最後の可能性
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「わたしに、特別なチカラが!? そんなものはないわ!?」
そうクレアは否定する。
「そんなのは、まだわからないさ。ビクトルとヒューゴには抜けなかった刀が、クレアには抜くことができただろ」
そう少年は言った。
「確かにそうだろうけども……。でも!?」
そうクレアは戸惑う。
「オレはさ。前にクレアの話を聞いて、ずっと疑問に思ってたんだ。どうしてリッチは、フィラクトリー (魂の器) をクレアの身体に入れたのかっていうのを」
そう少年は言った。
「それは……。この国の民で、わたしを殺そうとするものはいないから。ただそれだけじゃ」
そうクレアは言う。
「本当にそれだけだろうか。死の歌姫のときにクレアもみたはずだけど、エクセラの魂の球と、リッチのフィラクトリー (魂の器) は別だった。もしそれが、すべてそうだったとしたら、クレアが死んだとしても、フィラクトリー (魂の器) を破壊できるわけじゃない」
そう少年は、自分の推測を話す。
「それはそうだけど……」
少年のその推測に、クレアも自分の身体の中に入れられたフィラクトリー (魂の器) に、同じ疑問を抱く。
「十兵衛殿。それならば、クレア様はどうすればよろしいのですか」
そうビクトルは聞いた。
そう聞かれて、少年は少し考える。
「少し試してみたいことがあるんだ。危なかったら、すぐにやめるから」
そう少年は言った。
「危ないって、何をするつもりなの」
そうクレアは聞く。
「クレア。今、フィラクトリー (魂の器) を身体のどこにあるか感じるかい」
そう少年は聞いた。
クレアは自分の身体の中に、意識を集中して感じてみる。
「わかるわ。ちょうど胸の中心よ」
そうクレアは答える。
少年は何も言わずに、差していた脇差を、内帯から、そのまま抜くと、鞘から脇差を抜いて、その鞘の鯉口をクレアの胸の真ん中の位置に当てる。
「クレア。何か感じるかい」
そう少年は聞いた。
「いえ。フィラクトリー (魂の器) はそのままよ」
そうクレアは言った。
少年は、抜いた脇差の方を見る。
この脇差は、魔物を斬ることが役目ではなく、魔物を捕まえることが役目のものだ。
但し、大刀と違うのは、魔物以外も物理的な影響があることだ。
それなので、最初に試してみたときには、脇差でも何か物を斬ることはできなかったが、鞭のチカラで木の枝が折れた。
少年は、脇差の刃先を、自分の腹の横に当てて、押し込んでみる。
やはり脇差は、少年が使えば魔物以外は斬れない刀だ。
「クレア。目を閉じて。そして、少しでも痛みを感じたら教えて」
少年はそう言った。
クレアも、ビクトルとヒューゴも、この少年の試してみたことを見て、少年がこれから何をするのか、なんとなくわかっていた。
「わかったわ。少しでも痛みを感じたら教える。でも、目は開けたままでいるわ」
そうクレアは、この先の覚悟を決めて言った。
「わかった。それならやるよ」
少年はクレアの胸の中心に、脇差の刃先を
当てる。
少年は少しだけ、その刃先を押し込み刃先が入る。
それでも、クレアの胸からは血が出ない。
少年は更に刃先を奥に入れる。
「大丈夫よ、十兵衛。全然痛くないわ」
そうクレアは言う。
少年が更にそこから押し込むと、刃先が何か硬いものに当たった。
「捕まえろ!」
そう少年は、強く念じる。
そうして少年は、クレアの胸に刺さった脇差の刃を引き抜く。
その脇差の先には、死の歌姫のときに見た、リッチのフィラクトリー (魂の器) である「黒く妖しい光を放っている黒い球」が刺さっている。
そのフィラクトリー (魂の器) は、そこから抜け出そうと暴れているが、脇差は離さない。
「クレア。身体の方に異常はないかい」
そう少年は聞痛く。
「大丈夫よ。だけど、眠いわ。凄く眠い……」
そう言ってクレアは、そのまま立った状態で眠ってしまった。
その眠って倒れそうになるクレアを、背中からヒューゴが倒れないように支える。
「十兵衛殿。それは破壊しないのですか」
そうビクトルが聞いた。
「さて。このまま破壊していいものか……」
このまま、このフィラクトリー (魂の器) を破壊してしまうと、逆にこれからリッチたちを追うことができなくなったしまう。
少年は、その脇差に刺さったリッチのフィラクトリー (魂の器) ごと、鞘の鯉口の中に押し込む。
すると鞘は、鮮やかな黄緑色の光を放つと、フィラクトリー (魂の器) は、そのまま鞘の中に吸い込まれるように中に入っていった。
最初は鞘の中で、フィラクトリー (魂の器) が激しく暴れていたが、すぐに静かになった。
少年は、鞘の方に注意を払って、脇差を抜いてみる。
鞘の奥で、フィラクトリー (魂の器) の気配を感じるが、完全に鞘のチカラに封じ込められているようである。
「これで、この先もなんとかなるかな」
そう少年は呟いた。




