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サムライの格好で異世界に来たんだが  作者: 志村けんじ


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50/56

一つの可能性

♢


 少年の疑問は、やはりクレアの身体の中に、リッチのフィラクトリー (魂の器) があるということである。


 それが果たして、どんな影響を与えているかだ。


 またクレアは、刀《カタナ》を抜くことはできても、それを武器として使うことができないことがわかった。


 それなら、少年が片手で柄《つか》の端《はじ》を持ち、クレアがクレアが握ったら、刀《カタナ》は振れるのだろうか。


 それならば、取りあえずやってみようと、少年は思った。


 翌日。そのことをクレアに話してみる。


「どういうこと?」

 クレアは、怪訝《けげん》そうな顔をする。


「いいから。取りあえず、やってみようよ」

 そう少年は、気軽に言う。


「いいけど、大丈夫なの」

 クレアは、昨日《きのう》のこともあるので、それを心配する。


「クレア様。気をつけてください」

 同じように、それを心配して、ビクトルが言った。


「それじゃあ、クレア。オレが端《はじ》を持っているから、クレアは刀《カタナ》を抜いてみて」

 少年はそう言って、クレアの左側に立ち、右手で柄《つか》の端《はじ》を摘《つ》まむ。


「これだとなんだか、あなたの腕が邪魔で抜きにくいわ」

 そうクレアは言った。


「それなら、一度クレアだけで抜いてみて」

 そう少年は言った。


「わかったわ」

 クレアは、少し緊張した顔をして、刀《カタナ》を鞘《さや》から抜く。


 ここまでは、何の問題もない。


「それで、どうすればいいの」

 そうクレアは聞いた。


「それじゃあ、一旦、刀《カタナ》を、振り上げてみてくれないか」

 そう少年は言った。


「わかったわ」

 クレアは鞘《さや》の方を少年に渡すと、一度息を呑み込んで、両手でゆっくりと刀を振り上げる。


 そして少年が、柄《つか》の端《はじ》を右手で摘《つ》まむのだが、やはり不自然な態勢になってしまう。


「十兵衛。やっぱりこれだと、やりにくいわ」

 そうクレアは言った。


「そうか……。それならクレア、ちょっとそのままの態勢でいてくれないか」

 そう言って少年は、柄《つか》から手を離すと、そのままクレアの背中にまわった。


「どうするの?」

 そうクレアが聞く。


 そうすると少年は、クレアの背中に右手を添《そ》えて、そこから手のひらを当てた。


「大丈夫なのですか、十兵衛殿」

 そうヒューゴか、心配して言う。


「それじゃあ、クレア。そのまま刀《カタナ》を振り下ろしてみて」

 そう少年は言った。


「わかったわ」

 クレアは、もう一度、息を呑み込む。


「行くわ」

 そうして、刀《カタナ》を振り下ろす。


 昨日《きのう》とは違い、問題なく振れた。


「全然、普通に振れたわ!?」

 クレアは驚く。


 それを見ていた、ビクトルとヒューゴも、驚いた顔をしている。


「それじゃあ、クレア。もう少し、刀《カタナ》を振ってみてくれないかい」

 そう少年は言う。


「わかったわ」

 クレアは、そのまま上下左右に刀《カタナ》を振ってみるが、問題ない。


「それじゃあ、クレア。今からオレがクレアの背中に当てている右手を離すから、もし刀《カタナ》に重さ感じたらすぐに手を放して」

 そう少年は言った。


「わかった……」

 クレアは、息を吞む。


「いいかい。離すよ」

 少年は、クレアの背中から、当てていた手のひらを離した。


 その瞬間。突然、刀《カタナ》は、持てない重さになって、クレアの両腕を下に引っ張り落とす。


 クレアは少年に言われた通りに、すぐさま手を離した。


「どういうことなの!? 十兵衛がわたしの背中から手を離したら、突然、刀《カタナ》が前みたいに重くなったわ!?」

 そうクレアは言った。


 これで少年がまず思ったのは、少年が刀《カタナ》に直接触れていなくとも、クレアは刀《カタナ》を振ることができるということである。


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