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サムライの格好で異世界に来たんだが  作者: 志村けんじ


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脇差のもう一つのチカラ


 そこから少年が目を覚ましたのは、数時間後のことだった。


 その目を覚ますまでの間、夢の中で、誰かが何かを語り掛けてくる。


 それは、凄く大事なことであり、少年がこれから絶対にやらなければならないことだった。


 少年が野宿用のテントの中で目を覚ますと、隣でクレアが苦しんでうなされている。


 クレアのひたいには、水で濡らされたタオルが置かれ、ヒューゴがクレアの傍らに座っていた。


「十兵衛殿、気がつきましたか」

 ヒューゴが、少年が目を覚ましたことに気づき声を掛ける。


「はい……。クレアは?」

 少年は、隣でうなされているクレアのことが、真っ先に気になった。


「姫は、十兵衛殿を助けた際に、エクセラの毒にやられてしまったようです」

 そうヒューゴは答えた。


 少年は、傍らに置かれていた、脇差を手に取って、さやから脇差を抜く。


「何をなさるのですか!?」

 それを見たヒューゴが慌てて聞く。


 少年は、脇差ではなく、そのさや鯉口こいぐちを、クレアの口元に当てる。


 さやは鮮やかな黄緑色の光を放つと、クレアの口からエクセラの呪いの毒をすべて吸いだした。


 クレアの顔の血色が、元のきれいな肌に戻っていく。


「たぶん……。もうこれで大丈夫なはずです」

 少年はそう言った。


「どうして、こんなことが?」

 少年の持つ脇差わきざしに、こんな不思議なチカラがあることなど、ヒューゴは聞いていなかった。


「よくはわかりません。ただ、これも脇差の持つチカラだったんだと思います。夢の中で、誰かがそう教えてくれました」

 その知らなかったは少年も同じで、そうとしか説明ができなかった。


「取りあえず、クレアはもう少し寝かせておいてあげましょう。お腹が空きました。何か食べるものがあれば、お願いします」

 そう言った。


「わかりました。すぐに用意します。おい! 姫が……」

 そう言って、ヒューゴはテントを出ていく。


「んぅーんっ……」

 クレアが気がついて、静かに目を開けた。


「大丈夫? クレア」

 目を覚ましたクレアに、少年はそう優しく声を掛ける。


「大丈夫……。わたし……どうしたの?」

 クレアはなにも憶えていないようだった。


「ありがとう。クレア。クレアのおかげで助かったよ」

 そう少年は、クレアに心からの感謝を伝える。


「えっ……と。あのエクセラは、あなたが倒したのよね? リッチのフィラクトリーも破壊したわよね?」

 クレアは、思い出したかのように、少年に聞いた。


「大丈夫。壊したから。もう近くに、リッチのフィラクトリーの気配は感じないだろ」

 少年は、穏やかな声で、クレアにそう言った。


「そうね。もう感じないわ」

 もう。あの嫌な気配がなくなって、クレアも安心する。


「クレアは、もう少し寝といたほうがいいよ」

 そう言って少年は、クレアを優しく労わる。


「そうね。そうさせてもらうわ」

 少年にそう言われて、クレアは安心して眠った。

 

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