衛士としての覚悟
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「わかったわ。これからは十兵衛には、護りのことは考えずに、戦いだけに集中してもらいましょう」
そうクレアは言った。
「そうですね……」「それしかありませんね」
と、ビクトルとヒューゴも、それに同意する。
「待ってくれよ、クレア。オレたちの国のサムライは、自分たちのためにじゃなく、君主のために戦うんだぜ」
そう少年は言う。
「でも、わたしを護るために、十兵衛が倒れたら、元も子もないわ」
そうクレアは言った。
「それはそうかもしれないけど、別にオレ一人で、クレアを護るわけじゃない。これまで通り、ビクトルとヒューゴとオレの三人でクレアを護るんだ」
少年はそう言う。
「でも、それでは……」
クレアはそう言って、少年からの視線を避けた。
「大丈夫だよ、クレア。ビクトルとヒューゴは、立派な衛士だ。これまでもクレアのことを護ってきたじゃないか」
そう少年は言った。
クレアにはいつもそばから離れずに護ってくれている、身長一九〇センチメートルはある屈強な衛士が二人ついている。
この二人がまったく頼りにならないわけはないと、少年はいつも思っていた。
それなので、この少年から出たこの言葉は、本心からであった。
「そうね……。そうよね。これからもお願いね、二人とも」
そうクレアは言った。
「はい。これまで以上にクレア様をお護り申します」「私もです」
そうビクトルとヒューゴは、そのクレアの言葉に答えた。
ビクトルとヒューゴはこの先の戦いで、もしかしたら自分は命を落としてしまうかもしれないと思っている。
しかしそれは、死への恐怖ではなく、死へに対する覚悟だった。
そう思ったのはいつからなのだろう。それはこの十兵衛という少年とともに、クレア姫を護るようになってからのような気がする。
この「ムートリアム王国」では、戦士の死は、誇りではない。死してただの英雄となるだけなのだ。
そして死んでしまえば、勝利の喜びも美酒も味わうことができない。
だからこそ、戦士は英雄になるのではなく、生きて戦士としての喜びと誇りを噛みしめるのだ。
それなので、この死生観を持つことは、あまり考えられないことだった。
「十兵衛殿。一つ約束してもらいたいことがございます」
そうあらたまって、ヒューゴは言う。
「もし我々二人のどちらかが途中で倒れてしまったとしても、クレア様だけは最後までお護りしてもらいたい」
そうヒューゴは言葉を続けた。
「あぁ。必ず約束は守るよ」
少年も、ヒューゴのその覚悟に答えた。




