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サムライの格好で異世界に来たんだが  作者: 志村けんじ


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神の存在

♢


「どういうことなの、十兵衛」

 そうクレアは聞いた。


「いや。取りあえず、クレアに刀《カタナ》を抜くことはできても、使うことはできないのがわかっただけだよ」

 そう少年は言った。


「取りあえず、ビクトルが風呂から出てきたから、ヒューゴも湯船に使ってきなよ」

 そう少年は言った。


「わかりました。それでは」

 ヒューゴは、その少年の言ったことに疑問を持ちつつも、ビクトルと入れ替わりで風呂に入っていく。


「どうかされたのですか?」

 そう、このことを何も知らないビクトルが聞いた。


「いいの。あとで十兵衛が何か話してくれると思うわ」

 そうクレアは言った。


 だからといって、少年に何か確信のようなものがあるわけではない。


 ただ、わかったことといえば、やはり刀《カタナ》の所有者で使うことが許されているのは、自分以外にはいないということだ。


 それでもクレアには、刀《カタナ》を抜くことができた。


 これはあくまでも、想像の範囲だが、クレアの中にある「聖なる力」が働いて、刀《カタナ》を抜くことはできたが、クレアの中にある「リッチのフィラクトリーの魔の力」に刀《カタナ》が反応して、それを拒んだのではないかと、少年は考えた。


 では、少年が思った、その「聖なる力」とはなんなのか、それは少年にはわからない。


「クレア。この国では、神様の存在をどう考えているんだい」

 そう少年は聞いた。


「なんなの、突然。十兵衛の聞いている意味がわからないわ」

 そうクレアは言った。


「いいから。教えてくれないか」

 それでも少年は、何も説明することなく、そう言う。


「いいわ。この国では、神は絶対的なものよ。わたしたちがこうして生活していられるのも、すべて神のおかげよ。だから一日一回のお祈りは忘れないし、常に神には感謝しているわ」

 そうクレアは言った。


「でも、その神様は、リッチたちを、どうにかできているわけではないよね」

 そう少年は言った。


「それは……」

 少年にそう言われて、クレアは言葉に詰まる。


「しかし、神は我々に十兵衛殿を寄越《よこ》してくださいました」

 そうビクトルは言った。


「そうね。ビクトルの言う通りだわ。神は我々に、十兵衛を寄越《よこ》してくれたわ」

 そうクレアも言った。


「その通りです」

 そこに風呂から出てきたヒューゴも同意した。


 そう三人そろって言われると、少年も少し照れくさい。


 それでも少年は、どうして自分がこの異世界《せかい》に来たのかを、あらためて自覚する。


 自分は歴史に名を残した「剣の達人」や「剣豪」ではなく、それは少年が元居た世界の「現代」でも変わらない。


 それでも、この異世界《せかい》での自分の役目を、あらためて自覚した。


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