神の存在
♢
「でも、おかしいわ。わたしたち人間は、魔法は使えないはずだもの」
そうクレアは言った。
確かに、この異世界のルールでは、魔法は魔物だけのもので、人間は使えないことになっている。
「それに、リッチのフィラクトリー (魂の器) があったときは、十兵衛の刀が抜けたのに、どうしてそれが無くなったら、それができなくなったのかしら」
そうクレアは、疑問を口にした。
確かに、そう考えると辻褄が合わなくなる可能性がある。
少年も、最初はクレアの身体からリッチのフィラクトリー (魂の器) が取り除かれれば、クレアも少年と同じように刀のチカラを使えるようになると思っていた。
しかし、それは違った。逆にクレアは、刀が抜けなくなったのである。
それなら、クレアが刀を抜くことができたのは、どうしてなのだろうか。
クレアに何かしらの魔法のチカラがあるのは、もう事実である。
少年は考えた。
そうして一つの可能性が浮かんだのである。
「クレア。ひょっとしてだけど、オレの刀とリッチの魔法、は同じ性質のものなんかじゃないかな」
そう少年は言った。
それならクレアが、リッチのフィラクトリー (魂の器) があったときには、刀を抜くことができたのにも理由が付く。
そして、クレアが刀を抜くことはできても、振ることができなかったのは、刀の所有者はあくまでも少年だということだ。
それなので、刀は少年以外が使うのを拒んだのではないのだろうか。
そう少年は考えた。
「でも、そうなるとわたしの魔法はどこから来たものなのなのかしら」
そうクレアが言う。
「そんなことは、難しく考える必要はないさ。すべて神様がクレアに特別に与えてくれたものって思えばいいのさ」
そう少年は言った。
「なに? そこは随分と気楽に話すのね」
そう言ってクレアは笑う。
「でも、その方が気が楽だろ」
そう少年は言った。
「そうね」
そうクレアは笑う。
「しかし、クレア様、十兵衛殿。そうなるとマヒムが最後に言い残した、単に生かされていただけという言葉が気になります」
そうヒューゴが言った。
確かに、悪魔だったヒューゴは、消滅する間際に、そう言っている。
「それでも、もうクレアの身体には、リッチのフィラクトリー (魂の器) は無いんだ。前よりは安全さ」
そう少年は言った。
まだリッチたちを倒す旅が、終わったわけではない。
これからも、その戦いは続くのである。
四人は、あらためてまだ続く、旅の準備を整えた。




