13話《完璧なお嬢様の私生活、実はこんなんでした》
またまた久しぶりの投稿です・・・
「はぁぁぁぁ・・・とても疲れましたわ・・・」
自室へ入った瞬間。
まるで人が変わったのかと思うほど、サロリアの口から深いため息が漏れた。
さっきまで商談の場で見せていた、王族らしい上品さも威厳もどこへやら。
扉を閉めるとすぐに服と靴を脱ぎ、慣れた手つきでジャージ姿へ着替えていく。
「これですわ、これがやはり落ち着く姿ですわね・・・」
その表情は、どこか満足そうだった。
普段の彼女しか知らない者が見れば、きっと目を疑うだろう。
お嬢様然とした振る舞いをしていた人物が、今ではすっかり力の抜けた格好になっている。
王族らしい華やかさも、完璧な立ち居振る舞いもない。
あるのはただ――。
誰にも見せるつもりのない、サロリア本来のずぼらな姿だった。
「報告書・・・いつ、手をつけましょうか・・・」
部屋に戻ったら、すぐに取り掛かる。
確かにそう言った。
だが、先ほどの商談で思っていた以上に気疲れしていたのか、部屋に戻った途端、やる気はだいぶ落ちていた。
とはいえ、主への忠誠まで薄れたわけではない。
むしろ、それだけは本物だ。
やらないという選択肢は最初からない。
ただ――今すぐやるか、少し休んでからやるか。
それだけの話だった。
「報告書を完成させれば・・・ユウライ様にまた褒めて貰えますわ・・・」
その言葉を口にした途端。
さっきまで重かったはずの身体が、ほんの少しだけ軽くなった気がした。
サロリアは机の上に置かれた紙へ視線を向ける。
「・・・・・・」
数秒、じっと見つめる。
「先に糖分補給しましょう。重要ですわ」
そう言うと、報告書からあっさり目を逸らした。
忠誠は本物。
やる気も、たぶんある。
ただし。
それと、先に甘いものを食べることは別問題だった。
「ふう・・・補給したことですし、早速取り掛かりますか」
ゼリーとプリンを二つともぺろりと平らげると、サロリアはようやく机へ向かった。
糖分も入った。
休憩もした。
ここまで来れば、もう逃げる理由はない。
机の上に置かれた報告書を手に取り、先ほどまでとは打って変わって、真剣な表情で書き進めていく。
ずぼらではある。
だが、任された仕事まで雑にするわけではない。
そして――数十分後。
「やーっと・・・終わりましたわ〜・・・」
最後の一文字を書き終えた瞬間、サロリアはぐったりと背もたれへ身体を預けた。
達成感より先に出てきたのは、完全に気の抜けた声だった。
「ご褒美にお菓子とゲームですわ〜!!」
報告書を終えた瞬間、サロリアの表情がぱっと明るくなった。
仕事中の気品ある姿はどこへやら。
棚からお気に入りの菓子を取り出し、さらに慣れた手つきでテレビゲームの準備まで始める。
「仕事終わりのゲーム・・・たまりませんわ!!」
コントローラーを手にした途端、さっきまでの疲れもどこかへ吹き飛んだようだった。
ソファに深く座り込み、菓子を手の届く位置へ並べる。
これで準備は完璧。
誰にも邪魔されず。
誰にも見られず。
好きなものを食べながら、好きなゲームを好きなだけ遊ぶ。
サロリアにとって、それは何よりも贅沢な時間だった。
普段は王族らしく振る舞い、外交の場では一切の隙を見せない。
けれど私室では――
ただの、ゲームとお菓子が大好きなずぼら娘なのである。
「見世物じゃねぇですわよー!!せい!!」
オンラインゲームに熱中し、サロリアは画面の中の敵と激しく戦っていた。
ちょうど苦戦していた相手だったが、動きを見切ると一気に畳みかけ、そのまま撃破する。
「オホホ!!これが私の実力ですのよー!!」
勝ち誇った声を上げた、その時。
机の上に置いていた端末が鳴った。
表示された名前は――【ユウライ様】。
「!」
さっきまでソファにだらりと座り、ゲームに夢中になっていた姿から一変。
姿勢を整え、声色まで瞬時に切り替える。
「もしもし、どうなさいました?」
人が変わったのかと思うほど、完全に“外向け”のサロリアへ戻っていた。
『もしもし?報告書、大丈夫そ?』
「ええ、問題ありませんわ」
『流石!頼りになるねぇ、やっぱサロリアに任せてよかったよ!様子見だったから、気にしないでね』
「了解ですわ」
平静。
完璧な受け答え。
少なくとも、電話越しのユウライにはそう聞こえていた。
だが――。
通話が切れた瞬間。
「・・・・・・」
サロリアの手から、ゆっくりと端末が離れていく。
そして。
「頼りになるって・・・また言ってくださいましたわ・・・」
先ほどまで敵を倒していた時以上に、頬が緩み始める。
ゲーム画面には次のマッチ開始を知らせる表示が出ていたが、今のサロリアにはもうほとんど見えていなかった。
頭の中を占めているのは、たった今ユウライから言われた言葉だけ。
「やっぱりサロリアに任せてよかった」
その一言を思い出すたびに、口元が勝手に緩む。
「・・・・・・ふふ」
しばらくして。
「・・・いけませんわ!!ゲームですわ、ゲーム!!」
我に返ったようにコントローラーを握り直す。
だが。
「頼りになる・・・ふふっ」
全然、集中できていなかった。
意外な一面出てしまった。サロリアお嬢様がずぼらな一面があったでした。




