神の存在
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「どういうことなの、十兵衛」
そうクレアは聞いた。
「いや。取りあえず、クレアに刀を抜くことはできても、使うことはできないのがわかっただけだよ」
そう少年は言った。
「取りあえず、ビクトルが風呂から出てきたから、ヒューゴも湯船に使ってきなよ」
そう少年は言った。
「わかりました。それでは」
ヒューゴは、その少年の言ったことに疑問を持ちつつも、ビクトルと入れ替わりで風呂に入っていく。
「どうかされたのですか?」
そう、このことを何も知らないビクトルが聞いた。
「いいの。あとで十兵衛が何か話してくれると思うわ」
そうクレアは言った。
だからといって、少年に何か確信のようなものがあるわけではない。
ただ、わかったことといえば、やはり刀の所有者で使うことが許されているのは、自分以外にはいないということだ。
それでもクレアには、刀を抜くことができた。
これはあくまでも、想像の範囲だが、クレアの中にある「聖なる力」が働いて、刀を抜くことはできたが、クレアの中にある「リッチのフィラクトリーの魔の力」に刀が反応して、それを拒んだのではないかと、少年は考えた。
では、少年が思った、その「聖なる力」とはなんなのか、それは少年にはわからない。
「クレア。この国では、神様の存在をどう考えているんだい」
そう少年は聞いた。
「なんなの、突然。十兵衛の聞いている意味がわからないわ」
そうクレアは言った。
「いいから。教えてくれないか」
それでも少年は、何も説明することなく、そう言う。
「いいわ。この国では、神は絶対的なものよ。わたしたちがこうして生活していられるのも、すべて神のおかげよ。だから一日一回のお祈りは忘れないし、常に神には感謝しているわ」
そうクレアは言った。
「でも、その神様は、リッチたちを、どうにかできているわけではないよね」
そう少年は言った。
「それは……」
少年にそう言われて、クレアは言葉に詰まる。
「しかし、神は我々に十兵衛殿を寄越してくださいました」
そうビクトルは言った。
「そうね。ビクトルの言う通りだわ。神は我々に、十兵衛を寄越してくれたわ」
そうクレアも言った。
「その通りです」
そこに風呂から出てきたヒューゴも同意した。
そう三人そろって言われると、少年も少し照れくさい。
それでも少年は、どうして自分がこの異世界に来たのかを、あらためて自覚する。
自分は歴史に名を残した「剣の達人」や「剣豪」ではなく、それは少年が元居た世界の「現代」でも変わらない。
それでも、この異世界での自分の役目を、あらためて自覚した。




