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サムライの格好で異世界に来たんだが  作者: 志村けんじ


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54/56

予想外

♢


「それで起きて、早速で悪いんだけど、もう一度刀(カタナ)を抜いてみてくれないかい」

 そう少年は言った。


「いいわよ」

 クレアはベッドから出ると、少年から大刀《だいとう》を受け取り、試してみる。


 しかし、いくら刀《カタナ》を抜こうとしても、抜くことができない。 


「抜けないわ」

 諦めて、クレアはそう言った。


「えっ!?」

 少年は驚く。これは自分の思っていた予想とは違う。


「えっ!? じゃないわよ!? これも、あなたの予想通りじゃないの!?」

 そうクレアは言った。


「違う……。オレはてっきり、これでクレアも普通に刀《カタナ》が抜けるようになるものかと」

 そう少年は言った。


「呆《あき》れた。てっきりあなたは、全部わかっててやっていたと思っていたわ」

 そう言って、クレアは笑う。


「ごめん……」

 少年は素直に謝る。


「まぁ、良いわ。もうどこかリッチに支配されているような感覚はなくなったし、今ならあの丘に立っている木にも、矢が届きそうよ」

 そう言ってクレアは、窓の外に見える、丘の上に一本だけ立っているの大木を指差す。


「クレア。弓が使えるの?」

 そう少年は、少し驚いて聞く。


「もちろんよ。戦いの訓練は、全部受けてるもの」

 クレアは、そう言った。


「でも、クレアが弓矢を使ったところは、一度も見てないよ」

 そう少年は聞いた。


「それはそうよ。敵は基本的に骨だもの」

 クレアは、そう言って笑う。


「あっ。そうだね」

 少年はそう言われて、妙に納得した。


「でも、あの丘の上に立ってる木って、ここから200m以上あるよ。あんなところまで、矢が届くの?」

 そう少年は、もしそれが本当だったら凄いと思って聞いた。


「まさかー。あんな遠くまでは届かないわ。ただそんな気がしただけよ」

 クレアはそう言った。


「そんなことを思ったのは、これが初めて?」

 そう少年は、真顔で聞く。


「ええ。そんな風に思ったのは、これが初めてよ」

 そうクレアも、ちゃんと答える。


「なるほど。それなら、実際にあそこまで届くのかどうか、やってみようぜ」

 そう少年は言った。


「そんなの無理よ!? 弓矢はあんな遠くまでは届かないわ!?」

 そうクレアは言う。


「そうです、十兵衛殿。例えロングボウ (長弓) なら届くかもしれませんが、女性のクレア様には、弦《げん》を引けません」

 そうヒューゴが言った。


 これはどういうことかというと、戦場で使うロングボウ (長弓) の最大射程は、200~300ヤード (約180~274メートル) あるが、その為には、80~120ポンド (約36~54キログラム) を引き切る筋力が必要だとされていた。


「ふ~ん。そうなんだ。それなら普通の弓でやってみようぜ」

 そう少年は言った。


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