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【存在強奪】 ~やけくそでダンジョンに素手特攻したら、存在もスキルもステータスも奪える能力に目覚めました~  作者: 仁科異邦


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作戦会議

 獅堂を取り逃がしたものの、マキナを無力化し、ギルド内の人質を解放することには成功した。

 だが、事態は一刻を争う。ギルドの人間――雨宮さんや、剣崎の妹である葵までもが、特別施設へと強制連行された後だった。


 瓦礫が散乱し、冷たい朝の風が吹き込むギルドのエントランス。 俺たちは、生き残った職員や冒険者達を安全な地下シェルターへ避難させた後、広場の中央で即席の作戦会議を開くことにした。


「……まずは、戦力の再編と情報の共有だ」

 剣崎が、銀縁の眼鏡を押し上げながら、冷徹な戦術家の顔つきで口を開いた。


 その隣には、俺の専属監視役を自称する柊まどかと、剣崎の弟子である白銀の剣士、日向ヒナが控えている。


「俺の【魔力演算】を用いれば、マキナの魔力波長の残滓から特別施設の座標を特定することは可能だ。……だが、先ほども言った通り、施設にはここ以上の防衛網と、神宮寺の直属部隊が待ち構えているはずだ。少人数での強行突破は、極めてリスクが高い」


 剣崎は腰の長剣の柄をトントンと指先で叩きながら、俺を鋭く見据えた。

「だからこそ、俺の『右腕』を呼ぶことにした。お前たちにとっても、不足はないはずだ」


 剣崎がそう言い終えるか終えないかのタイミングで、ギルド前の広場の上空から、ふわりと舞い降りてくる一つの影があった。


「――お待たせしました、傑」

 透き通るような美しい声。

 同時に、彼女の身を包む流麗な魔導衣が風に揺れ、金糸のような美しい長い髪が朝日にキラキラと輝いた。


 クールビューティーという言葉がこれほど似合う女性はいないだろう。手には精緻な細工が施された白銀の杖を握り、その凛とした眼差しには、知性と深い魔力が宿っている。


 Aランク冒険者。クラスは魔導士。 『白銀の神官』の異名を持ち、日本最強のSランク冒険者・剣崎傑が背中を完全に預ける唯一の相棒――アイリス・オランジェットだった。


「アイリス。急に呼び立ててすまない。状況は伝えた通りだ」

「ええ。葵ちゃんが連れ去られたと聞いて、居ても立ってもいられませんでしたから。……間に合ってよかったです」


 アイリスは、剣崎に対してのみ見せる、深く、そして温かい信頼の眼差しを向けた後、ゆっくりとこちらへ視線を移した。


「あなたが……傑がいつも口にしている、結城誠さんね」

 アイリスは、ボロボロのジャージを着ている俺の姿を下から上へと値踏みするように見つめ、そして、ふっと口元に優雅な笑みを浮かべた。


「そう……。傑が『計算外のイレギュラー』と呼んで、誰よりも敬意を払っている同期の方。……どんなゴリラみたいな方かと思っていましたけど、意外と普通の方なんですね」


「誰がゴリラだ。……初めまして、アイリスさん。剣崎にはいつも世話になってる」


「ふふっ。こちらこそ。傑の『人間らしい不器用な部分』を引き出してくれるのは、結城さん、あなただけですから。……葵ちゃんの救出、私も全力でサポートさせていただきます」


 アイリスが丁寧にお辞儀をすると、その隣でヒナが「アイリスさん、お久しぶりです!」とパッと表情を明るくした。


 アイリスも「ヒナちゃん、剣の腕がまた上がったみたいね」と優しく微笑み返す。


「よし、これで戦力は揃ったな。……俺、アイリス、ヒナ、まどか、そして誠。この五人で、特別施設を強襲するぞ!」


 俺が拳を鳴らすと、剣崎が静かに右手を上げて俺を制止した。


「待て、誠。作戦を立てる前に、まずは味方の能力の正確な把握が必要だ」

「ステータスの把握?」


「ああ。敵の本拠地を五人で急襲する以上、僅かな連携のミスが全滅を招く。特に俺とアイリスは、お前たちの現在の力量を正確には把握していない。互いの限界値を知らなければ、最適な戦術構築(キル・ライン)が引けないからな」


 剣崎の言葉は、極めて論理的で正しかった。  特に、神宮寺のルール書き換え能力を相手にするなら、自分たちが「何ができて、何ができないのか」を事前に共有しておくことは必須だ。


「わかった。じゃあ、まずは俺から――」

「いや、基準となる数値を示すために、まずは俺とアイリスから開示しよう」


 剣崎がそう言うと、彼は自らのステータスボードを空中にホログラムとして投影した。


【名前】 剣崎傑

【ランク】 Sランク

【クラス】 魔法剣士

【Lv】 3020

【HP】 21050

【MP】 19800

【筋力】 22100

【耐久】 18500

【敏捷】 25400

【知力】 28900

【運】 500


【主なスキル】

・魔力演算(常時発動)

複合魔法剣デュアル・エッジ

・氷絶

・細雪

・雷絶

・紫電


「……これが、日本のトップ(Sランク)の数値か。すげえな」

 俺は思わず感嘆の声を漏らした。

 全ステータスが2万を超え、知力に至っては3万に迫ろうとしている。


 一般的なAランク冒険者の平均ステータスが5千〜8千程度であることを考えれば、まさに化け物じみた数値だ。


「続いて、私ですね」

 アイリスも、自分のステータスを空中に投影する。


【名前】 アイリス・オランジェット

【ランク】 Aランク

【クラス】 魔導士

【Lv】 2150

【HP】 8500

【MP】 15000

【筋力】 4200

【耐久】 6100

【敏捷】 9800

【知力】 18500

【運】 1200


【主なスキル】

・並列思考

・詠唱破棄

・支援魔法

水縛陣ウォーター・プリズン

環境改変テラ・フォーミング

多重属性防壁プリズム・ウォール


「アイリスの単体の破壊力はAランク水準だが、彼女の真価は俺の演算に100%同期する【支援能力】にある。彼女の支援があれば、俺のステータスは実質1.5倍に跳ね上がると思っていい」  


 剣崎が、誇らしげに相棒を説明する。アイリスも少し照れたように微笑んだ。

「じゃあ、次は私ですね!」  

 ヒナが一歩前に出て、ステータスを展開した。


【名前】 日向ヒナ

【ランク】 Aランク

【クラス】 剣士

【Lv】 1580

【HP】 12000

【MP】 4500

【筋力】 14500

【耐久】 9000

【敏捷】 18000

【知力】 3500

【運】 800

【主なスキル】

・超感覚

・一閃 白露

・一閃 桜花


「前衛特化、見事なピーキーぶりだな。筋力と敏捷に全振りしている。……知力の低さが気になるところだが、俺の弟子としては合格点だ」


「……あ、ありがとうございます」

(むぅ、知力の低さは結城さんに惹かれた代償です! 愛の重さなんですよ!)


 まどかがふわりと前に出て、純白のオーラを纏いながらステータスを提示する。

「次は私ね。……と言っても、私の力よく分かって無いのだけれど」


【名前】 柊まどか

【ランク】 規格外(推定Sランク相当)

【クラス】 調停者)

【Lv】 ――

【HP】 15000

【MP】 20000

【筋力】 12000

【耐久】 15000

【敏捷】 16000

【知力】 18000

【運】 ――(計測不能)


【主なスキル】

・正義の天秤

・裁きの光雨


「……驚いたな。レベルが計測不能にも関わらず、全ステータスが1万5千アベレージでまとまっている。完璧なバランス(正義)のステータスだ」


 剣崎も、まどかのステータスを見て、感心したように顎を撫でた。


「さて、最後はお前だ、誠。……お前がどれほど成長したのか、その数値を、見せてくれ」


 剣崎、アイリス、ヒナ、まどかの四人の視線が、一斉に俺へと注がれる。

「……あー、いや。なんというか……俺のステータス、ちょっと見せるの恥ずかしいっていうか……」


 俺はポリポリと頬を掻きながら、視線を泳がせた。

 正直、自分のステータスなんて、最近はまともに確認していなかった。

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