フィラクトリーの一つ
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これから、辛く苦しいであろう、「死の王リッチ」の「魂の器であるフィラクトリー」を探す旅が始まる。
まずは、その鍵を握っているのが、その「フィラクトリー」の場所がわかるという、クレア姫のチカラだ。
それは実際に、どれぐらいの範囲でわかることなのだろうか。
クレアは、先に進むたびに、指し示す方向を変える。
「姫さんさぁー。ホントに、この方向で合ってんのぉー」
さすがに少年も、このまま大丈夫かと気になって、そう聞いた。
「クレアよ! あなたが、名前で呼び捨てにさせてほしいって言ったんでしょ!?」
クレアも、なかなかたどり着けないことに苛立っていた。
「そこは、あなたの方から、クレアって呼んでほしいって言ったじゃありませんでしたか」
そこは、お互いの若さから、少年も売り言葉に買い言葉で返してしまう。
「そうね! そう言ったかもしれないわね!」
クレアは、それを思い出して非を認める。
「それで。詳しく聞いてませんでしたが。どれぐらいの感覚で、その場所がわかるんですか?」
少年は、一番大事な、気になることを聞いた。
「それは……。実はそんなに詳しくわかるわけではないわ」
「でも、わかったから見つけられたんですよね」
少年は、核心を突いた質問をする。
「見つけられた。でも、逃げられた」
それは、「物」ではないのだろうか。
「逃げられた?」
「そうよ。逃げられたの」
「その、逃げられたというのは、どういうことなんですか?」
「そのままの意味よ。リッチは、自分の魂の一つを、デスナイトに与えたの」
「なんですか。そのデスナイトとは?」
「デスナイトというのは、別名「闇のパラディン」。リッチの副官にして、死してなお、戦場に立ち続けている騎士」
「デスナイトは、生前の裏切り、呪い、強い未練などの怨念で、死後に鎧をまとったまま蘇ったとされているわ」
「その全身にまとった鎧の中は空洞で、代わりに黒い霧が中に立ち込めているわ」
「戦い方は、生きていたときの剣技だけでなく、魔法による剣技も使うわ」
クレアは立て続けに、そう説明した。
「でも、そこで追い詰めることができたから、逃げられたわけですよね?」
少年は、また核心を突く質問をした。
「追い詰めたのは、わたしの婚約者。勇者「アベル」よ」
クレアの口から、少年が思ってもいなかった言葉が飛び出す。
「へぇー。そんな人がいたんですね」
少年は、平静を装って、そう言った。
「でも、最後には殺された……。パラディンには、勝てなかった……」
ビクトルが、少年の乗った馬に、自分の馬を近づけて、少年の肩に手を据えて首を横に振る。
「すみませんでした。余計なことを聞いてしまいました」
「いいのよ……。彼の死は、決して無駄にはしないわ」
クレアは、ここに来るまでに、どんなに苦しい思いをしてきたのだろうかと少年は思った。




