明日への不安
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「助かりましたね、姫様」
ビクトルが言った。
「そうね。でも、おかしいわ。どうして奴らは退いたのかしら」
クレアは、この不死の軍団の動きを不自然に感じた。
これまでは最後の最後まで、攻撃を仕掛けてきていた。
それが今回は、分が悪いと見るやあっさりと退いていった。
「確かに、これまでとは明らかに違いますね」
ビクトルが言った。
「十兵衛は、どう思う」
クレアは少年に聞いてみる。
「どうだろう……。確かにこれまでのような直線的な戦い方じゃなくなった。それに……」
少年には気になったことがある。
「それに、どうしたの」
その先を言わない少年に、クレアが聞く。
「アイツらの中に、オレの刀を普通に受け止める奴がいた……」
これまでの戦いの中で、少年の刀を受け止めた者は二体しかいない。
その二体は、死の王リッチに与えられたという腕を持つレイスの爪と、そのあとに姿を現した死の歌姫エクセラの魔剣だ。
この二体は明らかに見た目から何からなにまで、雑兵であるスケルトンウォリアーとはレベルが違っていた。
しかし、今回現れた五体のスケルトンウォリアーは、見た目も何もかも、これまでのスケルトンウォリアーと変わらない。
五体の持っていた剣も斧も盾も、何か特別なものを感じなかった。
それにあの五体は、火炎の球や、火炎そのもの吐き出して攻撃してきた。
もう一つ。あの五体はなんとなく連携して攻撃してきたように感じる。
「そうね……。あんな敵が増えれば、こちらの戦いはもっと厳しくなるわ」
そうクレアは言った。
「どうすればいいでしょうか……」
これからのことを危惧したヒューゴが、聞くでもなくそう漏らす。
「あのような魔法は、奴らだけのもので、我々には使えません。十兵衛さまの刀だけが、我々の中で唯一特別なのです」
ビクトルは絶望にも近い声で、そう言う。
四人の中に、重苦しい空気が流れる。
「ごめん。変なことを言って」
少年はそう言った。
「それに別に倒せないような敵じゃない。現にちゃんと倒せてるし」
そう言った。
「そうよ。十兵衛の言うとおりだわ。倒せないような相手じゃない。こんな所で弱気になってる場合じゃないわ」
そう言ってクレアは、みんなを鼓舞する。
「そうですね。こんな弱気になっていたら、この国は救えません。我々にはこの国の平和が掛かっているのです」
そうヒューゴが言った。
「どの道我々は、この先を目指すしかないわ」
そうクレアは言った。




