。


 勝手に入られるのではない。


 私が。


 頼む。


 その違い。


 大きい。


 私は。


 少し。


 胸へ手。


 置く。


 公爵家の部屋。


 鍵。


 思い出す。


 あそこ。


 私の部屋。


 でも。


 私だけの場所ではなかった。


 森の家。


 私の。


 でも。


 今。


 信じた人へ。


 鍵。


 渡す。


 閉じる自由。


 開けてもらう自由。


 両方。


 私。


 その下。


 王都で。


 忘れたくないことを。


 五つ。


 書いた。


 一。


 森で暮らしたい。


 畑を耕し。


 薬草を育て。


 村の皆と暮らしたい。


 二。


 私の住む場所は。


 私も決める。


 三。


 私は今。


 婚姻を望んでいない。


 永遠に望まないかは。


 まだ分からない。


 四。


 公爵家を継ぐかは。


 まだ分からない。


 森で暮らしたいことと。


 公爵家を捨てたいことは。


 同じではない。


 公爵家と。


 屋敷へ戻ることも。


 同じではない。


 五。


 分からないことを。


 今すぐ。


 決めたことにしないでほしい。


 私は。


 文字。


 見る。


 これ。


 私。


 以前。


 こんなこと。


 言えなかった。


 全部。


 公爵令嬢として。


 どうすべきか。


 それ。


 先。


 今。


 私は。


 どうしたいか。


 先。


 少し。


 変わった。


 さらに。


 赤い実。


 夕方。


 発芽兆候。


 可能性高。


 触っていない。


 掘っていない。


 嬉しい。


 春待ち。


 第三花。


 落花。


 第四花。


 花弁二枚脱落。


 帰ってきた時。


 花は。


 ないかもしれない。


 でも。


 根元。


 場所。


 残る。


 私は。


 最後。


 書く。


 留守にすることは。


 捨てることではない。


 任せること。


 残すこと。


 戻ること。


 私がいない間に。


 森が変わっても。


 その変化を。


 受け取りに戻る。


 私は。


 日記帳を閉じる。


 花守り布。


 広げる。


 三つの芽。


 途中の花。


 開いた花。


 閉じ始めた花。


 少し立ったキズナ。


 皺のある葉。


 赤い線。


 途中までの道。


 二つの点。


 ミナ。


 リオ。


 私は。


 今日。


 書いた。


 五つの言葉。


 小さく。


 折る。


 花守り布の。


 内側。


 縫い目のない。


 場所へ。


 挟む。


 まだ。


 縫い込まない。


 取り出せる。


 必要な時。


 読む。


「一緒に行きます」


 布へ。


 言う。


 言葉。


 布。


 森。


 花。


 道。


 全部。


 持っていく。


 でも。


 全部。


 ではない。


 母様の手紙。


 日記。


 花守り箱。


 畑。


 大鍋。


 柵。


 残す。


 残すから。


 戻る。


 私は。


 寝台へ。


 入る前。


 窓。


 開ける。


 雨。


 もう。


 止んでいる。


 雲。


 切れ。


 星。


 少し。


 見える。


 森。


 濡れた葉。


 月。


 光。


 遠く。


 村。


 灯り。


 一つ。


 二つ。


 私は。


 外へ。


「おやすみなさい」


 言う。


 青豆一号。


 アオジロウ。


 ムラマル。


 モリタン。


 赤い実。


 キズナ。


 春待ちの根元。


 村。


 母様の手紙。


「あと三日です」


 今日。


 朝。


 言った。


 三日。


 今。


 一日。


 終わる。


 明日になれば。


 二日。


 近づく。


 でも。


 まだ。


 今夜。


「今日は、森へ残す言葉を決めました」


 風。


 少し。


 葉。


 揺れる。


「全部を決めたわけではありません」


 必要なこと。


 皆と。


 決めた。


「私がいない間も」


 胸。


 少し。


 痛む。


「ここで、暮らしてください」


 畑。


 村。


 皆。


 私を。


 待つだけではなく。


 暮らす。


 笑う。


 食べる。


 収穫する。


 失敗する。


 変わる。


「止まらないでください」


 言った瞬間。


 涙。


 一滴。


「私のために」


 声。


 震える。


「止まらないでください」


 私が。


 王都へ。


 行く。


 皆。


 待つ。


 でも。


 待つだけ。


 ではない。


「戻った時」


 私は。


 笑う。


 少し。


「変わったことを、教えてください」


 赤い実。


 芽。


 キズナ。


 葉。


 花。


 村。


 人。


 全部。


「私も」


 胸へ。


 手。


「変わって戻るかもしれません」


 怖い。


 王都。


 父様。


 母様。


 国王陛下。


 でも。


「それでも」


 言う。


「戻ります」


 変わっても。


 同じ。


 フローラ。


 森へ。


 戻る。


 私は。


 窓を閉じる。


 寝台。


 布団。


 目を閉じる。


 明日。


 出発まで。


 二日。


 今日。


 森へ。


 言葉を残した。


 でも。


 残したのは。


 命令ではない。


 一緒に。


 考えるための。


 基準。


 そして。


 王都へ。


 持っていく言葉も。


 決めた。


 正しい答えではない。


 忘れたくないこと。


 それだけ。


 私は。


 眠りへ。


 落ちる前。


 最後に。


 小さく。


 言った。


「私がいなくても、森は森です」


 少し間。


「でも」


 胸。


 温かい。


「私が戻る場所でも、あります」


 夜。


 静かに。


 森へ。


 降りていく。


 私のいない時間を。


 迎える準備が。


 少しずつ。


 整っていった。

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