第22話 青の姫君、怖さの翌朝に畑へ向かう
翌朝、目を覚ました時、私はしばらく動けなかった。
天井を見つめる。
木目が薄い朝の光に照らされている。
いつもの天井。
いつもの寝台。
いつもの森の家。
けれど胸の中だけが、昨日のままだった。
公爵家の使い。
青と銀の紋章。
薬草と療養地を探しているという口実。
青い髪の少女を見なかったかという問い。
村の中を見たいと言った声。
森への道を教えろと言った声。
そして。
公爵家では、行方の分からぬ令嬢を案じている。
その言葉が、眠っている間も胸の奥に沈んでいた。
案じている。
もし本当に。
もし母様が。
もし父様が。
そう考えるだけで、胸が痛くなる。
でも同時に、体が冷える。
私は知っている。
あの日、私は森へ置かれた。
生きていけるかどうかも分からない場所に。
十歳の子供が一人で。
力があるから大丈夫だとでも思われたのか。
それとも、力があるから死なないだろうと放り出されたのか。
どちらにしても、私は捨てられた。
なのに、案じていると言われると心が揺れる。
そんな自分が、少し嫌だった。
「……嫌いになれたら、楽なのに」
小さく呟く。
返事はない。
朝の森は静かだ。
私はゆっくり起き上がった。
泣いたせいか、目が少し重い。
昨日の日記を書いた後も、しばらく眠れなかった。
花守り布を見つめ、ニコ鳥を見つめ、暖炉の火を見つめた。
怖かった。
でも、ここにいたいと思った。
それが私の答えだと書いた。
それなのに、朝になるとまた揺れている。
人の心は、どうして一度決めただけで固定されないのだろう。
魔法陣なら、一度完成させれば安定する。
畑なら、土の性質を把握すれば手入れの方針が立つ。
けれど心は、昨日の答えを今日も同じ強さで持てるとは限らない。
それが少し厄介で、少し人間らしいのかもしれない。
私は寝台から降り、井戸の水で顔を洗った。
冷たい。
目元を冷やすと、少しだけ頭がはっきりした。
鏡を見る。
空色の髪が肩に落ちている。
昨日、扉の向こうで探されていた髪。
恐れられ、褒められ、隠され、守られる髪。
私は指で一房をすくった。
「私は、あなたを嫌いではないわ」
髪に向かって言うのは変かもしれない。
でも、言っておきたかった。
この髪のせいで見つかるかもしれない。
この髪のせいで怖い思いをしている。
それでも、私はこの髪を嫌いにはなりたくなかった。
母様譲りの髪。
村の子供たちが綺麗と言ってくれた髪。
リオが好きだと言ってくれた髪。
リーナが布に花を縫ってくれた理由にもなった髪。
私は髪をまとめ、花守り布を手に取った。
昨日の涙の跡は、乾いて見えなくなっていた。
青い花と白い花の刺繍は、変わらずそこにある。
私はそれをかぶる。
髪を隠す。
でも、消えるわけではない。
昨日より少し手が震えた。
使いたちが本当に来た後だからだろう。
でも、私は布を巻いた。
後ろで結び、刺繍の位置を整える。
鏡の中の私は、少し目が赤い。
でも、立っている。
「今日も、畑を見ます」
私は鏡に向かって言った。
まずは青豆一号。
それから村へ行くかどうかは、リオとミナが来てから相談する。
昨日は村長さんに、今日は無理をしなくていいと言われた。
けれど、完全に休むと、怖さだけが膨らむ気がした。
私は畑へ出た。
朝の空気は少し湿っていた。
森の木々の間を、柔らかな霧が流れている。
青豆一号は、昨日と同じ場所で小さく立っていた。
穴の空いた葉。
新しい葉。
少し伸びた茎。
私はしゃがみ込み、しばらく黙って見つめた。
「おはようございます」
葉が揺れる。
ただの風。
けれど、今朝はそれだけで少し救われた。
青豆一号は、昨日公爵家の使いが来たことを知らない。
私が泣いたことも知らない。
ただ、朝になったから光を受け、土から水を吸い、少しずつ育っている。
日常とは、こういうものなのかもしれない。
世界が揺れても、畑は朝になる。
葉は光を受ける。
水は必要になる。
私は土を触った。
少し湿っている。
水やりはまだ少なくていい。
虫の追加被害はない。
新しい葉は昨日よりほんの少し大きい。
私は記録板に書いた。
青豆一号、虫食い後五日目。
新葉、順調。
追加被害なし。
観察者、やや寝不足。
そこまで書いて、少し止まった。
観察者、やや寝不足。
畑の記録としては不要だ。
でも、消さなかった。
今日の記録だ。
青豆一号だけでなく、私も観察対象なのかもしれない。
私は小さく笑った。
その時、結界に二人の気配が触れた。
リオとミナ。
いつもより静かな足取りだった。
森の道から二人が現れる。
リオは私の顔を見るなり、眉を寄せた。
「眠れなかったか?」
「少し」
私は正直に答えた。
ミナが近づき、私の花守り布を見てから、目元に視線を向ける。
「目が赤いです」
「泣いたので」
言ってから、少し恥ずかしくなった。
でも、隠す必要はないと思った。
ミナは責めることなく頷いた。
「泣けたんですね」
その言い方が、少し不思議だった。
泣いてしまった、ではなく。
泣けた。
私は胸の奥が少し温かくなる。
「はい。泣けました」
リオは少し困ったような顔をした。
「俺、何言えばいいか分かんないけど」
「はい」
「昨日、怖かったよな」
「はい」
「今日も怖いよな」
「はい」
「でも、俺たち来た」
リオは真っ直ぐに言った。
「だから、一人で怖がらなくていい」
言葉が胸に入る。
単純で、力強い。
私は頷いた。
「ありがとうございます」
ミナが籠を持ち上げた。
「今日は村に来ても来なくても大丈夫です。村長さんからも、フローラの様子を見て決めていいと」
「村の様子はどうですか」
「皆、少し緊張しています。でも、朝の仕事はしています。子供たちも豆を見に行きました」
「ルルの豆は?」
「朝、リオ兄さんが見てきました」
私はリオを見る。
リオは少し誇らしげに頷いた。
「伸びてた。穴はそのままだけど、新しい葉が大きくなってる」
「リオ豆は?」
「元気」
「ニコ豆は?」
「元気」
「マメタは?」
「元気。エマが話しかけてた」
その報告に、私は少し息を吐いた。
よかった。
村の豆たちは、昨日の恐怖とは関係なく育っている。
「行きたいです」
私は言った。
リオとミナが同時に私を見る。
「無理してないか?」
「少し無理かもしれません」
私は正直に答えた。
「でも、行きたいです。子供たちの豆を見たいです。村の人たちにも、昨日のお礼を言いたいです」
ミナは少し考え、頷いた。
「なら、ゆっくり行きましょう。途中でつらくなったら戻る。それでいいですか」
「はい」
リオも頷く。
「俺、今日は絶対走らない」
「いつもそうしてほしいです」
ミナがすぐ言う。
リオは小さく笑った。
その笑いで、少しだけ朝が軽くなった。
三人で村へ向かう。
森の道は、いつもより静かに感じた。
昨日、使いたちが森への道を聞いた。
その言葉を思い出すと、木々の影までこちらを見ているように感じる。
でも、リオが前にいる。
ミナが横にいる。
ガルドさんが少し離れた場所で見守っている気配もある。
一人ではない。
村に近づくと、見張りの若者がいつもより真剣な顔で立っていた。
私たちを見ると、ほっとしたように頷く。
「おはよう、フローラちゃん」
「おはようございます」
「昨日は大変だったな」
「はい。でも、皆さんのおかげで」
若者は少し照れたように笑った。
「俺は立ってただけだけどな」
「立っていてくれることが、心強いです」
そう言うと、彼は目を丸くし、それから嬉しそうに頬をかいた。
「そっか。じゃあ、今日もしっかり立っとく」
「お願いします」
村の広場は、昨日より少し静かだった。
けれど、止まってはいない。
パン屋の煙突から煙が上がっている。
水汲みの女性たちが井戸の周りにいる。
村長さんは家の前でガルドさんと話している。
バルドさんは共同畑の方にいた。
子供たちは、私を見つけると一瞬固まり、それから駆け寄ろうとして、途中で大人に止められた。
まだ警戒中だからだ。
エマが手を振る。
ニコも。
ルルは両手で丸を作った。
昨日、私がした合図だ。
大丈夫?
私は少し泣きそうになりながら、胸の前で丸を作り返した。
完全ではないけれど。
でも、来た。
大丈夫。
子供たちの顔が少し明るくなった。
村長さんがこちらへ歩いてきた。
「来たか」
「はい。昨日は、ありがとうございました」
私は深く頭を下げた。
村長さんは静かに首を振る。
「礼を言うのはこちらではない。君が無事でよかった」
「皆さんが守ってくれたからです」
「村は、村の客人を守っただけだ」
その言葉に胸が熱くなる。
村の客人。
友人。
先生。
私はここで、いくつもの名前をもらっている。
村長さんは少し声を低くした。
「今日は無理をするな。顔色は悪くないが、目が赤い」
「泣いたので」
また正直に言った。
村長さんは少し目を細めた。
「泣けたならいい」
ミナと同じ言い方だった。
私は少し驚く。
「泣くことは、悪いことではないのですね」
「悪いことではない。泣かずに壊れるよりずっといい」
村長さんの声は静かだった。
私は頷いた。
「覚えておきます」
共同畑へ向かうと、子供たちが待っていた。
今日は授業というより、見守りの時間になった。
豆を一つずつ見る。
マメタ。
ニコ豆。
リオ豆。
ルルの豆。
リーナの豆。
サム豆。
トト豆。
どれも大きな変化はない。
それがありがたかった。
大きな事件がないこと。
昨日と同じように土があり、葉があり、水が必要で、虫を探す。
その繰り返しが、心を少しずつ落ち着かせてくれる。
ルルが私の隣にしゃがんだ。
「フローラ先生」
「はい」
「昨日、怖かった?」
真っ直ぐな質問だった。
周囲の大人が少し止まる。
リオが何か言いかけたが、私は首を横に振った。
答えたいと思った。
「はい。とても怖かったです」
ルルは真剣に聞いている。
「泣いた?」
「泣きました」
「泣いても、来た?」
「はい。泣いても来ました」
ルルの目が少し輝いた。
「私と同じ」
その言葉に、胸が詰まった。
ルルは昨日、自分の豆の虫食いを見て泣いた。
でも今日も見た。
私は公爵家の使いが来て泣いた。
でも今日も村へ来た。
本当に、少し似ているのかもしれない。
「はい。ルルと同じです」
私が言うと、ルルは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、先生も強い」
「強いでしょうか」
「泣いても来たから」
私は言葉を失った。
泣いても来たから強い。
それは、私が子供たちに教えたつもりで、また教えられた言葉だった。
リオが後ろで小さく言う。
「そうだぞ」
ミナも頷く。
「フローラは強いです」
私は花守り布の刺繍に触れた。
昔の強さとは違う。
騎士団長を倒す強さ。
魔法を無詠唱で撃つ強さ。
そういうものではない。
泣いても来る強さ。
怖くても見る強さ。
今の私には、そちらの方がずっと大切に思えた。
「ありがとうございます」
私はルルに言った。
「私は今日、ルルに教わりました」
「私?」
「はい。泣いても来たら強い、と」
ルルは少し照れた。
「じゃあ、私も先生?」
「見習い先生ですね」
リオが笑った。
「また見習い先生が増えた」
エマが手を上げる。
「私も!」
ニコも言う。
「僕も!」
サムは真面目に言う。
「記録の先生なら」
広場に小さな笑いが広がった。
昨日の恐怖で固くなっていた空気が、少しずつほどけていく。
私はそれを感じた。
日常が戻るのではない。
日常を、みんなで戻しているのだ。
昼前、村長さんから昨日の使いたちについて少し共有があった。
子供たちには聞こえない場所で、大人たちと私、リオ、ミナ、ガルドさん、バルドさんが集まる。
「使いは北西の道へ向かった」
ガルドさんが言った。
「近隣の小村を回るつもりでしょう。だが、再訪の可能性は高い」
「森への道を探る可能性もある」
バルドさんが腕を組む。
「今日の午後、俺とガルドで森の浅い道を見直す。足跡や枝折れを消しておく」
「私も手伝えます」
私は言った。
すぐにリオがこちらを見る。
「フローラ」
「森の結界や道の偽装は、私が一番分かっています」
それは事実だ。
しかしミナが静かに言う。
「でも、昨日の今日です。無理はしない約束です」
「……はい」
村長さんも頷いた。
「今日は休め。必要なら明日、森の家の結界を一緒に確認する。今日は村で豆を見て、早めに帰る。それで十分だ」
私は少し迷ったが、頷いた。
「分かりました」
無理をしない。
それも守ること。
自分を道具にしない。
以前の私なら、役に立つならすぐ動いた。
疲れていても、怖くても、できるならやるべきだと思った。
でも、村の人たちはそれを止めてくれる。
私は少しずつ、止まることを覚えている。
昼食は、村長さんの家の横で取ることになった。
広場より少し落ち着く場所。
ミナが私の隣に座り、リオは向かいに座る。
パン屋の女性が、いつもより柔らかいパンを持ってきてくれた。
「昨日は固いもの食べる元気もなかっただろうからね」
「ありがとうございます」
「たくさん食べな」
そう言われ、私はパンを受け取った。
温かい。
柔らかい。
一口食べると、少し甘みがあった。
「美味しいです」
パン屋の女性は満足そうに笑った。
「よし」
リオが横から手を伸ばしかけ、ミナに止められる。
「それはフローラのです」
「分かってるって」
「手が伸びていました」
「確認しただけ」
「食べ物を確認する時の顔でした」
私は少し笑った。
笑えた。
昨日の翌日でも、笑えた。
それが自分でも少し驚きだった。
ミナが私を見る。
「笑いましたね」
「はい」
「よかった」
その一言で、胸が温かくなる。
笑うことも、心配されている。
泣くことも、食べることも、村へ来ることも。
私は一人で生きているわけではないのだと、こういう小さな場面で何度も知る。
午後、私は子供たちと短い授業をした。
題名は「昨日と今日を比べる」。
豆の葉。
土の湿り。
虫食いの変化。
そして、自分の気持ち。
私は子供たちに聞いた。
「昨日、鐘が鳴った時、怖かった人はいますか」
ほとんどの子が手を上げた。
エマも、ニコも、ルルも、リーナも。
リオも少し迷って手を上げた。
子供たちが笑う。
「リオ兄さんも怖かったの?」
「怖いものは怖いだろ」
リオは少し照れながらも言った。
私は頷いた。
「怖かったことを言えるのは、大事です」
サムが手を上げる。
「記録する?」
「気持ちも記録できます」
「どうやって?」
「言葉で。昨日は怖かった。今日は少し大丈夫。まだ怖い。そう書きます」
サムは真剣に頷いた。
「気持ちの記録」
「はい」
リーナが小さく言う。
「刺繍にもできる?」
私は少し驚いた。
「できると思います」
「怖かった日は、少し暗い色。でも次に明るい花を縫う」
リーナの言葉に、胸がじんとした。
気持ちを刺繍にする。
それも記録。
日記とは違う、リーナの記録。
「とても素敵です」
リーナは照れたように笑った。
授業の後、子供たちはそれぞれ「昨日と今日」を言葉にした。
エマは「昨日はびっくり、今日は豆が元気で嬉しい」。
ニコは「昨日は怖い、今日は先生が来てよかった」。
ルルは「昨日も怖い、今日も少し怖い、でも見た」。
サムは全部記録した。
リオは「昨日は怒りそうだった、今日は我慢できてる」と言い、ミナに「それも成長」と言われて照れていた。
私は自分の番が来て、少し迷った。
子供たちが見ている。
大人たちも。
私は花守り布に触れ、言った。
「昨日は、とても怖かったです。今日は、まだ怖いです。でも、みんなの豆を見られて、少し息がしやすくなりました」
静かな時間が流れた。
エマが頷く。
「じゃあ、明日はもっと息しやすいかも」
「そうですね」
私は微笑んだ。
「明日も見ます」
夕方、森へ帰る前に、村長さんが私に小さな包みを渡した。
「これは?」
「昨日と今日の分の薬草茶だ。村の女衆が作った。君が帰ってから飲むといい」
包みからは優しい香りがした。
私が教えた配合に、村の女性たちが少し工夫したものだろう。
「ありがとうございます」
「教えたものが、君に返ってきたな」
村長さんが言う。
私は包みを胸に抱いた。
「はい」
それが、とても嬉しかった。
森へ帰る道で、リオはいつもよりゆっくり歩いた。
ミナは隣にいる。
ガルドさんが少し後ろを守ってくれる。
空は夕焼けだった。
昨日、公爵家の使いが来た村とは思えないほど、森の道は静かだった。
でも、その静けさは何もなかったことにはしない。
怖さは残っている。
再訪の可能性もある。
森の道を探られる危険もある。
それでも、今日私は村へ行った。
豆を見た。
パンを食べた。
笑った。
子供たちと気持ちを記録した。
それは小さなことかもしれない。
でも、私にとっては大きかった。
森の家に着くと、私は青豆一号の前にしゃがんだ。
新しい葉は、朝よりほんの少し開いていた。
「ただいま」
私は声をかける。
リオが隣にしゃがむ。
「今日、行けたな」
「はい」
「泣いても来たな」
「はい」
ミナが微笑む。
「明日も、少しずつでいいです」
「はい」
私は青豆一号を見つめた。
虫食いの穴。
新しい葉。
どちらもある。
昨日の恐怖。
今日の笑い。
どちらもある。
どちらかだけではない。
夜、私は村でもらった薬草茶を淹れた。
優しい香りが台所に広がる。
自分で作るものとは少し違う。
でも、確かに私が教えたものが元になっている。
一口飲む。
温かい。
少し涙が出た。
今度は、悲しい涙だけではなかった。
私は日記帳を開いた。
今日、村へ行った。
昨日泣いたけれど、今日も行けた。
ルルに、泣いても来たから強いと言われた。
私はルルと同じだった。
村の豆は元気だった。
子供たちと、昨日と今日の気持ちを記録した。
私はまだ怖い。
でも、豆を見て、パンを食べて、少し笑えた。
村の女性たちが薬草茶を作ってくれた。
私が教えたものが、私に返ってきた。
私はペンを止める。
暖炉の火が揺れている。
花守り布は机の上。
ニコ鳥はその隣。
村の客人札もある。
私は最後に書いた。
昨日の怖さは消えていない。
でも、今日の温かさも確かにある。
私は、怖さだけでできているわけではない。
日記帳を閉じる。
薬草茶をもう一口飲む。
森の夜は静かだった。
公爵家の使いは、また来るかもしれない。
それでも明日、私は青豆一号を見る。
村へ行けるかは分からない。
でも、見られるものを見る。
できることをする。
泣いても、怖くても。
今日の私は、昨日の私より少しだけ息ができる。
その小さな違いを、大事にしたいと思った。




