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サムライの格好で異世界に来たんだが  作者: 志村けんじ


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51/57

二つ目の可能性

♢


「十兵衛殿、これで何がわかるというのですか」

 そうヒューゴが聞いた。


「さて、どうだろうか」

 そう言って、少年は答えをはぐらかす。


「それじゃあ、次をやってみようか」

 そう言って少年は、村人に用意してもらっていた、地面に固定した細い木の棒に巻いた麦藁《むぎわら》の束に向かって、刀《カタナ》を振るう。


 そしてもうわかっている通りに、その刃《ヤイバ》は、麦藁《麦藁》を斬ることはできない。その衝撃で、ほんの少し麦藁(むぎわら)が散っただけである。


 それなので、四人は何も不思議とは思わない。


「これがどうしたの」

 クレアが聞いた。


「それじゃあ、今度はクレアがやってみて」

 そう言って少年は、クレアに刀《カタナ》を渡す。


「わかったわ。それじゃ、わたしの背中に手を当ててね」

 そう言われて、少年はクレアの背中に手を当てた。


「行くわね」

 クレアは、その麦藁《むぎわら》の束に向かって、刀《カタナ》を振るう。


 すると、少年のときには斬れなかった麦藁《むぎわら》が、何事もなく

真っ直ぐにきれいに斬れる。


「どうして!?」

 クレアは驚いた。


 ビクトルとヒューゴも、同じように驚いている。


 これまで刀《カタナ》が、魔物以外を斬ったところを見たことがない。


 それはクレア、ビクトル、ヒューゴだけではない。少年も同じである。


 それでも、少年はだけは、何も驚かなかった。


 何故なら、刀《カタナ》が、本物の刀身《とうしん》だということはわかっていた。


 それまで本物の刀《カタナ》を見たことがあるというわけではないが、模造刀《もぞうとう》などではなく、研《と》ぎ澄《す》まされた刃《ヤイバ》だということだけは、見ただけでもわかる。


「驚かないのね。わかってたの?」

 そうクレアは聞いた。


「ん。なんとなくね」

 そう少年は答える。


「それで、これがクレア様と、どういう関係があるというのですか」

 そうヒューゴが聞いた。


「たぶんだけど、この刀《カタナ》の能力は、使っている者のチカラに影響されている」

 そう少年は言った。


「それは、クレア様が十兵衛殿より、チカラが強いということですか」

 そうビクトルが聞く。


「いや。クレアはビクトルとヒューゴが抜けない刀《カタナ》を鞘《さや》から抜くことはできても、使うことはできない。それでも、オレがクレアの身体に触れていれば、クレアは刀《カタナ》を普通の刀《カタナ》として使うことができる。ただそれだけの話だと思う」

 そう少年は話した。


「それはわかるけど、それがどうしてなのか意味がわからないわ!?」

 そうクレアは言う。


「それはね、クレア。この刀《カタナ》は、確かに魔法の剣なんだろうだけど、使う者のチカラの影響も、確実に受けているっていうことさ」

 そう少年は言った。


 そう言われてもクレアは、まだ怪訝《けげん》そうな顔をしている。


「十兵衛。もっと単刀直入に、わかりやすく説明して」

 そうクレアが、少しだけ命令口調で少年に言う。


「いいかい、お姫様。クレアにも、特別なチカラがあるかもしれないっていうことさ」

 そう少年は言った。


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