二つ目の可能性
♢
「十兵衛殿、これで何がわかるというのですか」
そうヒューゴが聞いた。
「さて、どうだろうか」
そう言って、少年は答えをはぐらかす。
「それじゃあ、次をやってみようか」
そう言って少年は、村人に用意してもらっていた、地面に固定した細い木の棒に巻いた麦藁の束に向かって、刀を振るう。
そしてもうわかっている通りに、その刃は、麦藁《麦藁》を斬ることはできない。その衝撃で、ほんの少し麦藁が散っただけである。
それなので、四人は何も不思議とは思わない。
「これがどうしたの」
クレアが聞いた。
「それじゃあ、今度はクレアがやってみて」
そう言って少年は、クレアに刀を渡す。
「わかったわ。それじゃ、わたしの背中に手を当ててね」
そう言われて、少年はクレアの背中に手を当てた。
「行くわね」
クレアは、その麦藁の束に向かって、刀を振るう。
すると、少年のときには斬れなかった麦藁が、何事もなく
真っ直ぐにきれいに斬れる。
「どうして!?」
クレアは驚いた。
ビクトルとヒューゴも、同じように驚いている。
これまで刀が、魔物以外を斬ったところを見たことがない。
それはクレア、ビクトル、ヒューゴだけではない。少年も同じである。
それでも、少年はだけは、何も驚かなかった。
何故なら、刀が、本物の刀身だということはわかっていた。
それまで本物の刀を見たことがあるというわけではないが、模造刀などではなく、研ぎ澄まされた刃だということだけは、見ただけでもわかる。
「驚かないのね。わかってたの?」
そうクレアは聞いた。
「ん。なんとなくね」
そう少年は答える。
「それで、これがクレア様と、どういう関係があるというのですか」
そうヒューゴが聞いた。
「たぶんだけど、この刀の能力は、使っている者のチカラに影響されている」
そう少年は言った。
「それは、クレア様が十兵衛殿より、チカラが強いということですか」
そうビクトルが聞く。
「いや。クレアはビクトルとヒューゴが抜けない刀を鞘から抜くことはできても、使うことはできない。それでも、オレがクレアの身体に触れていれば、クレアは刀を普通の刀として使うことができる。ただそれだけの話だと思う」
そう少年は話した。
「それはわかるけど、それがどうしてなのか意味がわからないわ!?」
そうクレアは言う。
「それはね、クレア。この刀は、確かに魔法の剣なんだろうだけど、使う者のチカラの影響も、確実に受けているっていうことさ」
そう少年は言った。
そう言われてもクレアは、まだ怪訝そうな顔をしている。
「十兵衛。もっと単刀直入に、わかりやすく説明して」
そうクレアが、少しだけ命令口調で少年に言う。
「いいかい、お姫様。クレアにも、特別なチカラがあるかもしれないっていうことさ」
そう少年は言った。




