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サムライの格好で異世界に来たんだが  作者: 志村けんじ


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フィラクトリー


 あの森を抜けられたが、辺りはもう暗い。今夜はこの場所で野営をするしかない。


 まず急いで、一晩分のたきぎを集めて火を起こし、クレアが休むためのテントを張る。


 この場所は、四方を見渡せる丘の上なので、もし敵が来てもすぐにわかる。


 隠れるのではなく、敵にも見つかりやすいこの場所をえて選んだのは、もしもの場合に馬ですぐに逃げるためだ。


 但し、その場合には、幌馬車を捨てて行かなければならないだろう。


 それなので、幌馬車をく馬二頭は、すぐに逃げられるようにしていた。


 みんなで硬くなったパンをかじり、沸かしたお湯で入れたお茶で、それを喉の奥に流し込む。


 それはクレアも同じだ。


 ビクトルとヒューゴは、クレア姫にもっと良い食事を取ってもらいたいと思ってはいたが、それは今は無理なことである。


 見張りは、大体二時間おきに、ビクトル、ヒューゴ、少年の三人で交代して行うことにする。


その間、見張りをしていない二人は、テントの隣で仮眠するのである。


 ビクトル、ヒューゴと見張りの番をして、少年が見張りの番にをしていると、クレアがテントから顔を出す。


「十兵衛……」

 クレアが少年に声を掛ける。


「どうしたの、クレア。よく眠れないの?」

 少年が、そう聞く。


「ちょっと、話を聞いてほしいの」

 クレアはそう言った。


 クレアはテントから出てくると、少年の隣に座る。


「わたし、考えてみたの。なんでマヒムが、わたしはリッチに生かされてるだけって言ったのかを」

 クレアは、そう言った。


「どんな?」

 少年は、ただそう聞き返す。


「あのとき、人間の姿で現れたデスナイトが渡したのは、リッチのフィラクトリーじゃないのかしら」

 そう言った。


「もし、そうだとしたら。わたしがリッチのフィラクトリーの場所がわかるのも、なんとなく……。いえ。はっきりと説明がつくわ」

 クレアは、そう断定する。


 確かに、そう考えるのが普通なのかもしれない。


 しかしそれでは、クレアはどうなってしまうのか。少年はそう思った。


「でも、クレア……。それだと……」

 少年はそこまで言って、その先を言うのをやめる。


「そうね……。そのときは、わたしもリッチと一緒に死ななければいけないかもしれないわ」

 そう言った。


「そんなことは、絶対にさせませぬ!」

 クレアと少年の会話を静かに聞いていたヒューゴが、そう言った。


「姫は絶対に我々が最後までお護り致します!」

 ヒューゴと同じように、静かに二人の会話を聞いていたビクトルも、そう言った。


「二人とも……。大丈夫よ。もしもの場合よ。それまでに、リッチのフィラクトリーを全部見つけて破壊して、わたしの中にあるフィラクトリーを取り出せれば……」

 そう言った。


「それがどんな方法なのかは、まだわからないけど、絶対にその方法はあるはず」

 少年は、そう言った。


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